コミックナタリー Power Push - 「ライチ☆光クラブ」

“成長を否定した少年たち”の証言

間宮祥太朗(ジャイボ)

溢れかえってしまう愛を胸に秘めて

──ジャイボというキャラクターを演じるにあたって、どのような役作りをしていったのでしょうか。

間宮祥太朗

ビジュアル面では、ヘアメイクさんや衣装さんを信頼しました。あとはもう、自分はジャイボという人間の心の中をちゃんと埋める作業をしなければいけないと思ったので、とにかく古川(雄輝)くん演じるゼラを心の底から愛していると言えるように、気持ちを高めていく。余計なことは一切考えずにそれだけをするっていう作業でしたね。

──気持ちを高めていくというのは、具体的にはどのような作業でしたか?

思い込みかな……恋とかも、思い込みから始まることがけっこうありますよね。だから僕は、「あれ、なんだろう? 古川くんを見ているとドキドキするな」っていう暗示を自分にかけて、思い込みが徐々に恋へ変わっていくようにしました。あとは古川くんとは余計な話をしないように。

──ご自身の中で思いを募らせていくというような感じでしょうか。

そうですね。溢れかえってしまう愛を胸に秘めて、切ないジャイボを演じられたらいいなと思いました。

──ゼラとのラブシーンでは、ジャイボのまっすぐな愛が伝わってきました。観客のほうが照れてしまうような……。

映画「ライチ☆光クラブ」より。

僕も、自分の作品を観て初めて照れました。いやあ恥ずかしいな……(笑)。

──間宮さんは「ジャイボにとっては、自分の世界のすべてがゼラだった」と記者会見でおっしゃっていましたね。そのゼラとのシーンは、古川さんとどのように作っていきましたか?

どういうアングルで、どうやって撮るかというリハーサルは一度やりましたが、それ以外はある意味ノープランというか。古川くんと玉座の前で、「じゃあ、やりますか」「お願いします」ってお見合いみたいな感じで(笑)。そのとき、触れながら溢れる思いに正直に演じれば、それより生っぽいものはないかなと思いましたので、話し合いは一切しませんでしたね。

とにかく生っぽく演じようと思った

──撮影時に特に仲良くしていた方はいらっしゃいますか?

間宮祥太朗

初めましてなのは野村周平と古川くんくらいで、割とみんな知っていたんです。周平とはこの作品を通して仲良くなりました。お互いにいわゆる男の子っぽい性格なのでシンパシーを感じて。ずっとくだらない話をしたり、共演者にドッキリを仕掛けたりしていましたね(笑)。

──先ほども皆さんで集まっていたときに「ウェーイ」という感じになってましたね(笑)。カネダ役の藤原季節さんが、間宮さんと野村さんはいたずらっ子だとおっしゃっていましたが。

季節はもう、本当に愛らしいんですよ! だから困ってる姿が見たくなっちゃって、(いたずらを)してしまう。僕と周平が、「ちょっと季節。古川くんが、怒ってるというほどではないんだけど、なんかお前に思うところがあるみたいで……。心当たりある?」みたいな。

──リアルですね(笑)。

古川くんには話を合わせてくれるよう事前にお願いしてたんです。季節は「えっ、何、なんで俺だけ? うるさいのはみんな一緒でしょ……」って焦っていたんですが、古川くんには「あ、いや別に……大丈夫だよ」とそっけなくしてもらって。そのあと僕と周平はドッキリにかけたことを忘れて、ちゃんとネタばらしをせずに、そのまま4日間ぐらい過ごしてしまうっていう(笑)。それで古川くんに「ねえ、季節がまだちょっと変な感じなんだけど、ちゃんとネタばらししたんだよね?」って言われて、やっと気付きました。

──(笑)。演技面で刺激を受けた共演者の方はいらっしゃいましたか。

役に向き合う姿が刺激的というか印象的だったのは、普段はひょうきんな性格の(岡山)天音が、ひと言のセリフをずっと復唱しながら、身振り手振りをつけて「これじゃない、これじゃない」って1人で試行錯誤していたことですね。季節も自分の山場のシーンの前にはみんなから離れて、ものすごい寒くてストーブもないところでずっと殻に閉じこもって感情を高めていたんですよ。それが印象的でしたね。

──主演の野村さんはいかがでしたか?

後半に周平演じるタミヤが再登場するシーンは、笑ってしまうくらいカッコいいなと思いますね。「その子に指一本触れんじゃねえよ!」みたいな。そこは「おお、やっぱり主役やな!」と(笑)。

──なるほど。ジャイボは成長していくことに戸惑いを感じるキャラクターですが、そういった役を大人になってから演じることについては、どのような思いがありましたか?

間宮祥太朗

僕がというよりは、(映画を観た)皆さんがどのように感じるんだろうっていう思いのほうが大きかったかもしれないですね。でもジャイボという少女のように美しいと言われる役を、キャストの中でも割と背が高くて、骨格もしっかりしている僕にやらせることで、キャラクターの生々しさとかリアリティが出せると監督やプロデューサーに言われて。メイクなどで作り出した美しさと、僕の骨格の男らしさがあいまって最後の「ヒゲが生えてきたし声変わりも始まってきた」っていう、体の成長に心が追いついていない感じがくっきりと出ると。僕が「大丈夫ですか? こんな感じなのに、美少女みたいに見えますか?」と聞いたときにそうやって答えてくださったので、僕はとにかく生っぽく演じようと思っていました。

──ジャイボの痛切さが表れていて、とてもいいシーンでしたね。

あ! うわ、本当に!? その言葉にもう、全俺が泣きます! ありがとうございます。あのシーンにすべてを込めたので、その気持ちを感じてもらえれば。本当にそれだけで、僕はジャイボを演じてよかったと思います。

「ライチ☆光クラブ」2月13日新宿バルト9にてロードショー、2月27日より全国拡大公開

「ライチ☆光クラブ」

工場から黒い煙が立ちのぼり、油にまみれた町、螢光町。この貧しい地の廃墟へ、深夜に集まる9人の中学生がいた。この秘密基地の名は「光クラブ」。光クラブのメンバーは醜い大人を否定し自分たちだけの世界をつくるため、兵器として機械(ロボット)を開発していた。巨大な鉄の塊で作られた機械が動く燃料は、永遠の美を象徴するライチの実。その機械は「ライチ」と名付けられ、悪魔の数列666でいよいよ起動する。ライチに与えられた目的は、光クラブに美しい希望をもたらす「少女の捕獲」。光クラブのリーダーであるタミヤ、実質的支配者のゼラ、ゼラを偏愛するジャイボと絶対的な忠誠を誓うニコ……光クラブ内でそれぞれの愛憎が入り乱れ、裏切り者探しがはじまる中、ライチはとうとう美少女・カノンの捕獲に成功する──。
果たして、少年が願う大人のいない永遠の美の王国は実現するのか……。

スタッフ / キャスト

監督:内藤瑛亮

脚本:冨永圭祐、内藤瑛亮

原作:古屋兎丸「ライチ☆光クラブ」(太田出版)

配給・宣伝:日活

制作:マーブルフィルム

出演:野村周平、古川雄輝、中条あやみ、間宮祥太朗、池田純矢、松田凌、戸塚純貴、柾木玲弥、藤原季節、岡山天音 、杉田智和(声)

間宮祥太朗(マミヤショウタロウ)

1993年6月11日生まれ、神奈川県出身。2008年に俳優デビュー。舞台「銀河英雄伝説」、ドラマ「水球ヤンキース」「学校のカイダン」、miwaや矢沢永吉のMVに出演するなどジャンルを問わず幅広く活動している。現在、初主演ドラマ「ニーチェ先生」が放送中。