年に一度のバースデーライブは全力で“なっち”でいたい

──安倍さんの場合は一方で、いわゆるポップスを歌うソロアーティストとしての活動も並行していて。今年の6月にはアルバム「Dreams」のリリース、そして8月には恒例のバースデーライブもありました。バースデーライブはなんというか、ひたすらハッピーな空間でしたよね。

楽しかったですねー。やっぱり年に1回のバースデーライブですし、ファンの皆さんには楽しんでもらうのが一番だと思って、頭に花を乗せてみたり（笑）、自分でいろいろ考えて作りました。

──ミュージカルでの経験を経てボーカリストとして確実に成長していると思うんですけど、ライブでは成長した姿だけじゃなく、全然変わらない“なっち”の表情もあって。「トウモロコシと空と風」の「ホイ！」みたいな合いの手は「ミュージカル女優・安倍なつみ」ではなく完全に“なっち”ですよね。

あははははは（笑）。そうですね。

──生まれ変わったのではなく、新しく身に付けたものがあるからこそ、さらに幅広い表現ができるようになったんだなと。

完全にシフトチェンジすることもできると思うんですけど、やっぱり年に一度のバースデーライブは全力で“なっち”でいたい、いてあげたいなって。ライブは非現実な夢の空間でもあるわけで、そこは一緒に夢を見ようよ、という思いでステージを作っていますね。

──自分の中のモードよりも、ハッピーな空間になることを最優先して。

もちろんそこも大事にします。例えばライブの近辺でミュージカルの予定があれば、ミュージカルの中からも曲を選んだりしますし。今年はちょうど映画の撮影のド真ん中で、超忙しかったんですよ！ バタバタな中で衣装合わせをし、セットリストを考え、バンドとあわせて……けっこうあっぷあっぷで、ライブが終わって気付いたら映画のセットの中にいた、みたいな（笑）。すごい夏だったんですよ。

──MCでも映画撮影の話をされてましたよね。バンドと息をあわせて楽しみながら歌っている姿を見ていると「立派になったなあ」と思うんですけど、MCのユルさは「なっちだなあ」っていう。元キマグレンのISEKIさんがサプライズでケーキを持って登場したときも、ロウソク消すのを忘れて話し込んでファンに注意されたり（笑）。

そうそうそう（笑）。ずっと燃え続けて「あーあーあー」って言われちゃって。どうしても抜けてんですよねー。よし、ちゃんとカッコよくやろう！と思ってもできないタイプ。でもそれを喜ぶんですよね、みんな（笑）。

裕ちゃんが大きな指針

──そのMCで、34歳になったとお話されているときに「普段はあまり自分の年齢を意識しない」とおっしゃってましたよね。

してないですねえ。しなきゃいけないとも思うんですけど。普段遊ぶ人たちも年齢はバラバラで、舞台で共演した子役ちゃんとしょっちゅう遊びに行くし、かと思うとグンと大人な女優さんとか歌唱指導の先生と一緒にいたり、まちまちなんですよね。

──子供の頃、30代半ばの自分って、昔はどんなふうに想像してました？ 僕は「30歳、40歳にもなれば自然と貫禄も身に付くんだろう」と思っていたんですけど、全然そんなことなくて。

いや、ホントにそうですね。普通のおばちゃんになると思ってましたよ（笑）。20代後半ぐらいまでの自分はなんとなく想像してたけど、この歳になった自分は全然。なんとなく落ち着いてるだろうなあってざっくり考えてました。でも、私にとって一番身近にいた大人が中澤裕子で。裕ちゃんが歳を重ねていく姿を間近で見ているので、裕ちゃんが1つ自分の中で大きな指針になっていますね。裕ちゃんは今42歳ですけど、バリバリなんですよ。すごく元気で輝いていて。

──たまにテレビでモーニング娘。OGが集まって、大人同士の会話を交わしている姿を観るとグッと来ます。今はいつも一緒にいるわけじゃないけど、だからこそ深い絆でつながっているような。

不思議なんですけど、集まるとなぜかそのキャラと立ち位置になるんですよ。普段の生活ではそんなことないと思うんですけど。今は母親としての顔があったり、妻の顔があったり、それぞれ別の生活を送ってるんですけどね。あのメンバーで集まると当時のキャラクターと立ち位置になっちゃう。のの……辻（希美）ちゃんとか、普段の母親としての顔も知ってるから「みんなやっぱりプロなんだなあ」って、中にいながら感心しますね。「矢口（真里）はやっぱトークの天才だ！」とか（笑）。

初めての教会ライブとにぎやかX'masパーティ

──年末にはバースデーライブとはまた違う2つのライブが控えています。12月15日の「安倍なつみ Gloria Chapel Concert～Shiny Night!～」は初のチャペルでのコンサートとなりますが。

どうなることか、私にもわかりません。未知の世界ですね。

──会場となるキリスト品川教会 グローリア・チャペルでのコンサートは一度観たことがあるのですが、会場のムードも音の響きも本当に独特で……。

うわー。本当ですか。……大丈夫かな（笑）。

──この日はストリングスをバックに歌うんですよね。

はい。環境も編成もすべて、自分にとって挑戦なんですよ。どうなるかはやってみなくちゃわからない、1回きりのコンサートなので……まあドッキドキですよね。

──去年の「クラシカル・クロスオーバー SPECIAL LIVE」（参照：安倍なつみ、クラシカルライブでモー娘。曲も）ともまた違ったステージになるでしょうね。

そうですね。今回は会場に合わせた選曲と音作りになると思うので、不安はありつつもすごく楽しみです。あまり気負わずに、そのとき感じたままを表現できれば。12月25日のライブ（「安倍なつみ☃X'mas Special Time～Love Christmas Night～」）は今年最後のライブだし、クリスマスということもあるし、リズム隊も入れてにぎやかに盛り上がる感じになると思います。クリスマスパーティとして楽しんでもらえるように。

──25日の会場となるアクト＊スクエアも少し変わったライブ空間ですよね。

360°見渡せる丸い会場で、映像を映すスクリーンも会場を囲むように設置してあるんですよ。去年もその前も立たせてもらったんですけど、すごく面白い会場で。客席とステージも近くて、こーんな目の前で歌うんですよ。

──このステージならではの演出も考えている？

いやいや、今はグローリア・チャペルのことで頭がいっぱいで（笑）。チャペルが終わったらすぐに気持ちを切り替えなきゃいけないから大変ですね。