ナタリー PowerPush - angela

人々の声と思いの中に見出した グループのカタチと「ANGEL」のカタチ

夜の池袋の路上が教えてくれたangelaサウンド

──今のangelaに見られる、エモーショナルで和テイストあふれるメロディラインはいつどこで手に入れたんですか?

KATSU 路上ライブですね。2000年頃、1カ月間くらい昼間の代々木で路上ライブをやり始めたんですけど、まったくお客さんが増えなかったんですよ。で、ある日「このまま池袋に移動してやってみようか」ってことで夜の池袋でまったく同じ機材で同じような内容のライブをやったら、ものすごく人が立ち止まってくれて。そのときわかったのが、音楽には聴かれるべき時間帯や場所があるっていうことと、もうひとつ、確実に足を止めてくれる曲があるなってことだったんです。

──どんな曲だったんですか?

KATSU atsukoのファルセットやビブラートを効かせた曲なんですよね。横断歩道の近くでやっているときなんかに赤信号のタイミングを狙って、その手の曲をやるとみんな聴いてくれるし、CDがメチャクチャ売れるんですよ(笑)。で「あっ、atsukoの魅力ってファルセットとかビブラートなのかな」っていうことがなんとなくわかるようになり。気持ちのいいタイミングで、気持ちのいいファルセットが出てくるようなキーの跳ばし方をする曲を作るようになったんです。今もそうなんですけど、実は自分たち自身はangelaとはどういうグループなんだ、っていうことをはっきり決めているわけではないんですよ。そういう路上ライブのお客さんや、ファンの方や、スタッフの反応や意見や感想に耳を傾けることで、自分たちが何者なのか、教えてもらいながら進んでる感じなんですよね。

──実は自分たちのありようや音楽のスタイルの確立に躍起になっていたわけではない。でも10年間一線で活躍し続けられている上に、愛される曲を書き続けられているっていうのは、本当にすごいことだと思います。

KATSU 逆に「angelaの曲はこうあるべき」っていうものは持たなかったのがよかったのかな、とも思います。以前、僕たちがテーマソングを担当させてもらった「蒼穹のファフナー」っていうアニメの原作者の冲方丁さんが言っていたことなんですけど「物語を書くっていうのは発掘するってことなんだ」と。「物語が埋まっているらしき場所を見つけたとき、その場所に関する言葉をちょっとずつ書き進めていくと、徐々に物語の全体像とディテールが見えてくるんだ」「物語を“掘り出す”代わりに“書き出す”んだ」っておっしゃっていて、その言葉がすごくしっくりきたんですね。例えば今回のシングル曲の「ANGEL」であればアニメ「COPPELION」のテーマソングになるわけだから、「COPPELION」っていう作品を観たり読んだりして、自分なりに消化したときに聞こえてきた音を形にする。もちろんatsukoのファルセットやビブラートのようなangelaらしさも盛り込むんだけど、それよりも僕たちは「COPPELION」の画や物語が聴かせてくれたメロディやテンポ感をもとに、使う楽器や参加してもらうミュージシャンを選ぶことを優先したいんですよ。

アニメが求めるサウンドはロゴデザインが教えてくれる

──「COPPELION」はどんな音を聴かせてくれました?

atsuko 今、表現するにはハードな上にデリケートな題材を取り扱う作品だから、デジタル的な音ではなく、もっと無骨な音にしようっていうところは私とKATSUの中で一致してましたね。

KATSU あと僕自身はアニメのテーマソングを作るとき一番重視しているのがそのアニメのロゴのデザインなんですよ。

──音を作るのに文字ヅラを気になさるんですか?

KATSU ええ。「COPPELION」っていう、あの焼き印を押したみたいなロゴデザインを見つつ、さらに物語を読んだ上で、さっきatsukoが言った通り無骨でハードなロックテイストの音にするべきだろうな、っていう結論に至ったって感じなんです。(窓の外を見て)あそこにファミリーマートがありますけど「COPPELION」っていうロゴがファミマみたいなブルーとグリーンの蛍光色で描かれていたら、もっとキラキラしたトランシーな音にしていたと思いますし、筆文字で書かれていたら演歌っぽくなっていたかもしれないし。それでも強いメロディラインやatsukoの声があればangelaの音になる自信はありますから。

──ロゴから着想を得るのはアニメのオープニング映像にロゴが大映しになるからですか?

KATSU そうですね。オープニングテーマってそのアニメの看板とともに鳴る音なので、看板が求めている音、看板が鳴らしている音はなんなのかを探るようにはしています。

──そしてangela一流のメロディラインやテンポ感は守りつつも、いつもよりもよりラウドでハードコアな「ANGEL」のサウンドができあがった、と。

atsuko ただすぐにメロディが決まったわけでもなくて。けっこう時間はかかったんですよね。普段は別々に作曲作業を進めて、最後にお互いのアイデアを擦り合わせることが多いんですけど、今回はその方法ではメロディを決めきれなくて。どっちかがパソコンの前に座って、うしろに立っているもう1人からあーだこーだ言われながら作っていきました(笑)。

angela(あんじぇら)

岡山県出身のatsuko(Vo)とKATSU(G, Key)による2人組ユニット。それぞれ音楽を志し上京したのち結成し、楽曲制作を続けるかたわら、2000年頃より代々木、池袋などで路上ライブを積極的に展開。そのライブを通じて多くのファンを獲得すると同時に、現在の所属レーベル関係者との出会いを果たし、2003年シングル「明日へのbrilliant road」でメジャーデビュー。シングル表題曲とカップリング「綺麗な夜空」がテレビアニメ「宇宙のステルヴィア」のテーマソングに起用されたこともあり、1stシングルながらオリコン週間シングルランキングで15位をマークし、瞬く間にアニメソングシーンで存在感を示すこととなる。以来、アニメ「蒼穹のファフナー」の主題歌「Shangri-La」や、アニメ「アスラクライン」主題歌「Spiral」、アニメ「K」主題歌「KING」など、多くの人気アニメのテーマソングを担当。また「Animelo Summer Live」やアメリカの「SAKURA-CON」、カナダの「CANADIAN NATIONAL EXPO 、フランスの「Japan Expo」、など、国内外の大型アニメ系イベントにも多数招へいされる。2013年4月にはデビュー10周年記念アルバム「ZERO」をリリースしオリコン週間アルバムランキングで10位を獲得。11月にはデビュー11年目の第1弾作品となる両A面シングル「ANGEL / 遠くまで」を発表した。