音楽ナタリー Power Push - androp

ありのままの自分たちを表現するために

見せ方を意識しないで、自分たちから出てきたものをそのまま曲にする

──新作の話も聞かせてください。これまでの6枚のアルバム(「anew」「note」「door」「relight」「one and zero」「period」)のタイトルは頭文字を取るとandropになったわけですけど、今作を「androp」というタイトルにするのも早くから決めてたんですか?

内澤 そうです。「anew」の頃から、pまで行ったら次は「androp」にしようって。

──歌や演奏などがすごくいい頃合いを迎える中で、過去の流れも汲んだセルフタイトルでこれほどのクオリティの作品が完成したのは、本当に美しすぎる展開というか。まるで、ここに到達するまでに5年かかるのを見越してたかのような感じすらしますけど。

内澤 いやいや、そこまでは……! 最初はこうしたら面白いかなくらいの感覚だったんです。だけど、それだけじゃ済まされない思いみたいなものがだんだん出てきて、僕の中で意味合いが深まってきましたね。「door」あたりからみんなが気付くんですよ。で、「pからどうなるんですか?」とか聞かれると、なんだか責任重大で。以前までのアルバムを作ってる間は、自分で決めたくせに窮屈な瞬間もあって、「period」を作ったときは肩の荷が降りたんですよね。

──そうだったんですか。

7月12日に東京・新代田FEVERで開催された、ライブハウスツアー「one-man live tour "angstrom 0.7 pm"」のセミファイナル公演の様子。

内澤 実は5年前の構想時は「androp」というベスト盤を出したいと思ってたんですよ。でも、やっぱりそうじゃないなと。今のandropを知ってもらうために、ベストを超える曲を作りたくなったんです。そのほうがタイトルに意味を持たせられて、自分たちをちゃんと表現できる。代々木を経験して、「ここからスタートする。自由になるぞ!」っていう音が詰まったものを出したい気持ちになって。

──いいですね。

内澤 以前は「こういうのもできます」みたいな見せ方も意識しつつ曲作りをしてたんですが、今回は一切考えずに、自分たちから出てきたものをそのまま曲にするスタイルでやりました。例えば、今回リフものが何曲か入ってますけど、これまでは「andropのイメージとは違うし、やめとこう」ってナシにしてたんですよ。でも「今だったら、リフものをやっても俺たちの音にできるんじゃないか?」って思えて、チャレンジできたんです。規制を外して、自由に音楽を作り始めて、「androp」というアルバムができていった気がしますね。

──「自由」っていうのは、新作においてもキーワードになってるんですね。

内澤 なってますね。あとは、ライブでは伝えられる熱量をどうやって音源に込めるかをメンバーと何度も話し合って、試行錯誤しながらレコーディングしていきました。そこも大きく変わった点ですね。

5年前だったら絶対に生まれてない曲が多い

──特に「Songs」なんかは、ライブの景色を経て生まれた曲なのかなって感じました。

内澤 まさにライブを意識して作ったので、そこで伝えたいメッセージが決意表明みたいな歌詞になりましたね。「自分たちが音楽を続けていく」っていう。厳かな雰囲気で始まって、壮大に終わるイメージがあったから、ハモンドオルガンが合うなと。

──andropの楽曲って、「光と闇」を思わせるものが多かったですよね。それを「白と黒」だとすると、今回はもっと違う色も出てる気がします。アートワークもさわやかな青が基調になってて。

内澤 アートワークの青は、カラフルなイメージを表してます。確かに、白と黒だけではなくて、曲ごとに異なる色がある印象でした。混ざり合ってる感じ。

──実際に曲を聴いて、これまでのアルバムで一番明るいと感じました。

7月12日に東京・新代田FEVERで開催された、ライブハウスツアー「one-man live tour "angstrom 0.7 pm"」のセミファイナル公演の様子。

内澤 よりくっきりしてますよね。

──そうそう、夏っぽいというか。

佐藤 「Yeah!Yeah!Yeah!」とか、青春ですよね。5年前だったら絶対に生まれてない曲が多い。

内澤 みんなに驚かれるよね。

佐藤 「こんなバンドだったっけ?」ってね(笑)。

──「andropって、こんなさわやかさもあったの?」みたいな。

佐藤 できるようになったんですよね。というか、自然にやったらこうなった。

内澤 アルバムの顔になるのは、やっぱり「Yeah!Yeah!Yeah!」ですね。より従来の自分たちを壊してくれる曲だったし、体験したことがない場所にこの曲が連れていってくれてる感覚があるんです。

伊藤 そうだね、「Yeah!Yeah!Yeah!」がリードだよね。これが全体を引っ張ってるイメージを持って、ほかの曲を演奏したりもしましたから。

──確かに、andropの夏曲は意外すぎました。

内澤 まず、夏と結びつかないでしょ(笑)。「Run」にしても、J-WAVEのサッカーキャンペーンソングを作るというお話をいただいたときに「夏や青空に合う曲」っていうオファーをいただいて。いろんな偶然も重なったんですよね。

──ちなみにサーフィンをやるのは、前田さんと伊藤さんでしたっけ?

前田伊藤 そうです!

──海には行けてるんですか?

前田 僕、最近まったく行けてないんですよ。センパイは?

伊藤 全然ですよ(笑)。ツアーのスケジュール見ていただければわかるとおり。

前田 一緒にも行けてないね。

伊藤 あまり付き合ってくれないんで、お互いソロ活動です。

ニューシングル「androp」/ 2015年8月5日発売 / unBORDE
「androp」
初回限定盤 [CD+DVD] 3780円 / WPZL-31063~4
通常盤 [CD] 3240円 / WPCL-12178
CD収録曲
  1. Yeah!Yeah!Yeah!
  2. From here
  3. Shout
  4. Answer
  5. Paranoid
  6. Star
  7. Dreamer
  8. Alternative Summer
  9. Letter
  10. Corna
  11. Ghost
  12. Run
  13. Songs
  14. You Make Me
初回限定盤DVD
  1. From here(studio live)
  2. Paranoid(studio live)
  3. Letter(studio live)
  4. Yeah!Yeah!Yeah!(studio live)
初回限定盤のみ

特殊デジパック仕様
最新のスタジオライブ映像を収録したDVD付2枚組

androp(アンドロップ)
androp

内澤崇仁(Vo, G)、佐藤拓也(G, Key)、前田恭介(B)、伊藤彬彦(Dr)の4人組ロックバンド。2009年12月に1stアルバム「anew」でデビュー。緻密なサウンドアプローチと多角的な音楽表現のみならず映像作品やアートワークでも注目を集めており、フランスのカンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル、アメリカのOne Show Designなど国内外のアワードを受賞している。2014年3月に発売された3rdフルアルバム「period」はオリコンデイリーランキング初登場トップ5入りを記録し、同月末に東京・国立代々木競技場第一体育館で行われた初のアリーナ単独公演はソールドアウトとなって1万人を動員。映像、音響、照明が三位一体となったスペクタクルなステージパフォーマンスも大きな注目を集めている。2015年5~7月にかけては、バンド史上最多となる36都市39公演の全国ライブハウスツアーを開催。8月5日には、三ツ矢サイダーのテレビCMソング「Yeah!Yeah!Yeah!」や、ドラマ主題歌となった「Shout」「Ghost」、昨年世界公開された映画「アップルシード アルファ」の挿入歌「You Make Me」ほか話題曲を含む全14曲入りのニューアルバム「androp」をリリース。映画やドラマの主題歌を数多く手がけるなど、その活動は多岐にわたる。