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黒沢清、柄本佑が30分で見せた巧みな監督術にうなる「最後まで引っ張られた」

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左から柄本佑、黒沢清。

左から柄本佑、黒沢清。

柄本佑監督作「ムーンライト下落合」のトークイベントが、東京・ユーロスペースで11月13日に行われ、柄本とゲストの黒沢清が登壇した。

本作は、劇団東京乾電池に所属する作家・加藤一浩による短編戯曲をもとにした30分の短編作品。東京・下落合にあるアパートの一室で、深夜の数時間を過ごす男2人の会話劇が描かれる。柄本と親交のある加瀬亮と宇野祥平が主演を務め、助監督として俳優の森岡龍と「Playback」などの監督・三宅唱が参加した。

黒沢は「男2人が六畳一間で寝転んでるさまが牢獄というか、独居房に監禁されているようで。自主映画によく出てくるアパートの一室(というシチュエーション)をよくここまで使いこなしましたね」と感想を述べる。

撮影中の話を振り返っていく中、柄本は「現場では気付かなかったんですけど、僕、人が振り返る姿や首を下げる後ろ姿のシルエットが好きみたいです。フェチじゃないですけど……寝ているときに声をかけられて振り返るとか、そういう動きが好きなんだなって」と言及。それを受け、黒沢は「それって意外と面白い映画の中に多々あるかもしれない。観客がスクリーンを見る視線の方向が絶対的なものだと安心していても、ふと(登場人物に)振り返られると『え?』って思ったり。だから、なるほどと思いました」と分析する。柄本も「『え?』と思ったりハッとすることに憧れがあるのかもしれないです」と同調した。

この日は黒沢が監督を務め、柄本が出演した短編「ビューティフル・ニュー・ベイエリア・プロジェクト」も併映されたことから、30分の作品を撮る難しさについて語る場面も。黒沢は「何が正解なのかいまだにわからない」としたうえで、「例えば30分の1話完結ドラマにしても、物語のプロットは長編と変わらない起承転結がある。だから本来90分あってもおかしくない展開を30分で見せるのはすごいこと。脚本だけじゃなく、テクニックで見せていかないと収まらないですよね」と語る。

さらに黒沢が「映画って同じシチュエーションばかり映っていると嫌になると思うんです。3分が限度で、それ以上になると『コンビニにでも行ってくれ!』と(笑)。でもこの作品は30分できれいに収めつつ、『次は何を見せるの?』と思わせる巧妙さが本当にすごい」と続けると、柄本は恐縮しながら「(登場人物が)バイト先にいるシーンをインサートしたり、外に出すこともアイデアとしてはあったんですけど」と明かした。黒沢は「しなくて正解」ときっぱり。「演劇と違って映画はいくらでもできてしまうから、一度やり出すと『もっと見せて』と観客に欲が湧き起こっちゃう。ドアを開けるのかな?と思ったら開けない。歯を磨くのかな?と思ったら磨かない。どっちなの!?という、しそうでしないギリギリのところが“サスペンス”で、最後まで引っ張られました」と柄本の巧みな演出に舌を巻いた。

(c)Tasuku EMOTO

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