コミックナタリー PowerPush - 「青の祓魔師」劇場版

画面にまつわるスタッフ大集合!原作者・加藤和恵×キャラクターデザイン・佐々木啓悟×美術監督・木村真二が座談会

リュウは「流し目で」って言われました

──加藤さんは今回、劇場版のオリジナルキャラクターであるうさ麻呂とリュウの原案も描かれていましたね。

加藤が描き下ろしたうさ麻呂の設定画。加藤が描き下ろしたリュウの設定画。

加藤 ストーリーが決まっていない企画段階から、打ち合わせには顔を出させていただいてて。監督のビジュアルイメージを聞きながらラフを起こしたりしていましたね。うさ麻呂とリュウみたいなキャラを2人描いてほしいっていう依頼は、結構初期からいただいてました。

──うさ麻呂とリュウは、どういうイメージでと伝えられたんですか?

リュウ・セイリュウ

加藤 リュウは線が細い感じの、中性的というか女性っぽい感じ。それと白っぽくて、雪とか水のイメージです。あと「流し目で」って言われました(笑)。キャラを完成させる時点では、まだ脚本のリュウの部分が未完成で、性格とかはよくわかってなかったので、耽美な感じか、それともニヒルな感じかな? って、ちょっと混乱しましたね。表情のパターンを描いても「こんな顔するのかな」って不安だったんですけど、まあそこは佐々木さんがうまいことやってくれまして!

佐々木 いやいやいや。加藤先生の原案イラストが、もうそのまま設定として使えるほど完成度が高かったので。

加藤 シーンごとにしっくりくる表情を当ててくれましたよ!

佐々木 リュウは同じような自信家な性格のエンジェルとキャラが被っちゃってもよくないから、ちょっと口の悪い奴にしようって、途中段階で監督が言ってたんですね。たぶん監督の好みなんですけど(笑)。フタを開けてみれば、女性に人気のキャラになりましたね。

リュウがお菓子を持ってるのを見て、完全に掴めなくなりました(笑)

──リュウはキャラクターをケースにした某キャンディ菓子を持ってますが、これは加藤さんが考案されたんですか?

リュウが某キャンディ菓子を食べるシーン。

加藤 いえ、それは監督ですね。

木村 監督は、あのお菓子が流行った時代の人ですから(笑)。

加藤 もうただでさえ混乱してたのに、リュウがあれを持ってるのを見て完全に掴めなくなりましたよ(笑)。でも私の手は離れているので、どんなキャラになっていくのか呑気に楽しみにもしていました。

──うさ麻呂の設定画は表情のパターンも多いですね。

加藤 原案イラストを描いたときに、もううさ麻呂が登場する脚本は上がってたので、イメージは掴みやすかったですし、どんな表情をするのかもある程度見えていたので。

「TIME KILLERS 加藤和恵短編集」

佐々木 食べてる絵も入れてもらってましたね。あの表情を見てアニメーターさんがイメージを膨らましていくことができたので、すごく助かりました。

──号泣してるうさ麻呂、すごくかわいいですね。

佐々木 それ残念ながら使えなかったんですよね。そこまで号泣するシーンがなかったので。あと監督は、モブも加藤キャラにしたいというのがあったみたいです。短編集「TIME KILLERS」から引っ張ってきたりして。あの本、面白いですよね。

加藤 ありがたいです。マニアックな本を読んでいただいて。結局どのあたりに使ったんですか?

佐々木 例えば、うさ麻呂が迷子になったときに声をかけてくれたカップルとかですね。

木村さんの背景が華やかだから、作画はシンプルに

──コアなファンは加藤キャラを探す楽しみ方もできますね。劇場版では、TVシリーズよりも作画を加藤さんの画風に近づけていると、佐々木さんは別のインタビューでもおっしゃっていました。

佐々木 TVシリーズのお話をもらったのは単行本4巻が出たくらいのときだったんですが、僕、なんとなく最近の加藤さんの絵のほうが好きなので。どうせだったら加藤ワールドを前面に出したいなと思ったんですよね。

加藤 そんなワールドが……ありがたいことです。

佐々木 でも加藤さんの絵はほんとに難しいですよね。

加藤 そうですか? 完全にコピーされてる上にウマくて、私もういらないわって思いました(笑)。

うさ麻呂がひとり佇むシーン。

佐々木 いや、そんなことはありません、まだまだ……。ああ、あと木村さんの背景が華やかだから、作画はシンプルにという意識もありました。木村さんのこの正十字学園町の美術ボードがあがってきたときに、もう勝負してもしょうがないなという気になって。……あ、僕この背景好きなんですよ。うさ麻呂のさびしい感じがすごく出てて。

加藤 うさ麻呂がポツンとひとりでいるシーンの。

木村 これは色味をめちゃくちゃ絞ったりしましたね。

加藤 ほんとすばらしい。木村さんに背景をやっていただけてもう、役得、役得ですよ。

佐々木 あの制作スケジュールでこの密度を、一体どうやって? 僕、絶対間に合わないと思ってましたよ(笑)。

木村 まあ、ちょっときつかったよね……(笑)。はじめはほんとにコンセプトボードだけ描いてあとは背景会社に丸投げをしたいという話だったんですが、そのやり方はちょっとやったことないし、失敗するのも嫌だったので。それなら全部自分でやるほうがいいですからね。

DVD / Blu-ray「青の祓魔師」劇場版 / 2013年7月3日発売 / アニプレックス
完全生産限定版 [Blu-ray] / 8400円 / ANZX9151
完全生産限定版 [DVD] / 7350円 / ANZB9151
通常版 [Blu-ray] / 5040円 / ANSX9151
通常版 [DVD] / 3990円 / ANSB9151
あらすじ

11年に一度の祝祭を前に、高揚感と喧騒で溢れかえる正十字学園町。悪魔の侵入を防ぐため、祓魔師たちは結界張り替えに勤しんでいた。一方、暴走する幽霊列車(ファントムトレイン)の退治にあたった奥村燐は、任務の途中、少年の姿をした幼き悪魔に出会う。

美術監督・木村真二へのインタビューはこちらから!

加藤和恵(かとうかずえ)
加藤和恵

1980年7月20日生まれ。東京都在住。赤マルジャンプ2000年SUMMER(集英社)に掲載された「僕と兎」でデビュー。2005年、月刊シリウス創刊号(講談社)より「ロボとうさ吉」を連載。その後、ジャンプスクエア(集英社)に活動の場を移し、同誌2009年5月号より「青の祓魔師」を連載開始。2011年4月にはTVアニメ化を果たす。