BILLIE IDLEプロデューサー・NIGO|プロデューサー・NIGOが語るBILLIE IDLE解散の理由

BILLIE IDLEが12月に行われるワンマンツアー「BILLIE IDLE TOUR LAST ORGY」をもって解散することが発表された。

BILLIE IDLEはファーストサマーウイカ、ヒラノノゾミ、モモセモモ、アキラ、プー・ルイからなるガールズユニット。2018年5月にプー・ルイ(ex. BiS)が電撃加入して以降、5人体制で活動してきたが、年内をもって5年にわたる活動に終止符を打つこととなった。音楽ナタリーではオツモレコードから解散の連絡を受け、オフィシャルサイト、SNSでの解散発表が行われる数時間前にBILLIE IDLEプロデューサーのNIGOにインタビュー。解散に至った理由、解散を決めるまでの苦悩、メンバーそれぞれへの思い、ラストシングル「LAST ORGY」に込めた思いなどについて話を聞いた。

取材・文 / 田中和宏

なぜ解散が決まったのか

──今回、突然の解散発表に驚きました。

まずはBILLIE IDLEのプロデューサーとして、応援してくださったファンの方々、関係者、そしてメンバーには申し訳ない気持ちでいっぱいです。このグループはもともとBiSにハマった僕が、渡辺(淳之介 / WACK代表)くんと知り合って、彼にとても魅力を感じて、何か一緒にプロジェクトをやりたいという思いから誕生しました。僕の理想の形を渡辺くんも尊重してくれて、デザインや楽曲は僕がコンセプトを描き、振り付けなどの中身はメンバーに任せ、メンバーは嫌な顔もせずBILLIE IDLEを演じてくれて、僕としてもメンバーには何の不満はありませんでした。

──ファンは「なぜ解散?」という疑問符が浮かんでいると思います。さっそくですがその理由について聞かせてください。

会社的にこれ以上の活動を続けることが厳しいとの判断です。それと自分の中では最初から5年をひとつの判断の目安ともしていました。始動してから5年になりますが、BILLIE IDLEは数あるプロジェクトの中でも、個人的にも思い入れがあり、会社もかなりの投資をしてきましたが、ビジネスとしてのBILLIE IDLEはそれをなかなか回収できず、この数年は社内で問題視されるようになっていました。着実にステップアップして行き、プー・ルイも加入してくれて、勢い付いた状況には見えていましたが、プロジェクトという観点からは現実的になかなか厳しいものがあり、今回は渋々の決断となりました。解散の理由はそれ以外には何もないです。

BILLIE IDLE。アルバム「BILLIed IDLE 2.0」リリース時(2018年7月)。

──NIGOさんの音楽的なロマンが詰まったBILLIE IDLEですが、商業的な成功があってこそという状況だったと。

そうですね。利益を出さなくても、せめてトントンでなければいけなかったと思います。現に会社が抱えるたくさんのプロジェクトの中でも、マイナスはこのプロジェクトだけでした。組織としてこのプロジェクトに関わっていないスタッフもハッピーでないといけないですし、メンバー、そして会社のスタッフ全員が心底楽しめ、1つでもネガティブがあったらダメだと思います。代官山のUNITからマイナビBLITZ赤坂にメインとなる会場を移して、プー・ルイが加入して、BLITZも埋まるようになりました。その先にはZeppがあり、さらに先には日本武道館という構想でした。でも、なかなかBLITZから上の壁が破れず……。音楽に限らず、中小企業がそうであるように、この世界も中堅のポジションは一番しんどいです。渡辺くんとも「この位の規模のグループが一番難しく、こういうタイミングで解散とか無期限の休止をするグループもけっこう多いので、早くこの状況から脱却しないとダメですね」と話していました。“売れているようで売れていない”という現実、BiSHのように突き抜けてしまえば成功ですし、逆にもっと小さな箱でコンスタントにやり続けているグループのほうが、うまくいっていると思います。このポジションが2年くらい続いていたので、かなり悩める状況でした。何か打開策はないかと模索して、自分のあらゆるコネクションも使っていろいろなことにもチャレンジしました。メンバーはあまりいい気がしなかったステージもあったかと思います……。

──BILLIE IDLEは常に素晴らしいクオリティの楽曲を発表していましたし、最近のシングルではプー・ルイさんの作詞した曲が続き、表現の幅も広がっている最中という印象があるので、「ここで解散するなんて」という気持ちになるファンも多いだろうなと思います。

ありがとうございます。僕はプロデューサーという立場ですけど、何よりBILLIE IDLEの一番のファンです。アートワークやミュージックビデオも面白いものばかりだし、素晴らしい楽曲と素晴らしい歌声には、絶対的な自信は今でもあります。ファンの気持ちになって、ファンに楽しんでもらえるよう仕掛けてきたので、残念でとても悔しいです……もしかしたらマス向けには尖がらせ過ぎたのかもしれません。

──メンバーにはいつ解散することを伝えたんですか?

7月の頭です。解散の半年前には伝えたいと思ったので…。前回のツアー(参照:BILLIE IDLEが自身最多15都市を回るツアー、マイナビBLITZ赤坂で開幕)を回るときはメンバーも解散することをわかったうえでステージに立っていました。

──初日のマイナビBLITZ公演も非常に盛り上がっていましたが、メンバーはきっと複雑な心境だったんですね。

「解散」を大義名分にしてチケットを売るようなことはしたくなかったので、発表はツアー後にしました。メンバーは複雑な心境だったと思いますが、BLITZはそれを感じさせず、ファンとメンバーが一体となったステージで、「解散」という文字を忘れさせてくれました。