BRAHMAN|TOSHI-LOWが語る“怒り”の先にあるもの

自分たちでいるためには何が必要なのか

──TOSHI-LOWさんの燃料が怒りだけではなくなった時期って、いつですか?

20代後半か30代くらいからだよ。自己批判だけでも怒りだけでも、自分の作っているものに説明がつかなくなってしまった。「俺は生きてるじゃん、どこかで幸せを望んでるじゃん、なのにどうしてこんな排他的な歌詞を書いて、『生きるのは苦しい』って言ってるんだ?」となってしまって。その葛藤を次の段階に持っていくためには、怒りや虚無感の向こう側を書かなきゃいけなかったけど、それを「家族がいて幸せだよね」ってチンケな言葉にしたくはなかった。でも“怒りの向こう側”っていうのは、そういう「家族がいて~」のようなものに近いこともすごくわかるから、「お母さんありがとう」みたいな歌が売れるのもわかるんだよ。わかったうえで「そうじゃねえだろ、俺がやるなら」って。そんぐらいからずっともがき続けてきたとは思うよ。

──「俺たちがやるならこうだろう」っていうことは考えるんですか?

TOSHI-LOW(Vo)

考えるよ。自分たちがもともと優れた何かを持って始めたならいいけど、俺たちはそれがないところから始まって、自分たちだけのものを作ってきたから。明確なジャンルもあったのかもしれないけど、そこに入れられるのも嫌だったし。世代の流れで、球場でライブをやったら「球場の世代だよね」って言われたりもしたけど、俺たちはそういうことも全部否定したうえでさ、自分たちでいるためには何が必要なのかっていうことだけをずーっと強くやってきたバンドだったと思うよ。上手い人、優れた人、もっと強いパンクやハードコア……ほかにいくらでもいる。でも、「俺たちの存在意義はなんだろう」って突き詰めてきて、こうなったっていう。

──また、「不倶戴天」級の怒りが詰まっているのに“ハードコアポップス”になっているところが、この曲の面白いところで。

“ハードコアポップス”はさっきたまたま言っただけだけどね(笑)。でも、「俺はパンクロッカーです」なんて言わなくていいと思ってるの。ここ何年かいろんなことをやってきて、俺が好きな先輩にパンクとして認めてもらったところもあるし、自信もあるから。それでもとやかく言ってくるヤツもいるけど、それはそれでいいわけよ。そんな冠はいらなくて。俺はこれをハードコアパンクだと思ってるし、だからこそ自分でポップスって言ってもいい。「どうせ誤解されちゃうからどうでもいい」って言うことと、「強く思っているものがあるからなんでもいいです」って言えることって、全然違うと思うの。だって、これを聴いてハードコアを感じなかったらおかしいと思うもん。だけど俺らがやってるとストレートにはならねえから、「ハードコアポップスくらいかな?」って。

──要は芯ですよね。

うん。だってハードコア=核じゃん。

「朝まで踊りてえ」に真実が隠されている

──核が強いからこそ、2曲目の「ラストダンス」で、フィールドこそ違えど核が強いBOSS(ILL-BOSSTINO / THA BLUE HERB)さんとのコラボレーションも実現しているんでしょうね。

そう。面白いことに、どの曲もつながってるんだよね。

──歌詞はBOSSさんと一緒に書かれたんですか?

昨年末に1回だけミーティングしたの。そのときに俺が思ってることをバーッて言って。重い感じじゃなく、スタジオでコーヒー飲みながら思ってることをつらつら話したのね。そのときにBOSSは雄弁に話してくるのかと思ったら、聞き役になってくれて。今考えれば、俺と共通で思っていることを頭の中にメモってくれたんだろうな。歌詞を読んだら見事にそのときの話も散りばめられているし、それ以上のものを書いてくれてるし。そのとき話したのは、最終的に「朝まで踊りてえよ」っていうだけの、シンプルな話だったの。でもそんな簡単な言葉の中に、俺たちの真実がたくさん隠されていて。ただ単にライブハウスやクラブで明け方まで踊りてえっていうだけじゃなく、「踊らされる前に踊れ」っていう、社会的なところまで結び付けられる話だったんだよ。

──歌詞に書かれている「怒りを抱えたまま生きていくのは疲れるんだ」というメッセージは「不倶戴天」ともつながっていますよね。BRAHMANとBOSSさんが通じ合ってることがわかります。

通じ合ってるものは昔からあったんだよ。だから一緒にライブもやってるし、お互いたまに連絡取ってたし。で、3年くらい前に、BOSSから「本格的に一緒に音鳴らしてえ」って相談されて。でも俺、ブルーハーブ好きすぎて、どうしていいかわからなくて。「BOSSの声とリリックが、どうやったら一番響くかな?」って考えてしまった。実はそのときBOSSはもうリリックを書いていて、俺に見せてくれたの。でも当時の俺は、吐息にも怒鳴り声にも聴こえるあのBOSSの独特な声と、バンドサウンドがどう結び付くかわからなかったのね。

──具現化していったきっかけはあったんですか?

TOSHI-LOW(Vo)

それからしばらくしてBOSSが違うバンドとコラボしたときに、「やらねえなら待たせんなよ」っていう内容のリリックを書いていて。それを「あれ、BRAHMANのことじゃねえから」ってBOSSがメールで説明して謝ってくれたの。ヘビーなやり取りじゃなかったんだけど、俺、悪いことしたなと思って。文脈を見てそうじゃないのはわかるし、そうだとしてもこっちも待たせてるっていうのもあるし。それをBOSSに言わせてしまったことが恥ずかしくて、言われたその日に、俺はもっと考えなきゃいけないって思ったんだよね。あと、この曲には原曲があって。KOHKI(G)がブルースの人とセッションしたりして、俺も昔は興味がなかったブルージーなギターを使ってみたいと思うようになったんだけど、この曲の原曲にはそういう音をうまく乗せ切れなくて。それで、BOSSのことを考えているうちに「この曲はBOSSじゃねえ?」って思い付いたの。みんなに言ったらKOHKIが「聞いた瞬間に震えた」って言って。それですぐにBOSSに「やろう」って。「不倶戴天」では熱いものを熱いうちにやったって言ったのと矛盾するけど、タイミングを待っている曲もあったんだよね。

──「ラストダンス」は今だった。

今だった。リリックもほとんど書き直していて。あのときと違う自分もいるし、社会情勢も違うし、世界も変わったし、今リアルに伝えられることを書いて。今でよかったなって。

BRAHMAN「不倶戴天 -フグタイテン-」
2017年4月12日発売 / TOY'S FACTORY
BRAHMAN「不倶戴天 -フグタイテン-」初回限定盤

初回限定盤 [CD+DVD]
1800円 / TFCC-89614

Amazon.co.jp

BRAHMAN「不倶戴天 -フグタイテン-」通常盤

通常盤 [CD]
1200円 / TFCC-89615

Amazon.co.jp

CD収録曲
  1. 不倶戴天
  2. ラストダンス featuring ILL-BOSSTINO (THA BLUE HERB)
  3. 怒涛の彼方
初回限定盤DVD収録内容

BRAHMAN 2016 BEST MOMENTS

  1. 賽の河原 / 百万石音楽祭 2016~ミリオンロックフェスティバル~
  2. BASIS / RUSH BALL 2016
  3. SEE OFF / KESEN ROCK FESTIVAL '16
  4. BEYOND THE MOUNTAIN / MONGOL800 ga FESTIVAL What a Wonderful World!! 16
  5. ARRIVAL TIME / AIR JAM 2016
  6. ANSWER FOR... / 茨城県常総市災害復興支援イベント「Dappe Rock's」
  7. 警醒 / MIYAKO ISLAND ROCK FESTIVAL 2016
  8. PLACEBO / ARABAKI ROCK FEST.16
  9. 鼎の問 / 風とロック芋煮会 2016 KAZETOROCK IMONY WORLD
  10. THE ONLY WAY / RISING SUN ROCK FESTIVAL 2016 in EZO
BRAHMAN「2017 Tour 戴天-タイテン-」
  • 2017年4月12日(水)神奈川県 Yokohama Bay Hall
  • 2017年4月15日(土)愛媛県 WStudioRED
  • 2017年4月16日(日)香川県 高松festhalle
  • 2017年4月21日(金) 福井県 福井まちなか文化施設 響のホール
  • 2017年4月22日(土)富山県 MAIRO
  • 2017年4月24日(月)長野県 Sound Hall a.C
  • 2017年4月27日(木)愛知県 DIAMOND HALL
  • 2017年5月20日(土)福岡県 DRUM LOGOS
  • 2017年5月23日(火)山口県 周南RISING HALL
  • 2017年5月25日(木)滋賀県 SHIGA U★STONE
  • 2017年5月27日(土)大阪府 なんばHatch
  • 2017年6月6日(火)宮城県 Rensa
  • 2017年6月7日(水)岩手県 Club Change WAVE
  • 2017年6月15日(木)東京都 新木場STUDIO COAST
BRAHMAN(ブラフマン)
BRAHMAN
1995年に東京で結成された4人組ロック / パンクバンド。ハードコアと民族音楽をベースにしたサウンドを特徴とする。1996年に初めての作品として「grope our way」をリリース。1998年に発表した1stアルバム「A MAN OF THE WORLD」はトータル60万枚以上のセールスを誇り、90年代後半に1つの社会現象になったパンクムーブメントにて絶大なる人気を集める。2011年3月11日の東日本大震災以降よりライブ中にMCを行うようになり、震災の復興支援を目的とした活動を積極的に展開。2011年9月にシングル「霹靂」、2012年9月にシングル「露命」を発表し、いずれも強いメッセージと圧巻のサウンドがリスナーに受け入れられた。2013年2月に5年ぶりとなるアルバム「超克」をリリース。結成20周年の2015年にはベストアルバム「尽未来際」のリリース、千葉・幕張メッセで開催したライブイベント「尽未来祭」を含むライブシリーズ「尽未来際」の開催、初のドキュメンタリー映画「ブラフマン」公開などの活動を展開。今年4月にシングル「不倶戴天 -フグタイテン-」を発売する。