浅井健一 & THE INTERCHANGE KILLS|“どこにもない景色”に向けた最先端ロック

ロックは時代の最先端じゃないとダメ

──歌詞も素晴らしいですね。特に「真っすぐ生きて きれいに死ぬ」というフレーズはグッときました。

浅井健一

いろんな曲があふれていて、誰かの恋愛の話を聞くのもたまにはいいけど、やっぱりこういうことだなって思う。毎日のように曲を書いていて、「結局、自分は何が言いたいんだろう?」「歌で何を表したいんだろう?」と立ち返ることがあるんだよね。

──浅井さんの表現の本質が感じられる楽曲だと思います。この歌詞を書いたきっかけは何かあるんですか?

いや、ないかな。ただ、街を歩くとみんな携帯を見とるじゃん? たぶん大したことはやってないと思うし、ずっと画面を見ながら過ごしている人間が多いことに対して「何だこれ」って思うんだよね。「こんな状態に世界がなったのはどうしてだろう?」とか、「いつまでこれが続くんだろう?」って。そんな仲間に入りたくないという思いはあるね。でも、この前パリに行ったときに初めてインスタをやってみたら、ハマリそうになって。

──そのインスタ、見ました(笑)(参照:SexyStonesRecords (@kenichi_asai_official)|Instagram)。

ああいうことやるとさ、ずっと携帯やiPadばっかり見ちゃうんだよね。気になるんだよ、どれくらい見られてるのか。「なるほど、こういうことか」ってわかったよ。もうやめたけどね。手を切った。

──SNSが生活の中心みたいな人も多そうですからね。

ネットって、悪口が多いじゃん。誰かを馬鹿にして笑いを取るような芸人もそうだけど、ああいう風潮がイヤなんだわ。誰かの嫌な部分を強調するような見出しを付けてアクセス数を取ろうとしたりね。人間のよくないところ、気持ち悪い部分があふれていて嫌いなんだよ。もちろんインターネットは便利だから、仕事では使ってるけどね。もっとうまい具合に使わないと。

──「染まらないで」「この社会に」という歌詞も印象的でした。「社会に染まりたくない」という考え方も浅井さんの根本にありますか?

浅井健一

うーん、難しいな。昔と今は違うからね。俺が二十代の頃の政治は、悪い勢力が権力を握ってたと思うんだよ。よくない面ばかりではないけど、ずるい人たちがたくさんいた。今はその頃とは違っていて、がんばってる政治家がいるし、自分の中の社会に対する考え方も変化してる。音楽業界は反体制の人が多いけど、もうちょっと勉強したほうがいいよね。こんなこと言ったら「何!?」って反論してくる奴がいそうだけど。あと政治以外のことで言うと、やっぱり誹謗中傷の風潮が嫌だね。面と向かっては言えないのに、名前と場所がわからないところからいろいろ言うなんて卑怯だと思う。一番カッコ悪いことなのに、堂々とやる人が多いでしょ。「何でこんなことになったんだろう?」とは思うよね。

──それをよい方向に変化させるために、音楽にはすごく力があると思います。もちろん「Beautiful Death」もそうですが。

話題になるといいな。以前、大貫憲章さんが言ってたけど、ロックは時代の最先端じゃないとダメで。だから、昔の流れと同じ反体制は違うんだよね。世界の状況をよく見て、今どうなってるのかを自分で感じて、自分で考えないと。ロックに限らず、モノを作る人間は感覚を敏感に研ぎ澄ませないとね。「Beautiful Death」もそういう歌かな。

責任重大な「どこにもない景色」ツアー

──先ほども少し話に出てきましたが、ミュージックビデオの撮影はパリで行われたとか。

うん。監督のアイデアでパリで撮ろうという話になって。最初は「大丈夫かな」と思ってたんだけど、実際行って撮ってみたら、すごくよかったよ。おまけにスケボーまで乗ったからね。正直それも「?」だったんだけど、すげえ楽しかった。監督もがんばってたし、カッコいいMVになったんじゃないかな。

──ちなみに、浅井さんはパリには何度か行かれてるんですか?

3回目かな。22年ぶりくらいだったんだけど、全然変わってなかった。町並みは昔のままだし、エッフェル塔、凱旋門は相変わらず迫力あったし。食事は不味かったけどね。ホテルの前に日本食の店があってうどんを食べたんだけど、ダメだった。パクチーとチキンが入ってたよ(笑)。中国人が日本人になりすまして営業してた。

──(笑)。海外に行くとモノ作りにつながるようなインスピレーションも得られますか?

浅井健一

海外はひさびさだったけど、やっぱりそうだね。得たものが作品に出てくるのは先になると思うけど、刺激は受けた。世界は広いし、いろんな奴がいるからね。

──最後に全国ツアー「どこにもない景色TOUR 2017」の展望を聞かせてください。ツアーでは新曲も聴けそうですか?

もちろんやるよ。新曲が5曲くらい。あとはこれまでのすべての楽曲から選んだ曲とKILLSの曲で構成しようと思ってる。過去のツアーとはまた違ったものになるだろうし、「どこにもない景色」ツアーだから、責任重大だよね。

──誰も観たことがないような景色を観られるライブになる、と。

そうしないとね。いいツアーになると思うし、みんなとライブで同化できたら最高だね!

浅井健一 & THE INTERCHANGE KILLS「Beautiful Death」
2017年11月6日配信リリース / アリオラジャパン
浅井健一 & THE INTERCHANGE KILLS「Beautiful Death」

250円

iTunes Store

収録曲
  1. Beautiful Death
浅井健一 & THE INTERCHANGE KILLS「どこにもない景色TOUR 2017」
  • 2017年11月6日(月)愛知県 伏見JAMMIN'
  • 2017年11月7日(火)大阪府 Shangri-La
  • 2017年11月9日(木)島根県 松江 AZTiC canova
  • 2017年11月11日(土)福岡県 DRUM Be-1
  • 2017年11月12日(日)鹿児島県 SR HALL
  • 2017年11月21日(火)北海道 Sound Lab mole
  • 2017年11月23日(木・祝)群馬県 前橋DYVER
  • 2017年11月24日(金)福島県 Out Line
  • 2017年11月28日(火)東京都 LIQUIDROOM
浅井健一(アサイケンイチ)
浅井健一
1964年生まれ。愛知県出身。1991年にBLANKEY JET CITYのボーカル&ギターとして、シングル「不良少年のうた」とアルバム「Red Guitar and the Truth」でメジャーデビューを飾る。数々の名作を残し、2000年7月に惜しまれつつ解散。その後、SHERBETSやJUDEなどさまざまな形でバンド活動を続け、2006年7月にソロ名義では初となるシングル「危険すぎる」、同年9月に初ソロアルバム「Johnny Hell」を発表した。繊細なタッチで描かれるイラストも高く評価されており、絵本や画集などを発表している。2016年5月に新たなソロプロジェクト・浅井健一 & THE INTERCHANGE KILLSを始動。メンバーは浅井、中尾憲太郎(B)、小林瞳(Dr)で、同年10月にシングル「Messenger Boy」、2017年1月にアルバム「METEO」を発表した。11月に全国ツアー「どこにもない景色TOUR 2017」を開催し、新曲「Beautiful Death」を配信リリースする。