第一印象は、「僕が知ってる王様ゲームと違う！」

──まずは原作マンガを読んだときの、率直なご感想からお聞かせいただけますか。

宮野真守　いやあ、衝撃的でした。なんといっても、僕が知っている王様ゲームとは違ったから（笑）。

堀江由衣　それ、私も思いました！ タイトルを聞いたときに、「2番と3番がポッキーを両側から食べる」みたいな展開があるのかなって。

©︎連打一人／双葉社

宮野　やっぱりそうですよね？ だけど、その誰もが知ってる王様ゲームをベースに、命令や罰をショッキングなものに設定することで物語を構成していくって切り口は、すごく斬新だなって思いましたね。

堀江　身近なゲームだけど、王様の命令を絶対に聞かなきゃいけないなんてルール、言われてみたらすごく怖いですよね。鬼ごっこだって、本当に鬼に追いかけられるって思ったら、すごく怖いなって考えてしまいました。

宮野　本当だ、鬼ごっこもそんなふうに考えると怖いですね。

──おふたりとも、まずは“王様ゲーム”というワードに抱いていた楽しげなイメージと、マンガの残酷な描写とのギャップに引き込まれたと。

堀江　そうですね。でもマンガを読み進めるうちに、そもそもどうしてこんなことが起きているんだろうとか、最終的にどうなるんだろうとか、とにかく続きが気になって……。お終いまで、一気に読んでしまいました。

宮野　王様は一体誰なんだろう、どうすればこのゲームを終わらせられるんだろうという部分にもドキドキできますよね。

堀江　うんうん。私、初めて読んだときは、宮野さんが演じる伸明が王様なのかもって思って読んでいました（笑）。

宮野　ははは（笑）。とにかく、どんどん先を読みたくなってしまうような作品だと思います。人の死だったり、壮絶な命令だったり……思わず目を覆いたくなるような、ショッキングなシーンもたくさんあるんですけど、それだけじゃなくて。主人公の伸明が抱えているものや、極限状態で人がどう行動するのか、友達との絆はどうなるのかという人間の「業」のようなものも描かれている。そういう部分も面白いなと感じました。

──ご自身が演じるキャラクターについては、どんな印象を抱かれましたか。

©︎連打一人／双葉社

宮野　伸明は、他人を思うことに長けてる子なんだなって。最初はゲームに巻き込まれてしまって、普通の高校生らしい反応を見せるんですけど、極限状態で混乱しながらも、最後まで彼なりの正義を突き通すんですよね。それが正しいとか間違ってるとかは、一概に言えないんですけど。例えば、罰を受ける人を2択で選ばなくちゃいけないときには、自分が守りたい人を優先してしまうし、そのために悪い手も使ってしまう。判断力という意味では未熟ですよね。それでも高校生なりの判断力の中、彼は彼なりにすべての人が助かる道を模索していくことになる。僕は、自分が伸明を演じるというのもありましたが、そんな彼の人となりを興味深く受け止めました。

堀江　奈津子は、なかなか理解されにくいキャラクターだと思うんですけど、物語を最後まで読むと、まったく突拍子もない行動をしているわけではないですよね。彼女には彼女なりの過去があって、考え方があって、今に至っている。そういう部分をどう演じるか、奈津子という人の考えをどう作っていくかが、すごく難しそうだなって感じました。実は監督からひとつ、すごく大事なことを言われているんですけど……それは内緒です（笑）。

©︎RKK/F・E/OA

宮野　アニメの放送前だと、奈津子に関しては言えないことが多いですよね。1話は「めちゃめちゃヒロインっぽく演じてください」って指示があったんでしたっけ？

堀江　そうそう。だから、すっごくかわいく見えるといいなと思いながら、演じさせていただきました（笑）。

自分が参加者だったら、謎を解き明かしたい

──極限状態のキャラクターを表現する場面が多いと思うのですが、そういった心情を演じるコツなどあるのでしょうか。

宮野　それはもう、集中するだけですね。実際にそういう状態を経験したこともなければ、できるわけでもないので。したいとも思わないんですけど（笑）。

堀江　普通の王様ゲームならともかくねえ。

宮野　ねえ。でも、演者の僕らはそれではいけないので、自分の中でそれをリアルに落とし込むことに集中します。みんなやってることだとは思うんですけど、それぞれが自分の役と向き合うことで、気持ちを高めていってるんじゃないでしょうか。どちらかというと、今回のアニメーションは結構特殊な構成となっているので、その部分に気を遣っていますね。

──特殊な構成ですか。

©︎RKK/F・E/OA

宮野　アニメは、原作マンガの「無印」（「王様ゲーム」）と「終極」を融合させたオリジナルストーリーなんです。時間の流れで言うと「無印」の続きの話が「終極」なんですが、アニメはいきなり「終極」からスタートして、回想シーンとして「無印」が描かれるんです。2つの時間軸が入り乱れるので、そこの事実確認と、伸明の感情の流れみたいなものを間違わないように、音響監督さんとしっかり話し合いながら進めています。

──なるほど。ちなみに、おふたりがもし“王様ゲーム”に挑むことになってしまったら？

堀江　うーん。やっぱり、なんでこれが起きているんだろうというのを考えそうな気がします。誰をどうするかとかではなく、それ自体から抜け出す方法を考えられたらいいですよね。

宮野　そうですよね。知恵を絞りながら、がんばって謎を解き明かしたい。

──作中では、まさに伸明がそんな行動を取りますよね。マンガを読みながら、彼に共感する場面も多かったんでしょうか。

©︎連打一人／双葉社

宮野　どうだろう……。自分がどうなるかは、実際にあの極限状態に置かれてみないとわからないですけど、伸明はすごいなって単純に思います。

堀江　確かに。伸明が、あるかもわからない手がかりを求めて、ある場所を目指すシーンも、自分だったらそんな決断できないかもなって。

宮野　極限まで追い詰められたら、それでも行くのかもしれないし。

堀江　行ったところで本当に手がかりが見つかるのかな？ って不安に思っちゃいますよね。