トラン・アン・ユン&橋口亮輔がトーク「映画は人生よりも真実」

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フランス映画祭2017の関連トークイベント「Perspectives トラン・アン・ユン×橋口亮輔」が、本日6月25日に東京・アップル銀座にて開催された。

左からトラン・アン・ユン、橋口亮輔。

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左からトラン・アン・ユン、橋口亮輔。

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トラン・アン・ユン監督作「シクロ」公開時の雑誌企画で対談し、橋口亮輔監督作「渚のシンドバッド」が受賞した第25回ロッテルダム国際映画祭でも会っている2人。トランは「僕は『渚のシンドバッド』が大好き。結婚式であの作品の音楽をずっと流していたくらいだよ」と笑顔を見せる。

「エタニティ 永遠の花たちへ」 (c) Nord-Ouest

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自身の新作「エタニティ 永遠の花たちへ」の制作プロセスについて、トランは「今日の映画には、シーンで構成されるものと、シーンがないものがある。『エタニティ』はシーンのない映画。普通監督は朝起きたとき『今日はシーン23を撮るぞ』と思うものですが、この映画で僕は『今日は何を撮るんだろう?』と思っていた。決まっているのは大筋だけで、その場で撮っていったんです」と振り返る。その目的は、観客の心にこれまで知らなかった感情を喚起することだったそうで「普通の映像のつなぎ方だと、観客はこの先に起こることを予見してしまう。今回はあえてロジカルでないつなぎ方をしているので、お客さんは注意しながら映像を観てくれるし、驚きを持って映像の美しさを観てくれる」と解説。橋口も「初めて対談したとき『シーンの途中でカットがパッと変わるのが好き』とおっしゃっていて、僕も共感した。基本変わっていないんですね」と納得していた。

橋口亮輔

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橋口は、ある夏に夕日を見ながら公園で1人過ごしたことを「不幸のどん底にいたときなんですが、その瞬間、喜びとも絶望とも言えない感情が自分の中に満たされて『ああ、今終わってもいいな』と思ったんです」と回想。「エタニティ 永遠の花たちへ」劇中で夫を失う女性に関して「海で夫がいなくなってしまうという悲劇なんだけど、おだやかな夏の日の景色で、ピースフルとも言えるような不思議な感覚になった。自分の経験ともリンクしました」と伝える。トランは「映画というものは、鏡のように自分を投影して観るもの。作品に触れることによって自問自答が起こることが“感動”なのだと思う」と考えを述べた。

トラン・アン・ユン

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またトランは、映画を含むあらゆる芸術は「人生について語り、理解しようとするもの」であると定義し「そんな映画は、人生よりも真実だと思う」と持論を展開する。「ノルウェイの森」の撮影後、菊地凛子から「私は、現実で泣くときよりも映画の中で泣くときのほうが本当のように感じてしまいます。私は普通でしょうか? それとも怪物なのでしょうか?」と聞かれたことを明かし「僕は彼女にほほえんで『それは普通のことだよ。君と僕はアーティストなんだ。表現者にとっては、映画の中で生きることが実生活よりも本当なんだよ』と答えました」と語った。

客席の写真を撮るトラン・アン・ユン(左)。

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終盤には橋口が「私と他者の心をつなげていくことが表現だと思う。その距離は途方に暮れるくらい本当に遠いけど、僕の心から出てきた映画と観客の心がつながったときにはカタルシスがある。それは奇跡かもしれないが、僕ら映画作家はその奇跡を待つのではなく、力ずくで作っていくという作業をしている」と語る。それを受けトランは「奇跡を起こすために、僕たちはたくさん仕事しなければならないね」と笑った。

「エタニティ 永遠の花たちへ」は2017年秋に全国公開。

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