カップリング曲について真剣に考えた末の音頭

──カップリングの「あんぢぇら音頭」は、一聴してド直球の音頭ぶりに驚きました。

atsuko　「音頭みたいな成分を取り入れたangela曲」ではなく、ゴリゴリの音頭ですよね。

──angelaにとってタイアップのないカップリング曲はひさびさではありますが、音頭にした理由は？

atsuko　今回、私はこれまでにないくらい真面目にカップリング曲というものについて考えました。カップリング曲ってCDのリリースイベントのときに歌われることはあっても、新曲が次から次へと誕生していく中で、ライブで歌われる可能性はどんどん減っていくんですよ。そういう意味ではすごくかわいそうな存在で。「それではいかん」と思い、考えに考えた結果「季節に特化したものを作れば、またその季節になったときに歌わざるをえないのでは」と思い付いたんです。「LOVE & CARNIVAL」（2016年8月発売の8thアルバム）にもハロウィンをテーマにした曲「That's Halloween」がありますが、あれも今後ハロウィンの時期にライブをする際は絶対に歌うでしょうし。そこから日本の夏の歌について考えた結果、音頭を選びました。それに「ドラえもん音頭」や「オバQ音頭」なんてすごく国民的ですし……って、私1人でしゃべってるけど大丈夫ですか？

──真剣に考えたうえで音頭を選択されたのが伝わりました。

atsuko　だって「全力☆Summer!」がとても楽しい曲なのに、そのカップリングで「生きるとはなんぞや」みたいなバラードを入れても「なぜそうした？」って感じだし。これが「蒼穹のファフナー」のタイアップシングルだったら「あんぢぇら音頭」は入れられなかった。

KATSU　やれたとして「竜宮島音頭」かな。「勝手に作っちゃいました」とか言って（笑）。本当は僕がウクレレを弾く、ハワイアンな曲を作っていたんですよ。でも普通にいい曲になっちゃったので、「つまんなくね？」と思い、ボツにしました。

atsuko　それに2人共ハワイに行ったことがないから、私たちの遺伝子にハワイ感がないんですよ。やっぱり私たちは日本人だから、4拍子だと1拍3拍で手を叩いちゃう。2拍4拍のほうが軽快な感じにはなるけど、日本人がたくさんいたときに手拍子すると必ず1拍3拍になる。「パパンがパン」という手拍子もそうですが、そういったDNAに刷り込まれたものが日本人にもあることに最近気付きました。これからは、そういった初めて聴いた人でも安心できるものを推奨していきたいですね。

──曲を作るにあたって、音頭は研究しましたか？

KATSU　かなりしましたよ。例えば「ドラえもん音頭」は歌詞やメロディは音頭なんですけど、実はすごくファンクなんです。だからあまり曲の面では参考にはならなかった（笑）。

atsuko　でも歌詞の覚えやすさとかすごく参考になりました。あとangelaはずっと歌ものをやってきているので、やっぱりできあがったのは歌ものの音頭なんですよ。次に「大あんぢぇら音頭」を作る機会があれば、また歌ものとは違ったアプローチにしたいねという話はしました。

KATSU　でも音頭って意外とバリエーションが少なくて、angelaが音頭専門のアーティストになったら限界は近いぞと思いました。今回は初めて作った音頭だから大丈夫ですけど……それくらい音頭は難しいです。

──掛け声の多さも音頭っぽいですよね。KATSUさんの「なんのこっちゃ」もいいアクセントになっていますが、こんなにクリアな声がCDに収録されたのは初めてでしょうか？

KATSU　そうですね、言わされましたね……。

atsuko　最初は入れる予定はありませんでした。でも私の歌と女の子たちの掛け声をトラックに入れてもらったときに「なんか足りないなあ」と感じて。そこで閃いたのが松本梨香さんの「めざせポケモンマスター」で、オーキド博士の「そりゃそうじゃ！」って声が入るじゃないですか。ああいうのを入れたいと思って「KATSUさん、ブースに入って！」と指示して、何パターンも録りました。改めて聴くとやってよかったなと思います。

KATSU　僕はいまだに要らないと思っていますよ（笑）。

とにかくこだわるKATSUとこだわりすぎないatsukoという“らしさ”

──atsukoさんが5月30日のブログ（参照：angela 公式ブログ Powered by LINE - LINE Blog）で、「あんぢぇら音頭」におけるKATSUさんのこだわりぶりに触れていました。具体的にどのあたりにこだわっていたのでしょうか？

KATSU　「どうやったら本物の音頭の音になるか」というところですね。僕たちにとってなじみのある音頭って、テープで録音されたものが多いんですよ。でも今はデジタル録音だから、極力アナログな音頭の音に近付けてみても、ミックスする前に聴いたらハイファイすぎるんです。だからどうにかして音頭っぽくしようと「明日へのbrilliant road」（2003年5月発売の1stシングル）や「Shangri-La」（2004年8月発売の6thシングル）を担当してくれたエンジニアさんに相談しました。それで三線や和太鼓などの音をテープに録ってからデジタルに取り込み、聴きなじみのある音頭の音に近付けていくみたいな作業をしていたんですけど……隣でatsukoは「ふーん」「勝手にどうぞー」みたいな感じで見ていたという。

atsuko　（笑）。

KATSU　でも結局、最終的にはハイファイなほうを使ったんですけどね。確かにテープで録るとより音頭っぽくはなるけど、それより低音がブワッと広がるほうが、みんなが聴いたことのない音頭になるだろうなと思って。そういった加工をするのは楽しかったです。

atsuko　たぶんそういったこだわりって、こんなふうにインタビューで聞かれでもしないと誰も気付かないようなことだと思うんです。でも「この曲に一生付き合うんだから、やりたいところまでやったほうがいい」とも思うし、葛藤しているんですよ（笑）。ただ、そんなこだわりからangelaらしさみたいなものが生まれているかもしれない、とは薄々感じています。

バナナ被ってる人は最後列へ

──夏のリリースイベントや秋の「angela 全力☆Live! 2017」でこのシングルの楽曲も聴けると思いますが、「全力☆Summer!」はどう楽しむのがよいと思いますか？

KATSU　今だからはっきり言えますけど……angelaはもうベテランなので。

atsuko　え、そうなの!?

KATSU　僕たちに身を委ねてください。アニソンファンの楽しみ方もこの10何年かでずいぶんと変わってきているじゃないですか。その移り変わりと共にお客さん自体も変わってきているけど、この「全力☆Summer!」ではどんな人でも全力で楽しませる自信があります。だから安心して僕たちに身を委ねてほしいです。

atsuko　私は、MVのサビに出てくるバナナの被り物をしてくる人が絶対にいるんじゃないかなと思っていて。でもそうすると後ろの人が見えなくなるから、そういう人には「最後列に行こうね」と言うつもりです。これは書いておいてください！