清水エイスケ(Age Factory)×山田将司(THE BACK HORN)|認められない苛立ちを叫ぶ孤独と、認められても叫び続ける孤独

2人が歌う“孤独”とは

山田 ミニアルバム「RIVER」聴いたよ。すごいカッコよかった。

清水 ありがとうございます。

山田 俺らは7月5日に「孤独を繋いで」っていうシングルを出したんだけど、Age Factoryの新作の表題曲「RIVER」の最後で「孤独であれ 人よ 孤独であれ 街よ」って歌ってるのを聴いて、言ってることが近いなと。

清水 僕も思いました。“孤独”の表現の仕方っていろいろあると思うんですけど、ストレートに「孤独」っていうワードを使うところも共通してますね。

山田 ね。「君は孤独じゃないよ」って歌う人はよくいるけどさ、なんで「孤独であれ」って言葉が出てきたの?

清水 東京って、自分の住んでる奈良に比べてごちゃごちゃしてて、1人じゃない感覚にさせられるんですよね。ごまかされていると言うか。ほとんどの人間としゃべってても思うことなんですけど。そのごまかされる感じがすごく嫌で。「ごまかすのやめて、どっしり構えて立ち向かえや」っていう意味を込めて「孤独であれ」って歌ってます。鼓舞する感じ。文字だけ見たらマイナスなんですけど、発言してる自分としてはプラスな意味で使ってます。

山田将司(THE BACK HORN)

山田 なるほどね。「孤独であれ」という言葉が、すごい優しいなあと思ったんだよね。俺も「孤独を繋いで」っていう言葉は、孤独でよくて、孤独同士でつながりあっていくっていうイメージで使ってる。俺が本当に孤独を感じてた若い頃って、「孤独じゃないんだ、みんなつながっているんだ」みたいなことを言われるよりも、「お前は孤独だ」って言われるほうが優しく感じたから。

清水 うんうん、わかります。

山田 「孤独じゃないんだ」って言われても「お前、俺の何を知ってんだ?」って思っちゃう。実際、孤独の中にも自由がいっぱいあるわけじゃん? 「孤独であれ」って言葉には、孤独の中にある世界の広さを感じたんだよね。

清水 最近すげえ思うのが、簡単に他人のことを肯定したり……僕で言ったらほかのバンドのことを褒めたりとか、そういうことが、さっき言った“ごまかす”っていう部分につながってる気がしていて。そんなふうにごまかされずに、自分が思ってることとか、自分にとって正しいと思うことを貫き通すことが孤独につながるんですよね。そういう意味での「孤独であれ」なんですけど、「孤独を繋いで」っていう言葉も自分たちの中で確固たる、曲げれんもんをつないでいくみたいなことかなって思って。だから「孤独を繋いで」と「孤独であれ」には共通した部分があるなっていうのをめっちゃ思いました。

山田 そうそう。だから「RIVER」を聴いてて、「おお! 言ってくれた!」って思ってうれしかった。

山田が歌う孤独は優しい

清水 昔は孤独を感じることが多かったんですか?

山田 そうだね。人のことをすぐ信用したくないって思ってた。自分で心を閉ざしてるところもあったんだろうけど、それだけ本物の関係が欲しかったんだと思う。でも相手を信じることとか、誰かとつながっていくこととかを覚えて、自分の中の孤独っていう感覚から解放されていったようなところはあるかな。

清水 それって年齢を重ねてるうちにそう思えるようになったんですか? それとも当時から「いつか孤独から解放されたらいいな」と思いながら過ごしてきたんですか?

山田 昔は「誰かとつながっていけたらいい」なんて、一切思ってなかったんだよ。本当、全部に唾吐いてたし、人と話さないで、水槽の中の金魚と話しながら酒飲んでるみたいな感じだったから。

清水エイスケ(Age Factory)

清水 それはヤバい。孤独の果てですね。

山田 完全に、意識は水の中だったからね。

清水 僕は全部を肯定したくないって言うか……すべてに反抗しないと自分の進むべき場所がわからなくなるって思ってるんで、「孤独を繋いで」っていう言葉の「繋いで」っていう部分が大人っぽいなと思ったんです。優しいと言うか。

山田 うんうん。確かにちょっとクールかもしれないね。理性がそこにちゃんと働いてる感じ。

清水 そう、でも世間に寄せてるわけでもない。それって山田さんが、僕がまだ歩んだことがない時間を歩んだ人だから出る言葉のような気がして。自分も今のTHE BACK HORNと同じくらいバンドを続けたら考え方が変わってるのかなと思いました。

「認められない」という苛立ちがなくなるのが怖い

清水 僕らって知名度が全然ないから、僕らを観に来てくれる人が少ないのはわかってるんですけど、それでもライブで「俺らはいいライブをしてるのに、なんで観に来た人たちは動じてないような顔してんの?」って、怒りに近いような感情を抱えるんですよ。俺らのよさをわかってもらえないことに対しての苛立ちというか。

山田 ああ。

清水 ただ、自分でも恐れているのは、この苛立ちがなくなったらよくなくなるんじゃないかということで。みんなに認められたいんだけど、認められたら面白くなくなりそうなのが怖いんですよね。自分が聴いてても、葛藤とか、何かに対して戦う姿勢が感じられない音楽って鼓舞されないから。だから「葛藤がなくなったらどうなるんだろう?」っていうのがすげえ気になるんです。

山田 俺も昔はエイスケと同じ気持ちで、フロアに5人しかいないライブの、その空っぽの部分めがけて絶叫してたの。だけど、お客さんが増えて、自分でもちょっとずつ「俺はこれで大丈夫だったんだ」って思えるようになってくるわけじゃん? それでも「埋めることができない」みたいな気持ちはさ、ずっと俺の中にあるの。満足しきれねえ気持ちがずっと。ちょっとは埋まってきたかもしんないけど、埋まった分、空白がどんどん広がっていく。「もっともっと」という気持ちがずっとあるから、そこに行けないもどかしさを感じるようになるんだよ。ものすごくクオリティ高いライブが1回できると、その1回を目指してライブをするようになったりさ。届かねえところに手を伸ばすように叫び続けるもんなんだろうって思うんだよね。

清水 なるほど。

左から山田将司(THE BACK HORN)、清水エイスケ(Age Factory)。

山田 あと、環境が変わると作る曲も変わるから。THE BACK HORNも最初は「俺」っていう一人称の曲が多かったけど、「俺達」っていう言葉が出てきて、横にいる“君”のことを歌うようになってきて。そうやって自分がリアルタイムで抱く感情を自然に曲に込められるようになって、ライブ中に優しい曲を歌いながら泣きそうになったりする。例えば「コバルトブルー」は特攻隊の人を思い浮かべて書いた曲なんだけど、今、このとんでもない時代に生き抜いてる若者たちを前にしながら俺たち4人が「コバルトブルー」を演奏してるっていうことだけで胸が熱くなったりするんだよ。

清水 そうなんですね。今の僕にはまだ全然わかんないです、その感覚。なってみないとわかんないんだろうな。でも、それがゆえに同じ“孤独”を歌ってても冷たさが違うのかもしれないですね。

山田 「孤独を繋いで」の歌詞にもあるけど、都会にいていろんなことに揉まれて鈍くなっていく中で、自分の鼓動が動いてることさえも忘れてしまう瞬間っていうのが常にあって。その中で“叫ぶ”っていうことは、生きているっていうことを実感できる瞬間だなと思うんだよね。俺にとっての叫びは、ストレス発散な行為だけじゃなくて、苦しみでもあるから。生きている実感につながるからまた叫んじゃうんだろうな。

清水 歌うこととか、THE BACK HORNのボーカルであることが、昔よりも自分の存在理由に近くなってきているっていうことですか?

山田 そうだね。

清水 そうか、すごいなあ。

Age Factory「RIVER」
2017年7月26日発売 / SPACE SHOWER MUSIC
Age Factory「RIVER」

[CD]
1620円 / PECF-3180

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収録曲
  1. OVERDRIVE
  2. RIVER
  3. siren
  4. CLEAN UP
  5. left in march
  6. SUNDAY
THE BACK HORN「孤独を繋いで」
2017年7月5日発売 / SPEEDSTAR RECORDS
THE BACK HORN「孤独を繋いで」初回限定盤

初回限定盤 [CD+DVD]
2160円 / VIZL-1165

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THE BACK HORN「孤独を繋いで」通常盤

通常盤 [CD]
1296円 / VICL-37285

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CD収録曲
  1. 孤独を繋いで
  2. 導火線
  3. 夏の残像
初回限定盤DVD収録内容

「KYO-MEIホールツアー」~月影のシンフォニー~ Live at 中野サンプラザ

  1. オープニング -夜明けの息吹-(Live SE「KYO-MEIホールツアー」~月影のシンフォニー~)
  2. トロイメライ
  3. 閉ざされた世界
  4. カラス
  5. 悪人
  6. シンフォニア
  7. With You
  8. コバルトブルー
Age Factory「RIVER」RELEACE GIG 東京編

2017年8月3日(木)東京都 WWW X
<出演者>Age Factory / LOSTAGE / My Hair is Bad

Age Factory「RIVER」RELEACE GIG 大阪編

2017年8月19日(土)大阪府 Shangri-La
<出演者>Age Factory / ciname staff / NOT WONK

THE BACK HORN「日比谷野外大音楽堂ワンマンライブ」

2017年10月21日(土)東京都 日比谷野外大音楽堂

THE BACK HORN「マニアックヘブンツアーVol.11」
  • [名古屋公演] 2017年11月3日(金・祝)
  • [仙台公演] 2017年11月5日(日)
  • [福岡公演] 2017年11月10日(金)
  • [札幌公演] 2017年11月15日(水)
  • [大阪公演] 2017年11月26日(日)
  • [高松公演] 2017年12月1日(金)
  • [広島公演] 2017年12月2日(土)
  • [金沢公演] 2017年12月22日(金)
  • [東京公演] 2017年12月24日(日)

詳細後日発表

Age Factory(エイジファクトリー)
Age Factory
清水エイスケ(Vo, G)、西口直人(B)、増子央人(Dr, Cho)からなるスリーピースバンド。2010年4月の結成以来、地元の奈良を中心に全国で年間100本近くのライブを重ねてきた。2014年12月にデビューミニアルバム「手を振る」、2015年9月に「NOHARA」を発売。2016年10月に、LOSTAGEの五味岳久をプロデューサーに迎え1stフルアルバム「LOVE」を発表した。2017年1月には初のワンマンツアー「MY WAR」、4月には自主企画ライブ「EGUMI」を開催。7月に新作ミニアルバム「RIVER」をリリースする。
THE BACK HORN(バックホーン)
THE BACK HORN
1998年に結成された4人組バンド。2001年にメジャー1stシングル「サニー」をリリース。国内外でライブを精力的に行い、日本以外でも10数カ国で作品を発表している。またオリジナリティあふれる楽曲の世界観が評価され、映画「アカルイミライ」の主題歌「未来」をはじめ、映画「CASSHERN」の挿入歌「レクイエム」、MBS・TBS 系「機動戦士ガンダム 00」の主題歌「罠」、映画「劇場版 機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-」の主題歌「閉ざされた世界」を手がけるなど映像作品とのコラボレーションも多数展開している。そして2017年、第1弾シングルとして宇多田ヒカルとの共同プロデュース楽曲「あなたが待ってる」、第2弾シングルとして「孤独を繋いで」をリリース。秋には6年ぶり3度目となる東京・日比谷野外大音楽堂でのワンマンライブと、恒例のスぺシャルイベント「マニアックヘブンツアー Vol.11」の開催が決定し、2018年のバンド結成20周年へ向けて活動を加速させている。