「時間の支配者」松根マサト監督インタビュー|スタイリッシュさを追求し地に足の着いた表現で描く家族の物語

演者とキャラクターの間に近しいものが現れる現場

──演者へのディレクションのお話も出ましたが、アフレコはどの程度進んでいますか。

アフレコ自体はすべて終了しているんですよ。放送前に終わっているので、かなり早いほうかと思います。

──あっ、そうなんですね。現場の雰囲気はどのような感じでしたか?

アニメ「時間の支配者」第2話より。霧の財布を盗んだ男にもフランクに話しかけるヴィクト。

話数が進むごとに演者の方がブースの中に増えていくんですが、やっぱり初めていらっしゃった方ってそこまで積極的にはしゃべらないことが多いんですよね。ただ座長の福山(潤)さんは、初めていらっしゃった演者の皆さんに気軽に話しかけてくださるんです。

──まさに演じているヴィクトのキャラクターと似ているというか。

ええ。石川さんは石川さんで、すごく真面目に「監督、このシーンはこういう意味だと思ったんですが違いますか?」と常に質問してくるんです。それに対して福山さんは「もっとリラックスしなよ。こういう考え方もあるじゃん」っておっしゃったりして。

──作中さながらのかけ合いが(笑)。

アニメ「時間の支配者」第2話より。ヴィクトは自身の時間を喰らった計と遭遇するも、取り逃がしてしまう。

今回の現場はアフレコの最中、まさにキャラクターを彷彿とさせるようなやりとりがたくさんあったんですよ。赤羽根(健治)さんが演じているブレイズは熱血キャラなんですが、テストの段階から全力で叫んで演技してくださったり。キャスティングをして一番うまくいったなって思う瞬間って、演者とキャラクターの間に近しいものが出てきたときなんです。それがかなり見受けられたのはうれしかったですね。

第2話で舞台のセッティングが終わり核心へ

──ちなみに福山さんには何か演技指導をなさったんですか?

アニメ「時間の支配者」第2話より。ヴィクトは計討伐のための秘密組織・クロノス本部へと向かうことになる。

実はこれといったディレクションはなかったんですよ。逆に石川さんに対しては最初にお会いしたとき「この作品で1番難しいのは霧だよ」とお伝えしたんですけれど。

──霧が難しいというのはどういった理由で?

霧は主人公ではあるんですが、物語を読者に伝えるというカメラに近い役割も果たしているんですね。フラットに情報を伝えるカメラの役割を担うならキャラクターとして疑問を抱いたらいけないし、常に周囲についてわかったつもりでしゃべらないといけない。石川さんも最初は「何言ってるんですか、1番難しいのは福山さんですよ」とおっしゃっていましたが、2話目を撮り終わったぐらいで「霧は難しかったです」と(笑)。

──釘宮さんが演じるミーナは、霧とは逆に現時点ではほとんどのことが謎に包まれているキャラクターですよね。

アニメ「時間の支配者」第2話より。霧と2人になりそれまでとは態度を変えたミーナ。

実は釘宮さんには、ミーナが今後どうなっていくのかということをお伝えせずに最初のアフレコに臨んでもらったんです。登場したばかりのミーナは、視聴者がイメージするステレオタイプな釘宮キャラクターに映るかと思うんですけど、その固定観念を裏切っていくというのもキャスティングの狙いにあったかもしれません。

──3話目以降、赤羽根さん演じるブレイズに始まり、伊藤静さん演じるアイスレーダーや、杉田智和さん演じるスネークなど、新キャラクターが続々と登場しますね。

松根マサト監督

伊藤さんは1番リテイクが少なくて、「何かないか、何かないか」と探していたら、音響監督から「何もなかったら、言わなくてもいいですよ」と突っ込まれてしまったくらい素敵なお芝居をしてくれました(笑)。杉田さんに関しては先日実施したアニメの先行上映会で、福山さんが「杉田は杉田です」とおっしゃっていましたけど、ご本人のイメージとキャラクターがすごく結び付いていましたね。その中で変態さと真面目さのバランスをうまく取って演技していただいたので、非常に面白いキャラクターになったと思います。

──では最後に3話目以降の放送に向けて、視聴者にメッセージをいただけますか。

2話目までが終わってヴィクトと霧の目的が定まり、ミーナという狂言回しが登場して、ようやく物語のセッティングが完了しました。ここからヴィクトの過去に何があったのかという謎の核心に迫っていくことになりますので、アクションはもちろん人間関係も含めて本作を楽しんでいただけたらと思います。

テレビアニメ「時間の支配者」
TVアニメ『時間の支配者』公式サイト
放送情報

TOKYO MX・BS11・サンテレビ・KBS 京都:
毎週金曜24:30~

スタッフ

原作:彭傑(翻翻「翻漫画」連載中/集英社「少年ジャンプ+」連載中/協力・友善文創)
監督:松根マサト
シリーズ構成:横手美智子
キャラクターデザイン:飯島弘也
アニメーション制作:project No.9

キャスト

ヴィクト・プーチン:福山潤
霧・プーチン:石川界人
ミーナ・プーチン:釘宮理恵
ブレイズ:赤羽根健治
アイスレーダー:伊藤静
スネーク:杉田智和

あらすじ

人々の時間を喰らいし悪魔……その名は「計」
時を操りそれに対抗するのは時間の支配者「クロノスルーラー」

計によって自らの「時間」を奪われたヴィクトは相棒の霧と共に時間という「過去」を奪還すべく時を操り、戦い続ける……。

時間操作系スタイリッシュアクション、開幕──!

松根マサト(マツネマサト)
TVアニメ『時間の支配者』公式サイト
福井県出身のアニメーション監督・演出家。これまでの監督作品にテレビアニメ「ケイオスドラゴン 赤竜戦役」など。テレビアニメ「暗殺教室」「ダンガンロンパ」シリーズなどでは、オープニング映像を手がけている。