映画ナタリー Power Push - メイズ・ランナー

藤岡弘、インタビュー メイズ攻略!“藤岡、流”サバイバルの極意

本当に武士道魂を持ったキャラクターは2人いる

僕がこの映画を面白いと思ったのは、この女の子(テレサ)が出てきたとき!

強気な女性、テレサ。

──ああ! トーマスの夢に出てきた謎の少女がグレードに送り込まれてくるシーンですね。

彼女が出てきたときっていうのはね、野獣の中に美女が放り投げられたようなもんだよ。わかります?

──そ、そうですね。

男たちは虎視眈々と「あの美女を食べてやるからな」って狙ってるようなもの。でもテレサは、「女性はこういう生き方をしなければ駄目だ」っていう個性・主張を最初に打ち出した。女だからと、なめるなよと。武士道の中に、女性武士道っていうのがあるんだ。それがテレサ(資料を力強く叩きながら)。この女性は最初に威嚇したでしょ。

──近付く男性に向かって石を投げるシーンがありましたね。

だから女性はこうあるべきだっていう、女性に対する警告なんです。自分を守るため、女性は1本芯を持っていないと駄目ですよっていうメッセージをこの子に託してる。これは武士道精神なんだよ。この中にもっとも武士道が嫌う人間と、もっとも武士道として共感する人間がいるんだよ。本当に武士道魂をもった人間はこの2人(トーマスとテレサ)。男武士道と女武士道。「矢が飛ぶのは弓の力」って言うんだけどね、矢は男性を、弓は女性を象徴するんだ。矢を目的に向かって飛ばすのは、弓・女性の力なんだ。現に女が男を支えてたでしょ。

──はい。

でね、僕は笑ったんだ。彼女、「トーマス」って言ったでしょ。

──テレサがグレードに送られてきたときの、最初の言葉ですね。

そう。そういうところで僕は感動したんだ。途中でチームが2つに分かれたよね。それは、生きるか死ぬかなんだよ。誠意を持って戦うか、あきらめて飼われた家畜になって朽ち果てていくか。どっちを選ぶかはそれぞれの責任なんだよ。自分ならどういう生き方を選ぶか、自分はどの人物に共感するか。だからこれ、面白いよ。結婚相手探すときに、「この映画観に行こうよ」っていって、最後に誰がよかったか聞いてごらん(笑)。「僕、ギャリーが好き」って言うような男はやめたほうがいいよ! イケメンでかっこいいからってギャリーがいいなんて言ったら、あなたは「そう、じゃあ、さよならー」って言いなさい(笑)。

──あはははは。

くっくっくっく。

──やっぱりトーマスを選ぶような人がいいですね。

そうだよね。こういう人が求められているんだよね。そういう意識を持っている男性じゃないと。あとそういう責任を背負える人間の子供を産まないと、あなたの遺伝子、先祖が託した命の連鎖はどうなるか。

──はい。

これ、映画を観ながらメモを書き出したんだよ(文字で真っ黒になったA4用紙4枚を取り出す)。

──すごい! こんなにたくさん、ありがとうございます。

ストイックな性格のミンホ。

この、ミンホね! 探究心・研究心が素晴らしい。ミンホがトーマスを見て言った「勇敢なのか、バカなのか分からないが、こんなやつがもっと欲しい」って言葉を聞いて、思わずマネージャーに「これだよ、これがわかんないと!」って話したんだよ。あれはずばり、作者の言いたいことだね。トーマスのような、希望的な人間に対する期待だね。

──ファンの中にも彼の言葉に共感した人が多くて、ミンホはトーマスと同じくらい人気キャラなんですよ。

おお。やっぱりそうでしょう。あれは、俺が言いたかったことだもん。俺がもしあの場にいても、そう言ったからね。

このナイフがあれば“メイズ”の壁も登れる

──では、このあたりで今日お持ちいただいたサバイバルグッズを見せていただいてもいいですか? 「メイズ・ランナー」のような世界に藤岡さんが挑まれるなら、何を持っていくかという。

藤岡弘、(※藤岡が世界中の探検の折、危険な密林の中でサバイバルの道具として使用しているナイフを特別に見せてもらった場面)

ああ、いいですよ。これ全部世界中で実際に使ったものだからね。あくまでこれらは、材料であって、大切なのは、材料を活用できる知識と知恵、経験、応用力、洞察力、危機対処力。そして、平常心を保つ精神力ですよ。パニックになってしまえば、どんなハイテクなサバイバルグッズを持っていようがガラクタです。洞窟でパニックになった人間がいたら、自然に落ち着くか、気絶して落ち着くまで放置するしかないんです。冷たいようですが、極限の危険な状態では、隊全体を危険にさらさないためにパニックを起こした人間を助ける術も道具もない。個人が精神的な自立をする必要がありますね。ゆえに胆力、勇気が重要。そういった経験の上で、材料として備えているモノを今回紹介します。

──はい!

これは皆さんにとってはちょっと怖いかもわからないけど、危険なアマゾンのジャングルで私の命を守ってきたナイフです。

──何年くらい使ってるんですか?

これはね、もう10年くらい使ってますよ。「(藤岡弘、)探検隊」からもう何年経ってる? あれは2002年から2008年? じゃあ、もっとだな。

──これはどういうときに使うんですか?

武器にもなるフラッシュライトを紹介する藤岡弘、。各国の特殊部隊でも使用されており、照度も目がくらむほどの明るさがあるという。

これはね、ジャングルの道なき道を切り開いたり、魚や獲物をさばくのにも使えるし、なんにでも活用できる。ジャングルの中では、猛獣と出くわすこともある。猛獣が急に襲ってきた場合には、これで足を斬るんだ。その次は、鼻と頭、急所。四足の動物は足が弱点なんだ、1本でも負傷すれば、追いかけて来れないからね、逃げる時間が稼げるんだ。で、ナイフは必ず1本じゃないんだよ。だいたいジャングルで私の身体に秘めてるナイフっていうのは……これは言っちゃいかんのかもしれないけど、数本あります(笑)。生きるためには仕方がない。

──ええー!

本物の信用できるナイフだけを選んで使います。もし崖から落ちそうになってもこれを突き刺して掴めば止まる。あと同じように木に突き刺せば、登れる。

──じゃあこれがあれば「メイズ・ランナー」の壁も登れますね。

ああ、登れる! (折りたたみ式のナイフを出しながら)これはね、怪獣の目に投げれば殺すことができる。それからこれはね、私の家系に伝わる手裏剣。銃は音がするけれども手裏剣は音がしないから、暗闇だと相手に場所が気付かれない。こう刺す、突く(手裏剣で敵を突く動作をしながら)。何人かかってきても全部さばける。急所を刺していくんだよ、完璧にこうやって。

──人間以外の生き物でも、ですか?

手裏剣を紹介する藤岡弘、。「SFソードキル」の現場でも技を実演し、サムライに対する理解を深めさせたという。

人間以外にも急所はあるから、これで突くわけ。急所はどんなに体力や筋力をつけても鍛えられない。猛獣相手だと、最初に急所を狙うと負けるから、まずは襲ってきた足を斬れば動けなくなっちゃう。それから急所を突く。実はこの手裏剣もね、音が違うんですよ(手裏剣をカンカンと鳴らす)。

──あっ高いですね。

これ、焼きが違うから折れないんです。「SFソードキル」の現場で監督たちにお見せしたのもこの手裏剣です。そこから、本編の中にもこの手裏剣で戦うシーンを入れられたんです(※藤岡は主演ハリウッド映画「SFソードキル」の撮影前、真剣演武や手裏剣などの古武術をやって見せながら、本来の侍の生き様を説明。それによって、ハリウッドのスタッフに、サムライの精神を正しく認識してもらい、藤岡のために脚本が大幅に変更された)。

──へえー!

一番大切なものは、まずはナイフ、それから火を起こす道具と水。この3つはもう絶対的。この袋はブドウ糖。これは絶えず持ち歩いてます。ブドウ糖と黒糖と梅干し、ですね。黒糖と梅干しは殺菌作用があるんですよ。それが日本人の命を救ってきたんだ。

「メイズ・ランナー」
「メイズ・ランナー」

2009年に発表されたジェームズ・ダシュナーのベストセラーを、ウェス・ボール監督で映画化した3部作の第1弾。テレビシリーズ「ティーン・ウルフ」のディラン・オブライエン、2017年公開の「パイレーツ・オブ・カリビアン」最新作のヒロインに抜擢されたカヤ・スコデラーリオ、「ラブ・アクチュアリー」のトーマス・ブローディ・サングスターら注目の若手俳優が集結し、謎の巨大迷路に放り込まれた少年たちの脱出劇をスリルたっぷりに描き出す。日本では2015年5月より上映され、10月23日には第2弾「メイズ・ランナー2:砂漠の迷宮」の公開を控えている。

  • 監督:ウェス・ボール
  • 脚本:ノア・オッペンハイム、グラント・ピアース・マイヤーズ、T・S・ノーリン
  • 原作:ジェームズ・ダシュナー
  • 出演:ディラン・オブライエン、カヤ・スコデラーリオ、トーマス・ブローディ・サングスター、ウィル・ポールター、アムル・アミーン、キー・ホン・リー、ブレイク・クーパー ほか
Blu-ray / DVD「メイズ・ランナー」好評発売中 / 20世紀フォックスホームエンターテイメント
初回生産限定 / Blu-ray+DVD 4309円 / FXXA-57508
DVD 3590円 / FXBA-57508
初回生産限定特典映像
  • 未公開シーン集(ウェス・ボールによる音声解説付き)
  • 迷路の世界:メイキング映像集
  • チャック・ダイアリー
  • NGシーン集
  • VFXについて
  • ショート・フィルム「Ruin」(ウェス・ボールによる音声解説付き)
  • ウェス・ボール(監督)と T・S・ノーリン(脚本)による音声解説
  • スティル・ギャラリー
  • オリジナル劇場予告編
藤岡弘、(フジオカヒロシ)

俳優、武道家。1965年、松竹映画にてデビュー。青春映画シリーズで主演後、1971年には初代「仮面ライダー」として一躍名を馳せ、当初はスーツアクターも兼任していた。映画「日本沈没」「野獣死すべし」「大空のサムライ」やテレビドラマ「勝海舟」「特捜最前線」など多くの作品に主演し、アクション俳優として映画界を牽引してきた。1984年にはハリウッド映画「SFソードキル」の主役に抜擢され、日本人で初めて全米映画俳優組合のメンバーとなる。2002年より水曜スぺシャル「藤岡弘、探検隊」の隊長として、アマゾン奥地やラオスの密林などでのサバイバルに果敢に挑む。著書は「あきらめない」「藤岡弘、の人生はサバイバルだ。」など多数。武道家としても知られ、世界各国で真剣による演武を行なっている。また、国内はもとより、世界数十ヶ国の紛争地域、難民キャンプへ救援物資を直接届ける支援活動も精力的に行ってきた。2015年、芸能生活50周年を迎え、2016年のNHK大河ドラマ「真田丸」へ本多忠勝役にて出演する。世界を渡り歩いてプロデュースしたこだわりのコーヒー「藤岡、珈琲」の販売も行っている。

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