菊地成孔企画の六本木ヒルズフリーライブは2日間とも快晴

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5月3日と4日の2日間にわたって、六本木ヒルズアリーナを会場にフリーライブイベント「J-WAVE & Roppongi Hills present TOKYO M.A.P.S NARUYOSHI KIKUCHI EDITION」が開催された。

今年のオーガナイザーを務めた菊地成孔。

今年のオーガナイザーを務めた菊地成孔。

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「TOKYO M.A.P.S」はJ-WAVEと六本木ヒルズが共同で主催する、今年で3回目のゴールデンウイーク恒例イベント。毎回異なるオーガナイザーを立て、そのオーガナイザーの世界観を表現したライブが繰り広げられる。2008年の宮沢和史、昨年の大貫妙子に続いて今年オーガナイザーに就任したのは菊地成孔。彼の呼びかけで多彩なアーティストが集い、東京のジャズの今、そして東京の音楽の多様性を表現したライブで会場は連日大盛況となった。

初夏を思わせる気持ちのいい天気となった初日はジャズがテーマ。トップバッターの若手ジャズサックスプレーヤー矢野沙織は、モノクロのミニドレスにハイヒール姿で登場し、5月のさわやかな風の中で夜の雰囲気をただよわせながらしっとりとしたジャズを披露した。ピアノの山本剛が歌う「Dinah」でスタートし、曲中で矢野さおりをステージに迎え入れたこのライブ。アップテンポからスローナンバーまで自在にサックスを操る美しい矢野の姿に、アリーナを埋め尽くしたオーディエンスからは感嘆の声が漏れた。

続くJ.A.Mのライブは、開始時間前から少しずつ人が集まりはじめ、直前には何重にも人垣ができるほどの人気ぶり。演奏が始まると丈青、秋田ゴールドマン、みどりんの作り出す独特のグルーヴが会場を包み込んだ。「昨日は下関でライブやってて徹夜なんで」と語った丈青だが、それでも疲れを感じさせないエネルギッシュで息の合ったパフォーマンスを披露。3人の笑顔から本当に音楽を楽しんでいる様子が会場にも伝わり、最後は大きな拍手の中で彼らはステージを後にした。

3組目のquasimodeは全員が黒のスーツ姿で颯爽と現れ、パーカッションの松岡“matzz”高廣が「今日はホットな1日になりそうです。自然体で楽しんでください」と挨拶。サポートにテナーサックスとトランペットを加えた編成で、華やかな音が会場に響き渡った。「quasimodeは踊れるジャズです。踊っていってください」という呼び掛けにオーディエンスも思い思いに体を動かし、次々に繰り出される艶やかな演奏で会場を盛り上げた。

そしていよいよ夕暮れの六本木ヒルズに、今年のオーガナイザー・菊地成孔率いる菊地成孔クインテット・ライブ・ダブが登場。菊地成孔、坪口昌恭、菊地雅晃、藤井信雄、パードン木村というメンバー構成での活動は最近珍しく、今回のライブは貴重なステージとなった。菊地成孔クインテット・ライブ・ダブはサックス、ドラム、ベースの生音に同時にダブ処理がされていくという挑戦的な試みのユニット。菊地の妖しいサックスが響き、次第に情熱的になっていくサウンドと、夕暮れから夜に変化していく時の流れがマッチして、屋外ライブならではの高揚感が会場を包んだ。最後はドラマーだけを残して他のメンバーは退場。ドラムにダブ処理されるという見事なセッションで会場は大いに沸いた。

1日目の最後にライブを行ったのはnaomi&goro。すっかり日が暮れた六本木アリーナにnaomiの温かなボーカルが響き渡る。「Non-Stop to Brazil」「Olha Pro Ceu」など5曲を終えると、そこに菊地成孔が再び登場。菊地成孔クインテット・ライブ・ダブと打って変わって、ボサノバ風のやわらかな雰囲気のサックスが2人のギターに優しく絡まり、聴いている人をほんわかさせるセッションとなった。

前日に引き続き快晴に恵まれた会場で、2日目は□□□のライブからスタート。電車の車内アナウンスや電話の時報の音をサンプリングして独自のサウンドを作り出し、会場に訪れた人々を楽しませた。ライブの後はJ-WAVEの番組「J-WAVE GOLDEN WEEK SPECIAL TOKYO DIVERSITY」の公開トークセッションを実施。ナビゲーターのSaschaとオーガナイザーの菊地成孔も加わり、終わったばかりのライブや東京の魅力についてのトークが繰り広げられた。

続いて行われたのは坪口昌恭のシンセサイザーパフォーマンス。この日はモジュラーパッチシンセがステージの坪口を囲むように配置され、彼は次々にケーブルをつないでサイレンのような音や電子音を作り出した。パフォーマンス中にもときどき配線を前に腕組みしながら考える坪口。普段あまり観ることのないパフォーマンスを観客は固唾を飲んで見守った。

間髪を入れずにステージに登場したBEATSICK.JPは、坪口のライブから一転して、人の声だけでサウンドを作り出すビートボックスのパフォーマンスを披露。同じくビートボックスユニットの人ISMからTATSUYAとTRIPも参加し、後半は4人の声で幾重にも重なり合うサウンドを作り上げていた。

ジャズ界の巨匠・山下洋輔は今回のステージで、まだ高校生の寺久保エレナと共演。小学生でチャーリー・パーカーをマスターしたという天才少女・寺久保の、高校生とは思えないほどの超絶テクニックに会場も度肝を抜かれていた。「日本のジャズの将来は大丈夫という証拠を見せますよ」と客席に向かって楽しげに語る山下洋輔。他のメンバーも若いミュージシャンで揃えてエネルギッシュな演奏を繰り広げ、終了後も会場のあちこちで感嘆の声が上がっていた。

2010年の「TOKYO M.A.P.S」のラストを飾ったのはカヒミ・カリィ。1曲目から夫でもあるタップダンサーの熊谷和徳がゲスト出演し、カヒミのウィスパーボイスによる朗読、ジム・オルーク&大友良英が紡ぎだす穏やかな調べ、そして熊谷のタップダンスが生み出すリズムが、すっかり日の落ちた六本木ヒルズアリーナに幻想的な雰囲気を作り出した。カヒミのソロパフォーマンスが終わると菊地成孔が演奏に加わり、さらに最後には再び熊谷も参加。カヒミのボーカル、菊地のサックス、熊谷のタップダンスという、まさにイベント名の「M.A.P.S(MUSIC、ART、PERFORMANCE、SPECIAL)」を体現するような豪華なセッションで2日間のイベントは幕を閉じた。

5月3日(月・祝)出演者及びセットリスト

・矢野沙織

01. Dinah
02. Move
03. Boplicity
04. Left Alone
05. Open Mind
06. Cofirmation
07. ウィスキーが、お好きでしょ

・J.A.M

01. Roy's Scat
02. Quiet Fire
03. CHILE
04. LOST
05. 産業革命
06. MINT

・quashimode

・菊地成孔クインテット・ライブ・ダブ

01. Dub Liz
02. Susan Sontag
03. You Don't Know What Love Is
04. Elizabeth Taylor

・naomi & goro

01. Non Stop To Brasil
02. Olha Pro Ceu
03. Pica-Pau
04. Rosinha
05. Into The Sun
06. Days Of May(+菊地成孔)
07. Southern cross 7(+菊地成孔)
08. Desafinado (+菊地成孔)

5月4日(火・祝)出演者及びセットリスト

・□□□

01. Tokyo
02. Twilight Race
03. Love me
04. ヒップホップの初期衝動
05. GOLDEN KING
06. AM2:08
07. 00:00:00

・坪口昌恭

・BEATSICK.JP

・山下洋輔イントロデューシング寺久保エレナ

01. North Bird
02. It's You or No One
03. Tim Tam Time
04. Like the Sunlight
05. Kurdish Dance

・カヒミ・カリィ+菊地成孔 ゲスト:熊谷和徳

01. 呼読
02. Divers
03. He shoots the sun
04. The Look of love
05. This guy's in love with you
06. KISKI
07. You are here for a light

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