ナタリー PowerPush 天月-あまつき-

ニコ動の人気歌い手を支える「コールアンドレスポンス」

ニコニコ動画「歌ってみた」カテゴリで人気の歌い手、天月-あまつき-が2ndアルバム「君ヲ想フ月」をリリースした。

2010年6月、ニコニコ動画に投稿した人気のボーカロイドナンバーカバー動画「え? あぁ、そう。(男性視点ver)」が「歌ってみた」カテゴリで最高7位を記録し、以後投稿する歌ってみた動画は常にランキング上位を占めるなど、シーンの代表的存在として躍り出た天月-あまつき-。昨年6月には1stアルバム「Melodic note.」でデビューを果たし、新たなステージでの活躍を見せている。そんな彼が放つ新作「君ヲ想フ月」は前作同様、人気のボカロナンバー中心の構成ながら、書き下ろし楽曲の作家に修二と彰「青春アミーゴ」のプロデューサー、Shusuiらを起用。さらにMVに自ら出演するなど、オリジナリティをより強く打ち出した内容になっている。

今回のインタビューでは、天月-あまつき-に歌い手としてのキャリアを振り返ってもらうとともに「君ヲ想フ月」で新機軸を打ち出したその理由に迫った。

取材・文 / 成松哲

誘われたからバンドを始め、“歌ってみた”

──ナタリー初登場ということもあるので、まずはプロフィールを追わせてください。初めて買ったCDってなんですか?

天月-あまつき-

ポルノグラフィティさんの「メリッサ」ですね。もともとアニメが好きだったので(「メリッサ」がオープニングテーマに採用されたテレビアニメ)「鋼の錬金術師」きっかけで。で、そのポルノグラフィティさんをきっかけにORANGE RANGEさんや大塚愛さんも聴くようになったって感じですね。

──それっていつ頃ですか?

7~8年くらい前だから、中学1年生とかじゃないかなあ。

──ちょっと遅咲きの音楽リスナーですよね。

ああ、確かに遅いかも。高校卒業までずっと野球をやってたこともあって、その頃は基本的に聴く専門って感じでした。カラオケに初めて行ったのも中学3年生ですし。ただ、高校2年生のときにやっぱり友達とカラオケに行ったら、その中の1人でバンドをやってる子から「文化祭でバンドをやりたいからボーカルをやって」って言われてボーカルをやったりしたことはあって。

──その流れで歌い手さんに?

それはまたちょっと違って。ニコニコ動画は2007年頃から好きで観ていたんですけど、そのうち「自分にも何かできないかな?」「しゃべるくらいならできるかな?」と思うようになって、高校3年生、2009年頃にとりあえず生放送を始めてみたんです。で、その放送の中でときどき歌ったりしてたら「歌ってみた動画を投稿してみたら?」って声をかけてくれる人がいたので、2010年の初めごろ、ちょっとがんばって投稿してみました(笑)。

合唱団には入りたくない!

──バンドのときといい、基本的に受け身。誰かに背中を押してもらって歌い始めてますね(笑)。

はいっ! 完全に受け身です! 好奇心は旺盛でしたので、きっかけをくださるのであればと取り組みました。

──ただ、それって歌い手さんになる以前から天月-あまつき-さんの歌声は評価を集めていたとも言い換えられますよね。

そうなのかなあ……。誰かにホメられた覚えは特にないんですけど(笑)。ただ歌うのは昔から好きでした。両親に聞くと、小さい頃はいつもアニメを観ながらテレビの前で一緒に主題歌を歌っていたみたいですし。で、両親は「そんなに歌が好きなら」ってことで僕を合唱団に入れようとしたんですけど、それがすごくイヤだったのはよく覚えてます。

──歌うことは好きなのになぜ?

子供の頃は今以上に声が高くて、音楽の授業なんかで歌を歌うときは必ず女の子と同じパートに入れられちゃってたんですよ。だから、当時から歌うこと自体は大好きだったんですけど「きっと合唱団でも女の子と一緒に歌わされるに違いない」と思ってたみたいです(笑)。

ボカロカバーだから発揮できるオリジナリティ

──ポルノグラフィティやORANGE RANGEを聴いていた高校球児がボカロにハマるっていうのもちょっと意外な感じがします。

天月-あまつき-

あっ、そうですか? ぜんぜん気にしてなかった(笑)。運動は大好きだし、今もスノボなんかをやってたりするんですけど、さっきも言った通り、もともとアニメやマンガが好きだったので。今でも週刊誌と月刊誌とあわせて15誌くらいマンガ雑誌を読んでるし、自分がアウトドア派なのか、インドア派なのかなんて考えたこともなかったですね。もしかしたら文化祭バンドくらいしかやったことなかったのが逆によかったのかなあ。

──「逆に」って?

DAWとかをバリバリ使っている方の中には、ボーカロイドを初めて聴いたとき機械の声に戸惑う方もいるらしいんですけど、僕は何も気になんなくて。「いろんな曲があるなあ」「いい曲もたくさんあるなあ」「面白いなあ」って、ただスーッと耳に入ってきたんですよ。

──確かに音楽のキャリアがあると、ボカロを否定的にとらえたり、反対にDTMの知識があるがゆえにことさらに驚いちゃったりするのかもしれませんね。でも、天月-あまつき-さんにとってはポルノグラフィティやORANGE RANGEと地続きだった、と。

特に差があるものだとは思っていませんでした。いい曲はいい曲でしたし! で、当時はもう歌い手さんはたくさんいたし、「歌ってみてください」って感じでボカロ曲のオケ(バックトラック)を公開している(ボカロ)Pさんもたくさんいらっしゃったので、僕もそのオケを使わせてもらえば好きな歌を歌えるな、って思ったんです。しかも、J-POPをカラオケで歌うのとは違って、ちょっとオリジナリティも出せるし。

──「オリジナリティ」?

やっぱりボーカロイドが歌うのと人間が歌うのってぜんぜん違うじゃないですか。確かにPさんが書いた曲を、その方の作ったオケを使って歌うんだけど、ボーカロイドバージョンとは絶対に違う自分なりの作品を作れるな、っていうやりがいみたいなものもあって、挑戦してみたって感じなんです。

2ndアルバム「君ヲ想フ月」 / 2013年2月27日発売 / 2000円 / Bellwood Records / BZCS-5027
「君ヲ想フ月」
収録曲
  1. START / レフティーモンスターP feat.天月
  2. 影踏みエトランゼ / Substreet feat.天月
  3. - EARTH DAY - / はりー feat.天月
  4. ハートフルエッジ / TOKOTOKO(西沢さんP) feat.天月
  5. アブラカタブラ! / Shusui feat.らむだーじゃん×天月
  6. 1/6 -out of the gravity- / ぼーかりおどP feat.天月
  7. こちら、幸福安心委員会です。/ うたたP feat.しゃむおん×コニー×天月
  8. 月光戦争 / Last Note. feat.天月
  9. HELLO / GOM feat.天月
  10. ネトゲ廃人シュプレヒコール / さつき が てんこもり feat.melost(はしやん×天月)
  11. え?あぁ、そう。/ 蝶々P feat.甘党加湿器(伊東歌詞太郎×天月)
  12. Calc. / ジミーサムP feat.天月
  13. 恋愛勇者 / Last Note. feat.天月
  14. Voice Letter Vol.2(Bonus Track)
天月-あまつき- 初ワンマンLIVE
「君ヲ想フ唄」
  • 2013年5月31日(金)大阪府 大阪BIG CAT
    OPEN 17:00 / START 18:00
  • 2013年6月8日(土)東京都 Shibuya O-EAST
    OPEN 17:00 / START 18:00

料金:3800円(ドリンク代別)
出演:天月-あまつき-
※ゲストあり

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天月-あまつき-(あまつき)

天月-あまつき-

ネットを中心に活動する男性ボーカリスト。2010年初頭より、ニコニコ動画「歌ってみた」カテゴリーにボーカロイドナンバーをカバーした楽曲の投稿を開始する。力強くもどこか少年らしさを感じさせるハイトーンのボーカルを武器に、ネット上での活動はもちろん、ライブイベントや演劇などでも活躍。2012年6月リリースの1stアルバム「Melodic note.」はオリコン週間インディーズアルバムチャートで1位を獲得し、2013年2月27日には2ndアルバム「君ヲ想フ月」を発表した。