コミックナタリー Power Push - 映画「ライフ・イズ・デッド」

今度のゾンビはニートで草食! 古泉智浩×花沢健吾、ゾンビマンガ家対談

兄を支える純朴な妹・消子役 ヒガリノインタビュー

一部ではゾンビ女優って呼ばれてます

──今日はこの取材の前に、原作の古泉先生と対談だったそうですね。

すごい面白かったです。独特な感じで、不思議な……。オーディションでも現場でもお会いしたんですけど、あんまり話せなくて。さっきようやくお話できたんですけど、意外っていうか、予想してた古泉さんとは違いました。

──どう意外でした?

インタビュー風景

マンガ家さんってぼそぼそ喋るようなイメージがあったんですが、古泉さんは違いましたね。不思議で面白くてほんとに独特の世界観というか、空気を持ってて。ゾンビの話題になったとき「僕は今日ここに来るまでゾンビだったんだよねー」っておっしゃってて。

──ちょっと何を言ってるのかわからないですね(笑)。

あとで聞いたらどうやら腰を痛めてらっしゃるようで、歩くと痛いので「ううー」ってゾンビみたいだってことらしいんですけど(笑)。「ヒガリノさんもゾンビだったことありますか」って聞かれたので、やっぱりマンガにするだけあって、そういう独特の視点があるんだなって思いました。

──古泉先生の作品は、どちらかと言えば女の子にとっつきやすい作品ではないと思うんですけど、どうでしたか。

こういうマンガを読んだことがなかったので、衝撃でした。オープンっていうか、すべてをさらけだしてるような、大人な感じがしました。あとただ怖いだけのゾンビじゃなくて、なんか緩くて、ちょっとズレてる。映画も今までのゾンビ作品とは違うものになっていると思います。

──出演オファーを受けた時はどんな印象でしたか。

私、もともとホラーとか苦手なのに、前主演作の「セーラー服黙示録」(年内公開予定、ジョン・ケアンズ監督)もゾンビ映画で(笑)。だから台本を読む前は「ゾンビかー」って思ってたんですけど、いざ台本を読んでみたら、日常生活に当たり前にゾンビがいるっていう、病気のひとつみたいな感じだったので、これはただ怖いだけじゃなくて面白いぞって感じました。だからゾンビとかホラーとかないわーって人でも、面白がってもらえるんじゃないかな。

──2本連続でゾンビ映画というのも珍しいですね。

早くもゾンビ女優って呼ばれてます(笑)。二度あることは三度あるって言うので、もう1本オファーが来るといいな。

──消子を演じてみていかがでしたか。

消子ちゃんは私に近い部分があるなと思ってます。すごいポジティブなんですけど、それは不安だからこそ明るくしてるっていうところ。本当は自分がいちばん不安なんですよ。私も結構ネガティブなほうなので、そういうところは似てるかなって思ったり。

インタビュー風景

──役作りで意識された点は?

監督に最初言われたのは「かわいいんだけど、どっか残念な感じ」って役作りだったんですよ。で、それって正直、私なんですよ。あ、かわいいってことじゃなくて!(笑) 残念なんですよ、あたしって、ほんと。

──どのあたりが、残念なところなんですか。

ガニ股なんです。監督に「ヒガリノは自分で残念なところある?」って言われた時に、「ガニ股なんです」って答えたら、「じゃあ消子ちゃんもガニ股でいこう」って言われて。

──試写を拝見したときは、あんまり気づかなかったですが。

やっぱりカメラの前だと意識しちゃったみたいで、映画ではあんまりガニ股に映ってないんですけど。あと服とかも今どきの感じじゃなくて、お兄ちゃんを支えるために動きやすい服を着てたり、結構ダサかったりするんです。

──兄想いの妹ですよね。

仲良すぎますよね。消子ちゃんの健気さは見習うべきというか。私がいちばん好きな場面は、消子ちゃんがお兄ちゃんにアイスを買ってくるところなんですけど、自分的にも演じていて「こういう兄弟いいなあ」と思いました。

──ちなみに逝雄は「草食系ゾンビ」とでも言うべき存在ですが、草食系ってどう思われます?

あんまり……(苦笑)。男はガツガツしてたほうがいいと思います。たくましくあってほしいですね。

血糊って意外と美味しいんですよ

──現場の雰囲気はいかがでした?

インタビュー風景

毎日朝から晩まですごいハードだったんですけど、ずっとシーンが一緒だった荒井(敦史)くんと川村(亮介)くんとワイワイ楽しんでました。川村君にはいじられっぱなしで。「お粗相マン」って呼ばれてました。

──お粗相マン?

粗相ばっかりするから。初日からカレーをこぼしてしまったり、1日1回は必ず何かをやらかしてたんですよ、うどんの汁をこぼしたりとか、お弁当を開けたらバッとつゆがはねたりとか。

──和気あいあいとした現場だったんですね。血を大量に浴びる場面もありますね。

初日から映画冒頭の血を浴びるシーンの撮影でした。計2回血を浴びるシーンがあるんですけど、もうひとつのシーンは夜中の撮影ですっごい寒くて。血糊も冷たいんですよ。しかも血糊って耳の中まで入ってくるんです。私2回も浴びちゃったんで、なかなか耳の中の血糊が取れなくて、今でも耳掃除してると奥のほうから固まった血糊がたまに出てきます。あと血糊って意外と美味しいんですよ。粘り気を出すためにちょっとオリゴ糖みたいなのが入ってるらしくて、甘みがあるんです。

ゾンビものの入り口としてここから入ってみてください

──原作ファンにはどのように呼びかけたいですか。

インタビュー風景

原作があるってことで、最初はすごい不安もあったんですよ。やっぱり原作ファンの方はそれぞれ映像にした時のイメージとかもあると思うんで。正直、原作のイメージとは違うかも。でも違うけど、原作は原作でいいし、映画は映画でいいねって言ってもらえたら嬉しいですね。

──ヒガリノさんが見どころだと思うシーンを教えてください。

普通のゾンビ映画って非現実的な感じだと思うんですけど、「ライフ・イズ・デッド」は日本の普通の田舎にゾンビが普通に現れてくるのが、ちょっと絵的に新しいと思います。

──なるほど。

あとゾンビに襲われて怖いってだけじゃなくてメッセージ性があって、兄弟愛、家族愛、そしてお兄ちゃんと面井君との友情も見どころです。私は怖がりでホラーも苦手だしグロテスクなのも苦手なんですけど、そういう人でもゾンビものの入り口としてここから入ってみてほしいですね。まあ、首が飛んだり、ちょっとはグロいかもしれないんですけど。それだけじゃないので!

映画「ライフ・イズ・デッド」 / 2012年2月11日(土)よりシネマート六本木ほか順次ロードショー

あらすじ

近未来、世界中に、人間の体液によって感染するアンデッド・ウィルス(UDV)が蔓延していた。それは日本も例外ではなかった。UDV感染は通称ゾンビ病と言われた。その症状は5段階に分けられており、レベル5になると、心臓も思考も停止しているのに動き回る動く死体、すなわち、ゾンビになってし まうからだ。赤星逝雄は、高校卒業まぎわにUDV感染の宣告をされた。そのせいで就職出来ず、ニートになる。UDVの大敵はストレス。だが、社会のUDVへの対応は酷い有様で、まさに混迷しており、その怒りのストレスで、逝雄のゾンビ化はますます進行してゆく。逝雄の父・浩止と母・冥子は、息子を守るべく奮闘する。妹・消子は、兄を思い、献身的に尽くす。恋人の茜、友人の面井や同級生の矢白が関われば関わるほど事態は混乱し、ストレスを増加させていく。けれども、逝雄には希望の光があった。それは担当のナース・桜井の笑顔。世間の風あたりはますます厳しくなっていくが、赤星家は家族一丸、立ち向かう。しかし、ユキオのUDVのレベルはどんどん上がっていくのだった。

古泉智浩(こいずみともひろ)

古泉智浩

1969年生まれ。新潟県出身、新潟市在住。専修大学にて心理学を専攻。剣道二段、空手七級。趣味、映画鑑賞・ラジオ鑑賞。1993年、ちばてつや賞大賞受賞でマンガ家デビュー。2005年「青春☆金属バット」が熊切和嘉監督により映画化。2009年に自伝的作品「ワイルド・ナイツ」が発売。2012年「ライフ・イズ・デッド」が菱沼康介監督により映画化、さらに「渚のマーメイド」が城定秀夫監督により映画化。2月7日に発売される漫画アクション4号(双葉社)には、「ライフ・イズ・デッド」の映画化を記念して、ヒガリノとの対談および同作の外伝「日本一スカートの短いゾンビ」が収録される。

荒井敦史(あらいあつし)

荒井敦史

1993年5月23日生まれ。18歳。埼玉県出身。第21回JUNONスーパーボーイコンテストにて、ビデオジェニック賞を受賞。若手俳優集団・D2に所属し、多方面で活躍する。公開中の映画「仮面ライダー×仮面ライダー フォーゼ&オーズ MOVIE大戦 MEGA MAX」に湊ミハル役で出演。2012年春公開予定の映画「リアル鬼ごっこ4」では主演を務める。

ヒガリノ

プロフィール写真

1992年5月11日生まれ。19歳。沖縄県出身。プチョン国際ファンタスティック映画祭招待作品のゾンビ映画「セーラー服黙示録」にて、初主演を務めた。日本テレビ系にて毎週日曜午前8時から9時55分に放送されている、生放送情報番組「シューイチ」にレギュラー出演中。