音楽ナタリー PowerPush - Acid Black Cherry

「L-エル-」を巡る12人の証言

千聖(G / PENICILLIN)

千聖(G / PENICILLIN)

僕はまず純粋に音を聴いてみたかったので、ストーリーブックを読む前にアルバムから聴かせてもらったんですが、お話がなくても1枚のアルバムとして成立している、実にyasuくんらしいアルバムだと感じました。でも、お話を読んでから聴き返したら、今度は映画のサウンドトラックを聴いているような印象になり、「なるほど、この曲はこのシーンとつながっていたんだ!」って思いながら聴く楽しみが加わったんです。それに読む前とあとでは、1曲1曲の雰囲気が違って聞こえてきたのも印象的でした。

特にそれを感じたのは1曲目の「Round & Round」。ストーリーブックを読む前にこの曲を聴いたときは、すごくラウドだと思っていたんですけど、読んでから聴いたら映画の序章みたいで、ラウドというより壮大に響いてきたんです。バンド編成じゃない「Loves」にもアレンジ力と音楽性の高さを感じましたし、楽曲ごとにレコーディングメンバーを変えて適材適所にピッタリなミュージシャンを置いているところにも、yasuのプロデューサー的感覚を強く感じました。だってサウンドの重い曲はとことん重いですからね。「Greed Greed Greed」とか「INCUBUS」とか「liar or LIAR ?」とか「エストエム」なんて、かなり中低音域が厚い。「versus G」もヘヴィですが、このあたりの曲からは新しいAcid Black Cherryのギターを感じましたね。ラストの「& you」のROLLYさんのギターもいいですよね。

あと、彼の描く愛についての歌詞は、哲学を感じますね。女性目線で描かれた歌詞が多いですけど、ちゃんと物事を俯瞰して書いているというか。戯曲ですね。yasuは新世代のモーツァルトなんじゃないかなって思いますもん。女性でもあんなに女性の気持ちを赤裸々には書けないんじゃないかなと思います。ただエロいだけではなく、そこにちゃんと意味も情景もあるっていう。素晴らしい表現力だと思いますし、声の質感や曲の進め方も、すべてがyasu独特のものなんですよね。Acid Black Cherryの楽曲って、すごく普遍的で温かみがあって多くの人の心になじむんじゃないかなと思うので、ぜひたくさんの方に手に取って聴いてもらいたいですね。

HIRO(G / Libraian、La'cryma Christi)

HIRO(G / Libraian、La'cryma Christi)

“yasu節”を強く感じさせるヘヴィな楽曲と、ライブでみんなが楽しく踊れるようなキャッチーでポップな楽曲との振り幅の広さを、今回もとても色濃く感じましたね。よくも1人でここまでの振り幅を作れるなって、いつも感心するんです。その上、毎回アルバムはコンセプチュアルなもので。今回、前のアルバム以降のバラエティ豊かなシングル4枚がアルバムでどうつながっていくんだろう?って思っていたんですが、物語を通して素晴らしくキレイにつながっていたことに驚きましたね。

「L-エル-」には、ここ最近のyasuの傾向が出てると思います。今回のアルバムの特徴として言えることは、yasuのサウンド面に対するこだわりが今まで以上に強くなったことかなと。yasuの出したい音っていうのが、今回は特に強くあったと思います。yasuはいつも完璧なデモを作ってくるんで、そこまでの段階の中で、頭の中に鳴ってる音を具体的な形にする苦労があると思うんですけど、その能力も本当に素晴らしいと思うんですよ。頭の中で鳴ってる音を形にするって容易ではないですからね。

そこからyasuはさらにこだわって完成形にしていくわけですけど、その段階で初めて関わる僕らには、完璧な再現を強要するわけではなく投げてくれるんです。「この曲にはこのプレイヤー」っていう人選もyasuが決めてるから、そこに応えるように色を加えていくのが僕らの役目というかね。僕は今回、「Round & Round」と「L-エル-」でギターを弾かせてもらっているんですけど、僕の考えたソロのフレーズをすごく喜んでもらえてうれしかったです。でも、そこもyasuが導いてくれたっていう感覚ですけどね。「Round & Round」は個人的にドストライクな曲でもあったので、存分にyasuのイメージに応えることができたんじゃないかなと思います(笑)。

MAKOTO(Dr)

MAKOTO(Dr)

「L-エル-」を聴いて思ったのは、「早くライブを観てみたい!」ってことでしたね。それくらいライブの絵が頭の中に浮かんできたアルバムだったんです。Acid Black Cherryのライブってすごくアクティブだと思うんですけど、よりアクティブなライブが想像できたというか。ワクワクしましたね。

ドラマー目線での発言になってしまうんですが、今回、すごく音がクリアになったなと感じました。今まで以上にそれを感じたので、レコーディングや音作りの面ではすごくこだわりを持って制作されたんじゃないかなと思います。yasuさんはすごくドラムの好きな方だと思うんですけど、最近の音になればなるほど展開も複雑ですし、面白いリズムを組み合わせて平たくない感じに仕上げているなと思います。今回のアルバムの中では、「黒猫 ~Adult Black Cat~」や「エストエム」「versus G」っていう激しい曲調のものにそれを強く感じました。

それに、「この曲は誰が演奏してるんだろ?」って、プレイヤーを想像しながら聴くのもすごく楽しかったです。「versus G」のギターに今までにないAcid Black Cherryらしさを感じたんですが、あとからLedaが弾いたと聴いて納得しました! yasuさんが、この曲でLedaに求めたモノをすごく感じましたね。Acid Black Cherryにはそうやってプレイヤーを想像しながら聴く面白さもあるので、楽器をやっている人たちにもぜひ聴いてもらいたいです。

あと驚いたのは、「L-エル-」というミドルナンバーが、アルバムのタイトル曲になっていたことですね。こういうミドルナンバーをタイトル曲にするってすごく面白いなと思いました。ここを中心に激しいモノからスローでメロディアスなモノまで、幅広い楽曲で構成されている印象を受けたので、すごくいいバランスだなって思いました。いろんなところに進化を感じつつも、ずっと変わらないyasuさんらしさがいっぱい詰め込まれているアルバムだと思います。

室姫深(G)

室姫深(G)

yasuは、パーフェクトなアーティスト。なかなかいないタイプだと思います。自分にすごく厳しい人で、いろんなことを緻密に構築している人だと思うんですけど、パーフェクトであることを周りに感じさせないというか、みんなと楽しくラフに接しながら、一緒に音楽を作っていく人で、素晴らしくエンタテイナーであると思いますね。今回のアルバムも音へのこだわりをすごく強く感じました。本当にストイックな人ですよね。

「L-エル-」は、100ページにわたるストーリーブックがあって物語も含めて魅せるアルバムということで、僕も読ませてもらったんですけど、本当にすごいなって思いました。お話だけでもすごく完成度が高いのに、それとアルバムがリンクしているという素晴らしさ! 僕はまず歌詞をじっくり読みながら音源を聴いて、そのあとでストーリーブックを読んだので、そこで「なるほど! だからあの歌詞だったんだ!」「なるほどね! それであの曲だったんだ!」ってつながっていってすごく面白かったです。映画を観てから原作の小説を読み返すみたいな感覚といいますか。

それでストーリーブックを読み終わってから、もう一度アルバムを聴き返してみたんですけど、最初とはまた違った聞こえ方になったのもすごく不思議でしたね。お話を読んでからアルバムを聴くのと、アルバムを聴いてからお話を読むのとでは、ずいぶん違った捉え方になるんじゃないかな?と思います。どっちが正解とかはないと思うんですけど、どちらにせよ、yasuというアーティストの個性をそこに深く感じることになると思いますね。これからアルバムを手にしてお話を読む人もいると思うので内容は控えさせてもらいますが、ライブでの下ネタ全開のyasuくんのハチャメチャなMCと、このお話の世界をどう同じステージで見せていくんだろ?と思うとライブも相当楽しみですね(笑)。

ニューアルバム「L-エル-」2015年2月25日発売 / motorod
CD+DVD Project「Shangri-la」LIVE盤 / 5184円 / AVCD-32241/B / Amazon.co.jp
CD+DVD Project「Shangri-la」ドキュメント盤 / 4860円 / AVCD-32242/B / Amazon.co.jp
CD / 3240円 / AVCD-32243 / Amazon.co.jp
CD収録曲
  1. Round & Round
  2. liar or LIAR ?
  3. エストエム
  4. 君がいない、あの日から…
  5. L-エル-
  6. Greed Greed Greed
  7. 7 colors
  8. ~Le Chat Noir~
  9. 黒猫 ~Adult Black Cat~
  10. versus G
  11. 眠れぬ夜
  12. INCUBUS
  13. Loves
  14. & you
Project「Shangri-la」LIVE盤DVD収録内容

Project「Shangri-la」Encore Season~Arena tour~日本武道館公演(2014年5月29日)

  1. Greed Greed Greed
  2. Murder Licence
  3. 楽園
  4. 1954 LOVE/HATE
  5. 黒猫~Adult Black Cat~
  6. 君がいない、あの日から…
  7. Maria
  8. so…Good night.
  9. ピストル
  10. 罪と罰 ~神様のアリバイ~
  11. Black Cherry
  12. シャングリラ

<アンコール>

  1. doomsday clock
  2. scar
  3. SPELL MAGIC
  4. 20+∞Century Boys
Project「Shangri-la」ドキュメント盤DVD収録内容
  • Project「Shangri-la」完全密着ドキュメントムービー
  • Project「Shangri-la」MCベストセレクション
  • Greed Greed Greed(MUSIC CLIP)
  • 黒猫~Adult Black Cat~(MUSIC CLIP)
  • 君がいない、あの日から…(MUSIC CLIP)
  • INCUBUS(MUSIC CLIP)
Acid Black Cherry(アシッドブラックチェリー)

Janne Da Arcのボーカルyasuによるソロプロジェクト。2007年7月にシングル「SPELL MAGIC」でメジャーデビュー。2011年にはデビュー4周年を記念し、「ABC Dream Cup」と題して着うた無料配信、4万人フリーライブなど4つのプレゼントを実施。さらに9月から5カ月連続シングルリリースを行い、話題を振りまく。2012年3月、前作から約2年半ぶりとなる3rdアルバム「『2012』」を発売し、自身初のオリコン週間チャート1位を記録。20万枚を超えるヒット作となる。2013年から2014年にかけて新作リリース、全都道府県ツアー、ファンと触れ合うイベントを並行して行う「Project『Shangri-la』」を実施。2015年2月に約3年ぶりのアルバム「L-エル-」をリリースした。