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店長たちに聞くライブハウスの魅力 番外編 [バックナンバー]

ウイルス感染拡大で苦境に立つライブハウスの現状を、全国15店舗の店長に聞いた

政府に求めること、ライブハウスを愛する人々に伝えたいこと

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新型コロナウイルスの収束の気配が見えず、ほかの業種と同じように全国のライブハウスも存続の危機に瀕している。感染リスクが高い“3密”(密閉、密集、密接)が重なりやすい場所として、政府により早い段階から営業自粛を求められ、緊急事態宣言の発令に伴う休業要請の対象となったライブハウスは、予定されていたイベントが軒並み中止や延期となり、先の見通しが立たない困難な状況に。政府からの補償が提示されていないこともあり、閉店の道を選ぶ店も現れ始めた。

ライブハウスの店長たちは、無観客ライブを有料配信できるシステムを導入したり、オリジナルグッズや後日使用できるドリンクチケットを販売したり、クラウドファンディングで支援を求めたりと、運営資金を集めるための術を模索。どの店も必死で苦境に耐えながら、平穏な日常を1日でも早く取り戻せることを待っている状況だ。

これまで、連載「店長たちに聞くライブハウスの魅力」を通して全国のライブハウスの店長の話を伝えてきた音楽ナタリーは、このたび過去に連載に登場してもらった店の中から、15店舗にアンケートを実施。現在の店の状況や、生き残りをかけた施策などについて聞いた。

目次

大阪・LIVE HOUSE Pangea 吉條壽記氏

(参照:連載第2回 大阪・LIVE HOUSE Pangea)

LIVE HOUSE Pangea初代店長の吉條壽記氏。(撮影:秋和杏佳)

LIVE HOUSE Pangea初代店長の吉條壽記氏。(撮影:秋和杏佳)

現在の状況

2月から徐々に開催キャンセルのイベントが出だし、結果3月は半分以上のキャンセルおよび延期、4月から5月6日まではPangeaもANIMAも営業自粛しています。
5、6月の公演も順調(?)に延期、中止となってきているのでこのままだと5、6月も同じような状況になる可能性があります。

他店との情報交換や協力

定期的にというわけではないですが行っています。

新型コロナウイルス感染拡大および緊急事態宣言を受けて

1. YouTubeチャンネルの開設
状況が落ち着いてきたら配信ライブなどを行っていきたいと思っています。
2. WEB SHOPの開設
PangeaやANIMAのグッズを販売しています。Tシャツだけじゃなく栓抜きやぬいぐるみなどもラインナップにあるので一度覗いてみてください。
3.助成金や融資の申請

政府や行政に求めること

この状況を落ち着かせたい気持ちは一緒なので要請には出来るだけ応えていきたいと思っています。
ただ現状の制度では長期間の場所の維持、雇用の維持は不可能です。
ライブハウスだけでなく皆を救える政策をお願いします。

ライブハウスを愛する人へ

有難いことにライブハウスを守ろうとする周りからの支援や声が想像以上に多く寄せられ日々励まされています。
声を上げる皆さまのおかげで国の対応も日々アップデートされていっているように感じます。
いつからどのような形でライブが再開できるかはまだまだ見えてきませんが、心が折れなければ場所を維持できる実感があります。
またライブハウスで乾杯しましょう!!

北海道・札幌PENNY LANE24 菅原織氏

(参照:連載第3回 北海道・札幌PENNY LANE24)

札幌PENNY LANE24の6代目店長の菅原織氏。(撮影:上野公人)

札幌PENNY LANE24の6代目店長の菅原織氏。(撮影:上野公人)

現在の状況

2月28日以降、本日(※アンケートに回答していただいたのは4月27日)に至るまで、催事は一切開催しておりません。3、4月は前年比9割以上の下降になるため、経営状況としてはかなり厳しい状態を強いられております。
ただ北海道は独自の支援策が発表されて、当店だけでなく他のライブハウスも援助を受けられそうな風潮になっております(もちろん100%に足りるものではございませんが…)。
他のエリアも同様な支援があるように、心より祈るばかりです。

他店との情報交換や協力

この状況なので電話でのやり取りが主になりますが、情報交換は行っております。

新型コロナウイルス感染拡大および緊急事態宣言を受けて

いろいろと思索しておりますが、日々変化していく状況の中で実施できているものはまだありません。今現在としては機材売却などをし、わずかな収入を得ております。

政府や行政に求めること

感染拡大を防止するために経営難になることを承知して営業自粛を実施した店舗が多いと思います。どのような形でも良いので補償していただけることを望みます。

ライブハウスを愛する人へ

皆様に楽しんでいただける場所を残せるように頑張ります。いつかまた来ていただいた際には、精一杯大きな声で一緒に音楽を楽しみましょう!

京都・磔磔 水島浩司氏

(参照:連載第4回 京都・磔磔|築101年目、元酒蔵ライブハウスのこれまでとこれから)

磔磔現店長の水島浩司氏。(撮影:秋和杏佳)

磔磔現店長の水島浩司氏。(撮影:秋和杏佳)

現在の状況

磔磔では3月は大半のイベントが中止、4月2日から5月8日まで営業を自粛しております。その後は今後の様子を見ながらの判断となりますが、5月いっぱいもほぼ自粛予定、夏以降もイベントの中止が相次いでますので、当分は厳しい状況が続くと思われます。

他店との情報交換や協力

どれくらいのライブがキャンセルになったのか、キャンセル料はどうしているか(磔磔はキャンセル料は頂いておりません)、どう対応していくのか、お互いに情報を交換しあって参考にしていければと考えています。

新型コロナウイルス感染拡大および緊急事態宣言を受けて

現在オリジナルグッズを作成中です。買ってくださった方が未来への希望を持って楽しめるような、ちょっと面白いものが色々できそうです。
店頭販売や通販という形にするのか、またはクラウドファンディングという形にするのか、これからの状況を見て判断したいと思いますので、磔磔のサイトやTwitter等をチェックしていただけたらと思います。

また現在、梅田ムジカジャポニカさんにお誘いいただき、複数のライブハウスが参加しているプロジェクト「God save us ライブハウス」(タイトル&各デザイン:安齋肇さん)にも参加させていただいております(参照:「God save us ライブハウス」発足、ソラミミスト安齋肇デザイングッズ販売 )

磔磔のショップはこちらになります。
Tシャツ・トートバッグは5月1日までの限定受注生産です。

配信は準備中ですが、今後やっていこうと思います。

政府や行政に求めること

ライブハウスに限らないのですが、収入が減った人や仕事を失った人、そして医療関係者等この状況でも働いている人へ、早急で手厚い補償をお願いしたいです。

特にお店や会社の事業者は、休業により収入を失うだけでなく、休業中も賃料や休業補償を含む人件費などの支出が毎月数十万~数百万単位で必要になります。
早急な補償がないと日本中のお店や会社が潰れてしまい、そこで働いている人も職を失ってしまいます。

ライブハウスを愛する人へ

自粛期間中も、お客様の励ましの声は色々届いております。
乗り越えられるようにがんばりますので、落ち着いたらまたライブハウスでお会いしましょう!

千葉・千葉LOOK サイトウヒロシ氏

(参照:連載第5回 千葉・千葉LOOK|勤続30年目の店長が語る“愛で成り立つ”ライブハウス)

千葉LOOK3代目店長のサイトウヒロシ氏。(Photo by Shin Ishihara)

千葉LOOK3代目店長のサイトウヒロシ氏。(Photo by Shin Ishihara)

現在の状況

2月は通常営業。
3月は主催者判断での公演延期に始まり3月4日から12日まで店判断での営業見合わせ、その後もほぼほぼ見合わせでライブ営業は3日のみ。
3月31日段階で4月12日まで店判断で営業見合わせ、その後4月7日の緊急事態宣言により5月6日まで営業見合わせを延長。
その間の主な仕事は、、、、
「公演実施判断」「振替日程調整」「払戻し業務」「(行えると信じて)ブッキング」「(ここぞとばかりの)機材メンテナンス」など。
現在は「やせ我慢大会」実施中!

他店との情報交換や協力

有るような無いような、、、当方バカチンチンなので井戸端会議程度な感じ。

新型コロナウイルス感染拡大および緊急事態宣言を受けて

公演見送りに伴い主催者発信で無観客配信はありましたが
現状、店発信での配信の類の予定は有りません。
ってか言われて今気付きましたが「無策」です(汗)!
当方リアルバカチンチンでしたっ(滝汗)!!
配信やり始めたらルック黄色信号と思ってください(笑)。

政府や行政に求めること

まずはこれを機に「ライブハウス」という業種(日本標準産業分類)を認めましょ(笑)。

ライブハウスを愛する人へ

ライブハウスを大切に思ってくださる皆様へ。
気に掛けて下さる方がとても多く有り難く思っていますが辛いのはみんな一緒。
なのでお気遣いなく!

#staystrong!

押忍!!

兵庫・MUSIC ZOO KOBE 太陽と虎 風次氏

(参照:連載第6回 兵庫・MUSIC ZOO KOBE 太陽と虎|真面目にふざける“音楽動物園の園長”)

MUSIC ZOO KOBE 太陽と虎現店長の風次氏。(撮影:秋和杏佳)

MUSIC ZOO KOBE 太陽と虎現店長の風次氏。(撮影:秋和杏佳)

現在の状況

タイトラはじまって今年で10周年だった。
音楽が止まると死んでしまうかの如く、年間400本昼夜問わずライブイベントをやり続け、日々の打ち上げで20~30代は酩酊したままでほぼ記憶もなく、躁鬱を繰り返し精神的にも崩壊しそうになっていた2020年。

「休ませろ! いつでも辞めたんぞ!」「えっ! マジか!? 松原が死ぬまでは働くわ!」
「休ませろ! いつでも辞めたんぞ!」「アイツがいなくなって初のCOMING KOBEはやり切るわ!」
「休ませろ! いつでも辞めたんぞ!」「そうか! 未成年アホ社長が成人するまでは繋ぐわ!」
「休ませろ! いつでも辞めたんぞ!」「しゃーないタイトラ10周年まではやるわ!」
「休ませろ!いつでも辞めたんぞー!!!」

などと、
声を荒げていた自分の思いが通じたように、全部が何もかもなくなりました。

学生の時、「連休明け学校行きたくない」と強く念じたら震災が起こり「学校が燃えてなくなりました」
同い年の上司に怒られて「松原死ね」とか強く念じたら「上司が癌で死んでしまいました」

自分には「強く念じるとその未来になる不思議な力」があって原因が自分にあるんじゃないか? と責めた時もありました。なくなってからしか気づくことが出来ない。本当に大切なもの。

イベントもなくライブがなくなって、バンドも客も誰も近寄らない。
存在意義を失った音の鳴らないライブハウス。

私は今、頭を丸め、両眉を剃り落とし、独り太陽と虎のステージの上で暮らしています。

2020.04.20(ライブ営業完全停止中 / イベント再開未定)

現在の風次氏。(提供:風次氏)

現在の風次氏。(提供:風次氏)

MUSIC ZOO KOBE 太陽と虎のステージの様子。(提供:風次氏)

MUSIC ZOO KOBE 太陽と虎のステージの様子。(提供:風次氏)

他店との情報交換や協力

キャンセルでライブ営業がなくなった頃、「暇だねー」って事で神戸のライバル店の諸先輩方にお呼び出しをくらい酒を強要されました。
「なんやねん! 早潰れろや! アート! ヴァリット! チキン!」と先輩全員どついて帰ろうとした時、
「今だけは手を取り合ってライブハウスを守らなあかんやん」という事に気がつき、神戸の4ライブハウスで「ライブハウスのイメージを取り戻そう!」と無観客配信サーキットイベント「4/14ライブハウスジャッジメントin KOBE」を立ち上げ、少年漫画の様にライバルから仲間になったライブハウス。
めまぐるしく状況が変わる日々を受け、呑ミーティングを繰り返し、時間のない中アーティストの協力もあり開催にこぎつけた。その前日、政府からの非常事態宣言、休業要請を受け無観客生配信サーキットイベントは延期中止と言うジャッジを下す事となりました。
(※再構築し、事前収録のみの配信イベントとして無料解放)

新型コロナウイルス感染拡大および緊急事態宣言を受けて


だいたいやりましたが、、
営業を維持するためにも、その場しのぎな営業はしない。
この先の世界を考えて今はイベントを出来るだけ止めて、出来るだけ営業しない。
ただし、ただ待つだけではなく実験を繰り返し反撃の時を虎視眈々と狙う。

今は己の魂と存在の自粛をしない様に、園長のみステージの上で無観客無配信無感動生活LIVEを続けてます。

政府や行政に求めること

落ち着いたら、いっぺんライブハウスに遊びに来てくれ。
その時もし仮に例えば、まぁないと思うけど、まだ太陽と虎があったら一杯奢るわ~。

ライブハウスを愛する人へ


今はライブハウスに近づかないで下さい。

何度キャンセルや振替公演になっても
未来のイベントの準備はし続けてます。

音楽はウィルスの前では無力だけど、生きる力になります。
生きてさえさえすればまたやれる。また会える。また笑いあえるから。
GOOD BYE!! LIVEHOUSE 

太陽はまた昇り、虎はまた吠えるだろう。

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ダイノジ・大谷 @dnjbig

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