音楽ナタリー PowerPush - SUPER BEAVER×テスラは泣かない。

ビーバー×テスラ それぞれの愛

柳沢の入院

──先ほどのお話にもありましたが、昨年9月、柳沢さんが入院するという大変な局面がありました(参照:SUPER BEAVER柳沢亮太、体調不良で休養へ)。

柳沢亮太(G / SUPER BEAVER)

柳沢 ちょうど9月発売のシングル「らしさ / わたくしごと」を出すタイミングで体を壊してしまって、緊急入院することになっちゃったんですよね。テスラを初めて招いたイベントのときに僕はいられなかったけど、今は全然元気です。

──あのとき、SUPER BEAVERは柳沢さん不在でもすぐにサポートギタリストを迎え、企画をやり遂げましたね。

渋谷 1人欠けた状態で出演することが果たして正しいことなのか悩んだし、すごく申し訳ないって思った。1人いないという状況を言い訳にすることなく、一緒にやってくれる対バン相手にもお客さんにも失礼のないようなライブができるのかっていうのを考えて。あのイベントではすごくいろんな人にお世話になったから、おこがましいけどドラマのような1日になりました。

左から柳沢亮太(G / SUPER BEAVER)、渋谷龍太(Vo / SUPER BEAVER)、村上学(Vo, G / テスラは泣かない。)、吉牟田直和(B / テスラは泣かない。)。

村上 柳くんが入院したって話を聞いて、最初はイベント自体が中止になると思ったんですよ。でも急ピッチでサポートを入れて体制を整えてすごくいいライブをしていたし、そのアティチュードに心を打たれました。お客さんだけじゃなくて、自分たちの信念を貫き通してる姿が本当にカッコいいなって。ビーバーは刺激をもらえる存在だし、リスペクトできる仲間に出会えてよかった。

愛とはなんだ

──SUPER BEAVERの皆さんが「愛する」の制作に入ったのはいつからですか?

柳沢 曲の制作に関しては、僕が10月に退院したあとからで、11月にレコーディングしました。自分のいろんな思いを歌詞にすることで頭の中が整理できて、最後にタイトル曲の「愛する」って曲ができました。10周年ってタイミングで何を歌うのか考えたときに、シングル曲の「らしさ」の中で「自分らしさってなんだ?」と問いかけたんです。そのあと入院することになっちゃったけど、それによって何を歌うべきなのかをしっかり整理する時間が与えられたような気もしています。

──今回偶然にもテスラは泣かない。の新作「ONE」にも「MOTHER」など愛について歌っている楽曲があります。これまでのテスラには見られないようなストレートなメッセージが印象的でした。

左から柳沢亮太(G / SUPER BEAVER)、渋谷龍太(Vo / SUPER BEAVER)、村上学(Vo, G / テスラは泣かない。)、吉牟田直和(B / テスラは泣かない。)。

村上 今までは「あなたの思想でいろんなふうに解釈してください」ってスタンスで歌詞を書いていたんです。でも今回は「僕はこう思っています」っていう姿勢がそのまま伝わればいいなと思っていて。2014年は世界でいろいろ大変なことが起こってましたが、僕らは歌の中だけでもちゃんと理想を言ったり、伝えたりする権利があるし。それが今、音楽をやっている理由にもなっています。悲しいニュースが日々流れているこんな世の中に向けて、僕なりのラブソング「MOTHER」を作りました。

──この曲には高校時代に書いた言葉も歌詞として使われているそうですね。

村上 はい。「100万回生きたねこ」を読んで思ったことがもとになっています。「愛されるために生まれてきて / 愛するために生きている」っていう歌詞は、みんな自分が愛されていることを当たり前のように思うかもしれないけど、実際には自分が相手を愛する気持ちがあって初めて愛されるんじゃないかっていうことを意味していて。これまでは愛をストレートに表現することにちょっと臆病になっている部分があったんです。でも今はライブ会場でたくさんの人と出会えたり、CDを出せたりする環境にいるから、自然にまっすぐな気持ちを歌にできるようになりました。

──なぜ愛を伝えようと思ったんですか?

左から柳沢亮太(G / SUPER BEAVER)、吉牟田直和(B / テスラは泣かない。)、村上学(Vo, G / テスラは泣かない。)、渋谷龍太(Vo / SUPER BEAVER)。

村上 満員電車に乗ってる人同士ってそれぞれの距離がとても近いのに、まるでみんな無関心っていう状況に違和感を覚えたのがきっかけです。ニュースを観れば去年はアフリカのエボラ出血熱の話題が大きく報道されていましたけど、日本だと自分の国に危険が迫る前までのまるで他人ごとのような雰囲気もなんか変だなって思って。この違和感を解消するアイデアが欲しいなって思って自分なりに考えた結果、完成したのが「one」「国境はなかった」「MOTHER」なんですよ。

──そのアイデアはどんな内容ですか?

村上 要するに他人だと思っていた人が、自分の好きな人にとって大事な存在だったとしたら、それぞれがつながって、そこに愛が生まれるんじゃないかっていうことですね。「MOTHER」の歌詞にある「愛されるために生まれてきて / 愛するために生きている」っていうのは、自分がファミリーだと思える存在に愛を注ぐことで生への実感を持つだろうってことです。でもさらに疑問が浮かんできて、愛するものを守ろうとすることで争いが起こったら、他者を傷付けてもいいってことになってしまうなあと。それで「ナイフも銃も捨てて盾になろう」と歌っています。

──なるほど。

村上 親は子供を守ろうとしたとき、きっと自分の体を犠牲にして盾になるように守ろうとするんじゃないかな。僕らが生まれて初めて知った愛って親から注がれたものだと思うんです。そういう思いを歌に込めました。

左から柳沢亮太(G / SUPER BEAVER)、渋谷龍太(Vo / SUPER BEAVER)。

柳沢 村上くんはやっぱり頭がいいなって思うんですよ。しっかり考えてるなって思うし、すごく納得できた。

村上 そう言ってもらえるとうれしいな。ビーバーが伝えようとしている愛ってどんなもの?

柳沢 僕らはもっとざっくりだよ。でも自分が大事な人と他人の大事な人がつながっていくっていうのは、学くんとまったく同じことを思った。「愛する」って曲にある「あなたが愛する全てを愛する」っていうのはそういうことなんだ。自分がある人をすごく好きだとしたら、その人が大事にしているものも大事にしたいと思ってる。

SUPER BEAVER(スーパービーバー)

SUPER BEAVER

2005年に東京で結成されたロックバンド。メンバーは渋谷龍太(Vo)、柳沢亮太(G)、上杉研太(B)、藤原“26歳”広明(Dr)の4人。ギターロックを基調としたエモーショナルなサウンドと、メッセージ性あふれるまっすぐな歌詞を特徴とする。2009年6月にEPICレコードジャパンよりシングル「深呼吸」でメジャーデビュー。2010年10月にリリースされたミニアルバム「SUPER BEAVER」の収録曲「ささやかな」が、映画「ソラニン」のラストシーンで使用され話題を呼んだ。2011年に活動の場をメジャーからインディーズへと移し、年間100本以上のライブを敢行。2012年に自主レーベル「I×L×P× RECORDS」を立ち上げ、シングル「歓びの明日に」を発表した。2013年、東京・Shibuya eggmanのスタッフ・YUMAが「mini muff records」内に発足させたロックレーベル[NOiD]とタッグを組み、翌2014年2月にフルアルバム「361°」をリリースした。その後精力的にツアーや自主企画を開催し、9月にはテレビアニメ「ばらかもん」の主題歌「らしさ」を含むシングル「らしさ / わたくしごと」を発表した。同月に柳沢が緊急入院するという事態に見舞われたが、バンドはサポートメンバーを迎えライブ出演をキャンセルすることなく敢行。柳沢の退院後にアルバムの制作に入り、バンド結成10周年の節目に当たる2015年4月1日、ニューアルバム「愛する」をリリース。同月より全国ツアー「『愛する』Release Tour 2015 ~愛とラクダ、10周年ふりかけ~」を実施する。

テスラは泣かない。(テスラハナカナイ)

テスラは泣かない。

2008年5月に村上学(G, Vo)、吉牟田直和(B)を中心に結成。鹿児島を拠点に活動を続け、2010年4月に實吉祐一(Dr)、2011年10月に飯野桃子(Piano, Cho)が加入し、現在の編成に。同年11月にオーディション「RO69JACK 11/12」で入賞。ギターロックサウンドをベースに、エモーショナルなピアノリフと女性コーラスが加わった楽曲群と、叫びにも似た歌声や激しいライブパフォーマンスで着実に知名度を上げていく。2013年9月に1stミニアルバム「Anderson」を発表し、11月には初の全国ツアーを開催。このツアーの最終公演で、EMI Records(現Virgin Music)よりメジャーデビューすることを発表した。翌2014年2月に東京で初の自主企画を行い、4月にメジャーデビューシングル「Lie to myself」をリリース。同月に鹿児島・SR HALLで行ったレコ発ライブは満員御礼となった。6月にメジャー1stアルバム「TESLA doesn't know how to cry.」を発表。2015年2、3月に東京・Shibuya eggmanで自主企画「High noble MATCH! in TOKYO」を行い、3月4日に最新ミニアルバム「ONE」をリリース。4月よりリリースツアー「『ONE』release tour “国境線上で唄う”」を開催する。