音楽ナタリー Power Push - amazarashi

amazarashi 5周年の軌跡と秋田ひろむが見据える未来

二日酔いで書いた歌詞をそのまま採用

──「ライフイズビューティフル」のタイトルやまっすぐな歌詞に心を打たれました。過去を振り返りながらも未来への思いを確固たるものにする歌に秋田さんの新たな決意を感じました。今、こういった迷いのない曲が生まれたのはどうしてだったんでしょうか?

今までの人生を振り返った歌です。こういう“人生総まとめ”みたいな歌は要所要所で作っていて、僕にとって大事な位置にあります。今回もいいものができました。古い友達と飲みにいったりすると、いろんなことがあってここにいるんだなってしみじみしちゃって。そんな思いからできた曲です。

──生きる意味を自らに問う「吐きそうだ」は、美しいコーラスワークが斬新でした。アレンジも含め、どのように構築していったのでしょう? またこの曲を通して秋田さんの中で明確になった“生きる意味”とは?

アレンジの段階ではアレンジャーの出羽(良彰)くんがコーラスを入れてくれてて、いいなと思っていました。だけど「季節は次々死んでいく」で豊川のコーラスが思いのほかよかったので、この曲にも豊川のコーラスを入れたいと思って、締め切り間際に僕の自宅で急いで録音して完成させました。この歌は二日酔いのときに作ったんですが、その混乱具合がいいなと思って、歌詞はそのとき書いたものをそのまま採用しています。結局歌の中で生きる意味なんて見つかってないんですけど、そのオチがつかない感じが僕の日常っぽいなと思って収録しました。

amazarashiのライブの様子。(写真提供:Sony Music Associated Records)

──「しらふ」はこれまでのポエトリーリーディング曲とは一味違う、朗読劇とも言える生々しい作品になっています。詩の内容には秋田さんを彷彿とさせるフレーズもありますが、どんなイメージで主人公、物語をつづっていったのでしょうか?

ずっとポエトリーリーディングはやってきたんですけど、以前からもっと表現方法があるんじゃないかと模索してて、この「しらふ」が今のところの完成品です。音やメロディがなくても言葉だけで鳥肌が立つような、そういうものを作りたかったんです。自分の昔のバイト生活で鬱屈としたところから、一歩踏み出すようなイメージで詩を書きました。

負を正に浄化する感覚

──「エンディングテーマ」では、「生きていたいよ」「今の僕は幸せなんだな」「ありがとう」といった死を意識することで生まれたまっすぐな言葉に胸を打たれました。これまでもさまざまな表現で死生観を描いてきた秋田さんが、ここまでストレートに曲として吐き出すことができたのはどうしてだったのでしょう?

失うことで何かに必死になれるのなら、満たされてないのは幸せなのかな、ということを一番言いたかったんです。人生において一番満たされてない状況は死を目前にしたときなので、その状況でこそ必死さや渇望する力が描けると思ってこういう歌を作りました。自分の遺書になるような気持ちで歌詞を書いたら、素直な言葉が出てきました。

──「花は誰かの死体に咲く」は「エンディングテーマ」と対になるような内容の楽曲です。この曲はどんな思いから生まれたのでしょうか?

負を正に浄化するっていう感覚は、小さいものから大きいものまであって、日常生活にもあふれています。生きている僕らにとって一番大きいものは生と死で、小さいもので言えば勉強をがんばってテストでいい点数が取れたとか、リハーサルに苦労していいライブができたとか、なかなか伝わりづらいと思うんですが、そういう感覚を歌にしたかったです。「エンディングテーマ」は死の歌なので、その次はこの曲しかないと思いました。

──初回限定盤Aには秋田さんの書き下ろし小説「花は誰かの死体に咲く」が同梱されます。このタイトルで小説をしたためたのはなぜですか?

初めはアルバムタイトルを「花は誰かの死体に咲く」にしようと思ったくらい、このテーマは僕にとって重要で。まだ書ききれないイメージもあったので、また違った角度から小説として書きました。言いたいことは曲も小説も同じなんですが、小説のほうがよりわかりやすく噛み砕いて書けたと思います。

──アルバムのラストを飾るのはポエトリーリーディング曲の「収束」です。アルバムタイトルにもある“収束”という言葉には、どんなイメージを込めましたか?

いくつもの選択肢が1つの結末に向かうイメージで「収束」としました。結局最後はこうなるんだよ、っていう結末は人によっては絶望かもしれないし、救いかもしれない。わからないですけど、僕は人類が滅んだほうがいいと思いました。

──現在開催中の全国ツアー「amazarashi 5th Anniversary Live Tour 2016『世界分岐二〇一六』」で、数公演を終えてみての手応えと、10月に千葉・幕張イベントホールで開催するワンマンライブ「amazarashi LIVE 360°」を含め、これからライブに足を運ぶ人たちに向けたメッセージをお願いします。

とてもいい手応えを感じています。僕らバンドメンバーを含め、成長してる感覚を共有しながら毎公演楽しんでやれてます。ぜひ何も考えずに楽しんでほしいです。

amazarashiのライブの様子。(写真提供:Sony Music Associated Records)
ニューアルバム「世界収束二一一六」/ 2016年2月24日発売 / Sony Music Associated Records
初回限定盤A [CD+DVD+書籍] / 3780円 / AICL-3068~9
初回限定盤B [CD+グッズ] / 3780円 / AICL-3071~2
通常盤 [CD] / 3000円 / AICL-3070
CD収録曲
  1. タクシードライバー
  2. 多数決
  3. 季節は次々死んでいく
  4. 分岐
  5. 百年経ったら
  6. ライフイズビューティフル
  7. 吐きそうだ
  8. しらふ
  9. スピードと摩擦
  10. エンディングテーマ
  11. 花は誰かの死体に咲く
  12. 収束
初回限定盤A DVD収録内容
amazarashi 5th anniversary live 3D edition 2015.08.16
  • 後期衝動
  • 季節は次々死んでいく
  • ヒガシズム
  • 冷凍睡眠
  • スターライト
MV
  • 多数決
amazarashi 5th anniversary Live Tour 2016「世界分岐二〇一六」
2016年1月17日(日)北海道 Zepp Sapporo(※公演終了)
2016年1月24日(日)愛知県 Zepp Nagoya(※公演終了)
2016年1月31日(日)福岡県 Zepp Fukuoka(※公演終了)
2016年2月20日(土)広島県 広島CLUB QUATTRO(※公演終了)
2016年2月21日(日)大阪府 Zepp Namba(※公演終了)
2016年2月27日(土)東京都 Zepp Tokyo
2016年2月28日(日)東京都 Zepp Tokyo
2016年3月6日(日)東京都 中野サンプラザホール
amazarashi LIVE 360°
2016年10月15日(土)千葉県 幕張イベントホール
amazarashi(アマザラシ)

青森県むつ市在住の秋田ひろむを中心としたバンド。2009年12月に青森県内500枚限定の詩集付きミニアルバム「0.」を、翌2010年2月にその全国盤となる「0.6」をリリースした。その後2010年6月に「爆弾の作り方」をSony Music Associated Recordsから発表。アーティスト本人の露出がないまま、口コミを中心に話題を集めていき、2011年11月には初のフルアルバム「千年幸福論」を発表した。2013年8月に「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2013 in EZO」に初出演。2014年9月にインディーズ時代の「あまざらし」名義でライブ「あまざらし プレミアムライブ 千分の一夜物語『スターライト』」を開催し、秋田ひろむの書き下ろし小説の朗読とストリングスを加えた編成でのライブを行った。10月にリリースした約3年ぶりのフルアルバム「夕日信仰ヒガシズム」を携えて、翌11月より全国ツアーを行い各地盛況に収めた。2015年2月に発表した1stシングル「季節は次々死んでいく」の表題曲がアニメ「東京喰種トーキョーグール√A(ルートエー)」の主題歌となり、3月には台湾にて初の海外ライブを実施。8月には東京・豊洲PITにて3D映像を駆使したアニバーサリーライブを行い、12月末にロックフェス「COUNTDOWN JAPAN 15/16」に出演した。2016年1月に全国ツアー「amazarashi 5th anniversary Live Tour 2016『世界分岐二〇一六』」をスタートさせ、2月にニューアルバム「世界収束二一一六」をリリース。10月には千葉・幕張イベントホールにて360°全方位から映像を投影するという自身初の試みとなるワンマンライブ「amazarashi LIVE 360°」を開催する。