ファンの店第11回［バックナンバー］

hide（X JAPAN）と娘の“約束”と思い出を形にした和歌山のカフェ

和歌山・レモネードカフェ

2019年11月1日 18:00 2915 52

2915

この記事に関するナタリー公式アカウントの投稿が、SNS上でシェア / いいねされた数の合計です。

656 1715
544 シェア

記事へのコメント（52件）

特定のアーティストの大ファンのお店を紹介するこの連載。今回はhide（X JAPAN、hide with Spread Beaver、zilch）と交流のあった家族が営む、和歌山県にあるカフェを訪ねた。

取材・文・撮影 / 田中和宏（音楽ナタリー編集部）

X JAPAN、hideのポスターで埋め尽くされた店内

貴志政人さん、和子さんが夫婦で2005年より営んでいるレモネードカフェは、和歌山市内のぶらくり丁商店街の中にある。店内にはhideをはじめ、X JAPANメンバーらのサイン入りポスターが大量に飾られているが、これらのほとんどは、貴志夫婦の次女・真由子さんの私物。hideの大ファンだった真由子さんは、2009年に永眠した。真由子さんは幼少期に難病を患い、闘病生活を続けていたが、X JAPANやhideの音楽に出会い、「X JAPANのコンサートに行きたい、hideに会いたい」という夢を抱く。そんな中で公益財団法人「メイク・ア・ウィッシュオブジャパン」協力のもと、1995年末に東京・東京ドーム公演でその夢を叶えた。終演後にはhideと対面し、それから友人として親交を深めていった。

1階のカフェスペース。主に真由子さんが集めたポスターがずらりと並ぶ。

hideが真由子さんと初めて対面した際にプレゼントしたギター。

「ここには真由子がお小遣いをかけて集めたものや、関係者やファンの方からご厚意でいただいたものを大事な宝物として飾っています。店がオープンしたのは2005年4月で、今年で15年目。主人は会社勤めをしていたんですけど、カフェをやれば真由子と一緒に過ごせる時間も増やせるし、真由子も好きな音楽に触れられるからいいんじゃないかなと思って」と話すのは和子さん。店内は1階がバリアフリーのカフェ、2階がミニライブのできるスペースとなっており、hideと親交のあったアーティストも訪れるという。

2階のイベントスペース。

「SEXX GEORGE（LADIESROOM、我孫子神音会）さんにはよくしていただいていて、毎年10回くらいは来てくれています。hide with Spread Beaverの皆さんに来ていただいたこともあるんですが、スプレビで足を踏み入れていないのはhideさんだけです。これまでに真由子と関わりのあったTAKAさん（defspiral）、CUTTさん（SPEED OF LIGHTS、ex. SHAME）、木村世治さん（ZEPPET STORE）、元ZI:KILLのTUSKさん（板谷祐 / 新宿心音会、THE SLUT BANKS）、東海林のり子さんなど、hideさんとゆかりのあるたくさんの方々が足を運んでくださいました」

また和子さんは、「hideさんが亡くなったあと、真由子を心配したYOSHIKI（X JAPAN）さんが実家まで来てくれたことがあるんです。そのときのサインは、hideさんに初めて会ったときにもらったサインと並べて飾っています」とサイン色紙を指差しながら語った。

YOSHIKIとhideのサインは並べて飾られている。

看板メニューは秘伝レシピのドライカレー＆約束のチーズケーキ

人気メニューの1つであるドライカレーは、2005年まで神奈川・横須賀にあったhide MUSEUM内のカフェ・Cafe Le PSYENCEでhideファンに愛されてきたレシピを受け継いでいる。

「hide MUSEUMで出されていたドライカレーはhideさんが好きな味を再現したものだったそうです。レモネードカフェをオープンする前、Cafe Le PSYENCEのシェフの方に2日間来ていただいて、レシピをみっちり教えていただきました。昔と変わらぬ味を楽しんでもらえるように守っています。今はもうここでしか食べられないですから」

特製ドライカレー

もう1つの人気メニューが“約束のチーズケーキ”。名前の由来は1996年当時、hideが危篤状態に陥った真由子さんのお見舞いのため病院まで駆けつけた際、hideが「チーズになるくらいすごいチーズケーキを食べようね」というメッセージを真由子さんに残したことだという。

約束のチーズケーキ

「でもhideさんが亡くなったとき、真由子はまだなんでも食べられる状態じゃなくて、チーズケーキを2人で食べていないんです。だから天国で一緒にチーズケーキを食べていたらいいなと思って、真由子が亡くなってから『約束のチーズケーキ』という名前にしたんです」と話してくれた。その味については、「チーズケーキ自体はレモン味。レモンは和歌山県印南町産だけを使って、下地のクッキー生地からすべて手作りしています」

思い出の指輪。義眼リング（右）は危篤状態の真由子さんを励ますためにhideがプレゼントしたもの。

hideファンや地元の人にとって憩いの場に

「私、おしゃべりが大好きなんです」と言う和子さんは、hideファンのみならず幅広い年代の客とのコミュニケーションを楽しんでいる。「最近の喫茶店だと店員さんとお話する機会って減っていると思うんです。もちろん自分の時間を過ごしたいという方に話しかけることはないですけど、おしゃべりしたい方とは盛り上がることが多いんです」