音楽ナタリー Power Push - THE BAWDIES「NEW」特集 THE BAWDIES×草野翔吾監督

“こだわりの熱量”が共有できる信頼関係

恥ずかしい演技になってしまったら監督の責任

TAXMAN(G) 最初は自分たちが演技することについて、まじめに考えてなかったんですよ。ただ、「草野監督が撮ってくれるんだったらいいものになるだろう」って思っていただけで。でも撮影の日が近付くにつれてだんだんビビってきちゃって(笑)。実際立ち稽古をやってみたら、想像以上にポンコツで(笑)。

映画「NEW」のワンシーン。

ROY でも最初の2日間を立ち稽古に当てたんですけど、その2日間はかなり効いてて。もちろん2日間だけで演技の技術なんて学べるわけがないんだけど、恥を捨てる覚悟ができたというか、気持ちの整理ができた感じがあって。

──正直、作品を観て皆さんの演技がすごくしっかりしていたことに驚いたんですけど、立ち稽古だけに2日間当てたって話を聞いて納得しました。

草野 プロの俳優さんではないミュージシャンの方に演技をしてもらって、それがもし恥ずかしいものになってしまったら、それは完全に僕の責任なので。それだけは避けたかったから、やるからには芝居だけはちゃんとしたものを撮らなきゃいけないと思ったんです。ただ、これまでMVを5本撮ってきて「THE BAWDIESってバンドはきっと演技ができる人たちだ」って確信はあったんです。映画を撮りたいって言ったのも、その確信があったからで。

ROY まあ、ライブでも僕たち小芝居やってますからね(笑)。毎回、「HOT DOG」をやる前に。

草野 いや、実際あれも役に立っているんだと思いますよ(笑)。

MARCY(Dr)

MARCY きっと草野監督はこれまでMVを撮ってるときも、僕らのことをよく観察していたんだと思いますよ。だからセリフの流れとか、それぞれのメンバーとの絡みとかがすごく自然で。初めての演技とはいえ、もともと本人の役だし、それでちゃんとやりやすい台本を書いてくれたっていうのは大きかったですね。

──なるほど。

草野 ミュージックビデオの仕事を重ねていく中で、だんだんメンバーの関係性がわかっていったんです。だからこの「NEW」って映画は、僕が思うメンバーの人物像をそれぞれデフォルメして描いていったものなんです。

4人それぞれ、芝居へのスタンスが違う

──いや、真面目な話、これを機会にメンバー4人の誰かに演技の仕事のオファーが来るかもしれない。そのくらいよかったですよ。

THE BAWDIES (笑)。

草野翔吾

草野 演出目線で言うと、4人それぞれ芝居へのスタンスが違うんですよ。ROYさんは一番、芝居芝居してる。

ROY クサいってこと?

JIMTAXMANMARCY (笑)。

草野 でも今回みたいに本人役じゃなくて、他人の役をやって一番できるのはROYさんかJIMさんだと思う。いわゆる「演技!」って感じのことができる人。ちょっと舞台寄りっていうか。

──演技がクサいグループ(笑)。

草野 で、TAXMANさんとMARCYさんはもっとリアリティ方面というか、ナチュラル方面。「今っぽい」っていうか。ありのまま、自然体でそこにいられるっていう。

TAXMAN 最近の俳優さんに多いやつですね(笑)。

ROY 僕とJIMは昭和っぽいってことか(笑)。

草野 TAXMANさんみたいに、例えば演技でただ座っていられることができる人って貴重なんですよ。で、今回発見だったのが、MARCYさんはほかの3人が現場にいないところだとめちゃくちゃ芝居がよくなるっていうことで。

──ああ、確かに。それは観てて感じました。

草野 おばあちゃんと2人でコタツに入っているシーンとか、映画関係のスタッフの間でも大絶賛でしたよ。

MARCY (笑)。

映画「NEW」のワンシーン。

草野 JIMさんは、周りからどう見えているかをすごく気にする人で。

JIM  そんなことない(笑)。

草野 きっとそういうスタンスが全然違う4人がステージに立ってるから、THE BAWDIESのライブってあんなに魅力的なんだろうなって、勝手に自分で納得しちゃいましたね。

「NEW」は「タンポポ」の音楽版

──MVの中でボーカルの人だけちょっと演技っぽいことをするようなものはありますけど、バンドのメンバー全員がこれだけがっつり演技している作品って、それこそThe Beatlesの時代まで遡ればありますけど、最近はあまりないですよね。

TAXMAN(G)

TAXMAN よく言われるんですけど僕らって、ライブに来てくれれば本当の姿がわかるんですけど、音源だけしか聴いたことのない人からはすごくクールなバンドだと思われているんですよ。だからこういう映像作品がCDとセットになっているっていうのは、バンドにとってもすごく意味があることなんじゃないかなって。

草野 クールなバンドっていうのは、僕自身、本人たちと仕事をする前までは勘違いしてましたからね。で、さっきもタイトルが出ましたけど、僕は「ブルース・ブラザーズ」のような音楽映画が大好きで。最近も「はじまりのうた」とか、「シング・ストリート 未来へのうた」とか、海外にはいい音楽映画っていっぱいあると思うんです。だから自分としては、THE BAWDIESをあまり知らない映画界の人にもぜひこの作品を観てほしい。「日本のバンドでも、こういう映画ができるんだよ」って思ってもらえるんじゃないかなって。

──「THE BAWDIESで映画を撮りたい」っていうアイデアの背景には、そういう思いがあったんですね。

草野 それと、この作品の土台になっているのは伊丹十三監督の「タンポポ」なんですよ。

──なるほど、確かに。

草野 あれは西部劇の「シェーン」を土台にしている作品で。だから、自分の中では西部劇の「シェーン」、ラーメン屋版の「タンポポ」、そして音楽版の「NEW」って思ってもらえればいいなと(笑)。

“こだわりの熱量”が共有できる

草野 THE BAWDIESのMVを撮るまでは、映画ではできないことをMVでやろうという思いがあったんですよ。MVではもっととんがったものというか、表現寄りのものをやろうって。でも、今はもうそこに境目は全然ないです。映画の世界で得たものをMVにフィードバックしていきたいし、MVで得たものを映画にもフィードバックしていきたいし。軸足は映画にありながらも、自由にそこを行き来できるのが理想ですね。

THE BAWDIES

ROY 僕らってすごくこだわりの強いバンドだと思うんです。幅が狭くて、でも深いみたいな。だから、まずそのこだわりを理解してもらえないと、一緒に仕事をしてもなかなかうまくいかなかったりするんですよ。で、草野監督は草野監督で、こだわりをすごく強く持っている人で。そういう“こだわりの熱量”みたいなところで共有できる感覚があって。ちゃんとこちらがこだわりを放つと、それと同じかそれ以上の熱量で返してくれるんですよ。そこがすごくうれしくて。

──そういう信頼関係がないと、なかなかこういう作品は作れないですよね。

草野 今回に関しては完全に任せてもらえて。なかなかそういう関係で仕事をすることってできないから、本当にうれしかったですね。あと、きっとTHE BAWDIESと共通するものが自分にあるとしたら、それは「質感へのこだわり」かもしれないです。THE BAWDIESが音の質感にこだわるように、自分も映像の質感にすごくこだわりがあって。

TAXMAN 僕らがビンテージの楽器にこだわるように、草野監督って、すごくビンテージのレンズにこだわるんです。そういう姿を見て、「この人は間違いない」って思いました。

草野 レンズのこだわりってなかなか理解されないんですけどね(笑)。でも彼らはそれをすぐにわかってくれた。それと自分が作品でこだわっているのはユーモアがあるものってことで。そういう意味でもTHE BAWDIESってすごくユーモアをわかってくれるバンドだから、一緒にやっていて楽しいんですよね。

ニューアルバム「NEW」2017年2月8日発売 / Getting Better
「NEW」
初回限定盤[CD+DVD] 3672円 / VIZL-1096
通常盤[CD] 3024円 / VICL-64705
アナログ盤 3240円 / VIJL-60180
CD収録曲
  1. THE EDGE
  2. HELLO
  3. 45s
  4. DANCING SHOES ["NEW" Version]
  5. RAINY DAY
  6. SUNSHINE
  7. POPULAR GIRL
  8. MAKE IT SNOW ["NEW" Version]
  9. MY EVERYTHING
  10. SHAKE, SHOUT & SOUL
  11. HOT NIGHT, MOON LIGHT
  12. NEW LIGHTS
初回限定盤DVD収録内容
  • THE BAWDIES主演 短編映画「NEW」(29min)
  • THE MAKING OF SHORT FILM "NEW"(39min)
ツアー情報
「NEW BEAT TOUR 2017」

ニューアルバム「NEW」を携えて行われる全国ツアー。「~See The Rock !! Feel The Roll !!~」という副題が付けられた北海道・Zepp Sapporo公演、東京・NHKホール公演、大阪・オリックス劇場公演、愛知・日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール公演、福岡・福岡市民会館では草野監督による映像演出が行われる。

  • 2017年2月19日(日)東京都 新木場STUDIO COAST
  • 2017年2月25日(土)大阪府 なんばHatch
  • 2017年2月26日(日)愛知県 DIAMOND HALL
  • 2017年3月2日(木)高知県 X-pt.
  • 2017年3月4日(土)香川県 高松MONSTER
  • 2017年3月5日(日)愛媛県 WstudioRED
  • 2017年3月9日(木)静岡県 LiveHouse 浜松 窓枠
  • 2017年3月11日(土)和歌山県 SHELTER
  • 2017年3月12日(日)京都府 磔磔
  • 2017年3月17日(金)岩手県 Club Change WAVE
  • 2017年3月18日(土)青森県 青森Quarter
  • 2017年3月20日(月・祝)宮城県 Rensa
  • 2017年3月25日(土)栃木県 HEAVEN'S ROCK Utsunomiya VJ-2
  • 2017年3月26日(日)福島県 郡山 HIP SHOT JAPAN
  • 2017年3月30日(木)岡山県 YEBISU YA PRO
  • 2017年4月1日(土)広島県 広島CLUB QUATTRO
  • 2017年4月2日(日)山口県 周南RISING HALL
  • 2017年4月15日(土)滋賀県 SHIGA U★STONE
  • 2017年4月16日(日)兵庫県 チキンジョージ
  • 2017年4月20日(木)長野県 Sound Hall a.C
  • 2017年4月22日(土)新潟県 新潟LOTS
  • 2017年4月23日(日)富山県 MAIRO
  • 2017年4月27日(木)埼玉県 HEAVEN'S ROCK Kumagaya VJ-1
  • 2017年4月28日(金)群馬県 高崎club FLEEZ
  • 2017年4月30日(日)茨城県 mito LIGHT HOUSE
  • 2017年5月13日(土)北海道 Zepp Sapporo
  • 2017年5月21日(日)東京都 NHKホール
  • 2017年5月28日(日)大阪府 オリックス劇場
  • 2017年5月29日(月)愛知県 日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
  • 2017年6月8日(木)長崎県 DRUM Be-7
  • 2017年6月10日(土)大分県 DRUM Be-0
  • 2017年6月11日(日)福岡県 福岡市民会館
  • 2017年6月16日(金)沖縄県 桜坂セントラル
THE BAWDIES(ボウディーズ)
THE BAWDIES

ROY(Vo, B)、TAXMAN(G, Vo)、JIM(G)、MARCY(Dr)によって2004年1月1日に結成。リズム&ブルースやロックンロールをルーツにした楽曲と熱いライブパフォーマンスが各地で噂を呼ぶ。2009年4月に発表したメジャー1stアルバム「THIS IS MY STORY」は「第2回CDショップ大賞」を受賞。2013年1月に4thアルバム「1-2-3」をリリースし、同年2月より横浜アリーナ、大阪城ホール公演を含む59公演の全都道府県ツアーを開催した。2014年1月に結成10周年を迎え、同年3月にカバーアルバム「GOING BACK HOME」を、12月には5thアルバム「Boys!」を発表し、2015年3月には2度目の日本武道館公演を成功に収めた。10月にペトロールズの長岡亮介をプロデューサーに迎えたシングル「SUNSHINE」を、2016年7月にはgo!go!vanillasとのスプリットシングル「Rockin' Zombies」をリリース。2017年2月には約2年ぶりのニューアルバム「NEW」を発売した。

草野翔吾(クサノショウゴ)

1984年生まれ、群馬県出身。早稲田大学在学中より映画制作を始め、監督した長編映画が学生映画ながら一般劇場で上映され話題を呼んだ。監督・プロデュースを手がけた2012年公開の長編映画「からっぽ」は、国内外の映画祭で上映された。2016年には小林ユミヲのマンガを原作とした監督作「にがくてあまい」を公開。また映画以外の映像作品も多数手掛けており、THE BAWDIES「NO WAY」のミュージックビデオは、2014年度の「SPACE SHOWER MUSIC VIDEO AWARDS」にて優秀作品に選出された。