音楽ナタリー PowerPush - BUMP OF CHICKEN

アニメ「血界戦線」主題歌に投影した自らの感情

均等に音を置くカッコよさ

──増川さんはアレンジに関してはどう捉えていましたか。

増川 例えばイントロのフレーズはシンプルに均等に弾く難しさとかはありました。この曲は緻密に音が構成されているから、ムラが出たら違ってきてしまうんです。音を均等に置くことがカッコいいんですね。DVDにはスタジオライブの映像が入っていて、そこでこの曲をみんなで合わせたときもそう感じたんですけど、テンションで乗り切ろうとするとダメなんですよ。すごく冷静に、ある種機械的にやっていかないといけない。そのへんは面白かったですね。

──曲自体が持っている疾走感とドライブ感を、クールに演奏したと。

増川 それはほかの曲を演奏するときにも言えることなんですけどね。ただこの曲は、誰か1人が何か間違えたらみんな崩れていっちゃうんで。キメも多いからムラなく演奏すればギリギリ感が常に出るし。

歌詞に投影された自分

──歌詞についても聞かせてください。サビの「ハロー どうも 僕はここ」という一節が印象的ですが、このフレーズは最初に出てきた言葉でした?

藤原 歌詞はAメロ書いて、Bメロ、サビと順序よく書いていきましたね。最後にタイトルを付けるっていう。

──Aメロの「昨日どうやって帰った 体だけが確か」とか、「おはよう これからまた迷子の続き」とか、そういう言葉は……。

藤原 その当時の僕そのものです(笑)。

──リアルな表現なんですね。

直井 これは僕から見た藤原くんでもあります(笑)。そのときはほぼ4曲が同時進行で、終わったら次、終わったら次という感じだったので。だから、藤原くんはずっと曲のこと考えてるんですけど、それだけじゃ誰も許してくれない。ジャケットも決めないといけないし、ビデオクリップも撮るし、インタビューもある。すべてのことがあっての音楽活動なんで。

──なるほど。

直井 僕がスタジオを出るときに「藤くん、じゃあね! おやすみ!」「おう! 明日なんだっけ?」「明日は取材だよ」「おう!」っていうやり取りをする、その後ろ姿たるや。「こいつ、本当に大丈夫かな」って思ってました。たぶん体もどっか痛かったときがあっただろうし。

藤原 痛かった。

直井 だから今回の4曲の中に「痛い」的な表現もある(笑)。それは比喩とかじゃなくて、本当に痛いっていう。僕らは彼を見ているのでそのまんまなんですよ。彼の場合は本当に自分というものを書き切って、本当に作品と重なる部分があって成り立っている。

──その生々しい内容が「血界戦線」の主題歌として絶妙にハマっていると思います。

直井 だから「Hello,world!」を聴いたあとに「血界戦線」を読むとさらに面白いんです。主人公のレオが迷っている部分と重なったりもするけれど、でも曲に書いてあることはリアルな藤原くんの姿で。

BUMP OF CHICKENの楽曲の本質的なテーマ

──最初に「今回は4曲入りのミニアルバムを作るかのような作業だった」とおっしゃってましたよね。今回は4つの曲をほぼ同時に作っていて、それぞれが寄り添っている、通じ合うようなものがあると。藤原さんとしては、このことには結果的に気付いた感じでしたか?

藤原 音に関してはそうですね。4曲が非常にバランスよく鳴ってるなと思いました。これは我々も演奏する側として、知らず知らずのうちにそれぞれの曲の影響を受けてきたんじゃないかなって感じがします。やっぱり同じ時期に何度も何度も自分と向き合うことになるわけですから。ただ、言葉に関しては書いてるときから曲同士がすごく近いところにあるんだなっていう認識がありました。

──なるほど。

藤原 これは僕らの曲すべてに言えることなんですけど、自分の書いてることの根底に流れているもの、本質的なテーマっていうものはきっとそんなに種類はないんです。それがなんなのかは、難しくてひと言ではちょっと言えなくて、だからこそ歌ってるんだと思うんですけど。ただ、テーマではなくモチーフとして挙げていくとすれば、それは簡単で、生きることとか、死ぬこととか、笑うこととか、泣くこととか。そういうことについて、ずっと書いてるんです。表現しているものの根底にはそんなに種類はないし、もしかしたらたった1つかもしれない。だから、それは全曲に言えることなんですけど、特にこの4曲はその部分での強い結びつきみたいなものがあるなって思います。

──それが藤原さんが書く曲、BUMP OF CHICKENの曲の根底にある何かとつながってるものなんですね。

藤原 はい。我々もミュージシャンの端くれとして十数年やってきて、自分はずっと曲を書いて来たわけですけども、そのくらいやってると自分たちが出せるのは自分たちのことしかないし、自分の書けることは自分のことしかないなというのが、よくも悪くもわかってきたんですね。

BUMP OF CHICKEN ニューシングル / 2015年4月22日発売 / TOY'S FACTORY /「コロニー / Hello,world!」
期間限定盤 [CD+DVD] / 1500円 / TFCC-89539
通常盤 [CD] / 1080円 / TFCC-89540
「Hello,world! / コロニー」
初回限定盤 [CD+DVD] / 1500円 / TFCC-89538
期間限定盤、通常盤CD収録曲
  1. Hello,world!
  2. コロニー
期間限定盤DVD収録内容
  • 「Hello,world!」スタジオライブ映像
初回限定盤CD収録曲
  1. コロニー
  2. Hello,world!
初回限定盤DVD収録内容
  • 「コロニー」スタジオライブ映像
BUMP OF CHICKEN「Hello,world! / コロニー」CD購入者限定リリース記念スペシャルライブ
2015年7月30日(木)大阪府 インテックス大阪
2015年8月4日(火)神奈川県 横浜アリーナ
BUMP OF CHICKEN(バンプオブチキン)

藤原基央(Vo, G)、増川弘明(G)、直井由文(B)、升秀夫(Dr)の幼なじみ4人によって1994年に結成。地元・千葉や下北沢を中心に精力的なライブ活動を展開し、1999年に1stアルバム「FLAME VEIN」、2000年に2ndアルバム「THE LIVING DEAD」をリリースする。これが大きな話題を呼び、同年9月にシングル「ダイヤモンド」でメジャーデビュー。2001年にはシングル「天体観測」が大ヒットを記録し、ロックファンを中心に熱狂的な支持を集めた。その後順調にキャリアを重ねていき、2014年には7枚目のオリジナルアルバム「RAY」の発表をはじめ、初音ミクとのコラボレーション、地上波音楽番組への生出演、初の東京ドーム公演などでも話題を集める。同年11月、羽海野チカ作のマンガ「3月のライオン」のテーマソングとして書き下ろした「ファイター」、映画「寄生獣」の主題歌「パレード」をそれぞれ配信リリース。12月にツアー「WILLPOLIS」を追ったドキュメンタリーとオープニングムービーで構成された映画「BUMP OF CHICKEN "WILLPOLIS 2014" 劇場版」が全国の劇場で公開され、2015年2月にはDVD / Blu-ray化された。4月には映画「寄生獣 完結編」の主題歌「コロニー」とテレビアニメ「血界戦線」の主題歌「Hello,world!」を収録した両A面シングルをリリースする。