矢野顕子＋TIN PAN「さとがえるコンサート」テレビ放送決定、来年CD化も

アメリカ・ニューヨークに拠点を置く矢野顕子が日本に里帰りして開催している年末恒例のライブ、「さとがえるコンサート」の最終公演が12月13日に東京・NHKホールで行われた。

1996年の初開催から20回目となった今回は愛知、大阪、東京の3都市で4公演を実施。昨年に引き続き細野晴臣（B）、林立夫（Dr）、鈴木茂（G）の3人からなるTIN PANをバンドメンバーに迎えてライブが行われた。矢野はTIN PANとはデビュー前からの付き合いがあり、昨年のツアーだけでは足りないほど一緒に演奏したい曲がたくさんあるということで、今年も再びコラボが実現することになった。

この日のライブは、TIN PANがレコーディングに参加した矢野の1stアルバム「JAPANESE GIRL」の1曲目「気球にのって」でスタート。旧知のメンバーならではの盤石のアンサンブルに、観客は耳と目を奪われる。「氷雨月のスケッチ」「抱きしめたい」といったはっぴいえんどのカバーでは、鈴木がブルージーなギターを奏でつつリードボーカルとして矢野とデュエット。このツアーで初披露された英語詞の新曲「Piece of Change」や、最終日のNHKホールでのみ演奏された細野の楽曲のカバー「香港ブルース」でも、4人は観客から喝采を浴びていた。

また彼女たちは「某ベーシストが演奏しながらイヤホンで野球中継を聞いていた」というエピソードなど、矢野や周辺の人々が読売ジャイアンツに夢中になっていた1970年代のことを回想。「今日ななんと柳田選手が来てくださっています」と矢野が告げると、客席の中央でライブを観ていた元プロ野球選手の柳田真宏が立ち上がって一礼した。そして矢野は当時制作した柳田選手の応援歌「行け柳田」を本人の前で歌唱。リリース時の打順が歌詞に組み込まれたこの曲を、現在の選手の名前に置き換えて披露した。

休憩タイムを経て第2部が始まると、矢野、細野、鈴木がスツールに座ってアコースティックライブを実施。スタンダードナンバー「Dream a Little Dream of Me」をリラックスした雰囲気で演奏し、はっぴいえんどのカバー「相合傘」では矢野がウクレレを弾きながら歌った。その後TIN PANが退場し、矢野がピアノの弾き語りで西岡恭蔵のカバー「春一番」と、自身の最新アルバムの表題曲「Welcome to Jupiter」を披露。自由で伸び伸びした演奏による、バンドでの演奏とはひと味違うアプローチで曲の世界観を表現していく。

再びTIN PANがステージに現れると、彼らのリクエストでセットリストに組み込まれた「Queer Notions」をセッション。TIN PANのタイトな演奏に乗せて、矢野はシンセサイザーを弾きながらスキャットを繰り出す。はっぴいえんどのカバー「颱風」では荒々しい風を表現するように矢野の歌声も力強さを増す。鈴木メインボーカルによるはっぴいえんどのカバー「花いちもんめ」などを経て、矢野の代表曲「ひとつだけ」でライブ本編は終了となった。

アンコールでは矢野と細野が2人だけで手をつないでステージに登場。細野がアコースティックギターを構え、細野の「恋は桃色」をしっとりとデュエットした。その後鈴木と林もステージに戻り、最後に矢野が「皆さんも一緒に歌ってくれるとうれしいな」と言って、はっぴいえんど「風をあつめて」を披露。矢野は途中でピアノから離れ、ステージ中央で踊りながらフェイクを入れ始める。矢野に煽られて曲の終盤には会場中で大合唱に。ライブが終わり4人が手をつないで一礼すると、観客は次々に席を立ってスタンディングオベーションを始めた。

このNHKホール公演の模様は1月16日（土）23:40よりBSスカパー！にてオンエアされることが決定。スカパー！のチャンネル、またはパックセットなどの契約者はこの番組を無料で視聴することができる。さらに同公演の音源は2016年にライブアルバムとして発売されることもアナウンスされている。ライブアルバムの詳細は後日発表。