コミックナタリー Power Push -「青の祓魔師 京都不浄王篇」

加藤和恵が推す、新シリーズに内在する“重さ”

燐とみんなが仲良くなることが京都編の主軸

──先ほどお話にも上がった、京都編を描くにあたって加藤先生が決めていた「ざっくりとした主軸」というのはどの辺りなんですか。

「青の祓魔師 京都不浄王篇」第2話より、京都へと向かう新幹線内で周囲が燐を避ける中、彼のそばに座る出雲。

サタンの息子だという出自が周囲にバレてしまった燐が、改めてみんなに自分の出自を認めてもらい、より仲良くなるという部分ですね。そこを軸に「じゃあ、みんなは一体どういう性格の人間なんだろう」とか、「ラストはみんなを観光させて、京都タワーに登らせたいな!」みたいな描きたいことをぼんやりと形にしていって。ただ自分の中で決めていた、京都編で一番盛り上げたい終盤のエピソードにピークを持っていけるようには計算していました。

──京都編では達磨と竜士の勝呂父子の和解もテーマのひとつにあげられると思いますが、根幹にあるのは燐と塾生のエピソードなんですね。

「青の祓魔師 京都不浄王篇」第2話より、新幹線の中で衝突する燐と竜士。

はい。達磨と竜士の話ももちろん重要なんですけど、やっぱり燐のエピソードに付随してという形ですね。竜士は燐との今回の件よって自分自身や父親と向き合わなければいけなくなる、ということです。仲良くなるっていうエピソード軸部分でも「最後まで燐にデレないラスボス」的役割を担っていますしね。陰のラスボスは子猫丸なんですが(笑)。でも京都編は今言ったような部分以外、例えば蝮や柔造、金造の動きなどはまったく決まっていなかったんです。

──そこから金造は人気投票でもトップ10にランクインするまでの人気キャラに。

そうですね(笑)。なので、アニメの序盤では少し金造の出番を増やしていただいているようです。

──加藤先生の京都編でのお気に入りはどのキャラですか?

「青の祓魔師 京都不浄王篇」より、勝呂達磨の設定画。

うーん……達磨ですかね。シーンで言うと7巻で達磨がある人物のピンチに助けに入る辺りは、自分でも描いていて「きた!」って思いました。カッコいいおっさんが描けたなと思っています。

──そのシーンの前には、若かりし頃の獅郎と達磨のエピソードも挿入されていますよね。回想なので歳は現在より若くなりますが、ここもおっさんがカッコいいエピソードというか。

実はその回想シーンも、京都編を描き始めた時点では構想になかったんですよ。達磨の決めシーンを描くのに「そこに至るまでに、どういう話を入れたらいいんだ」ってバタバタしながら慌てて決めていきました。今思い返すと、かなりの剛腕でまとめ上げたなと(笑)。

「京都不浄王篇」の中で燐と雪男の問題に一旦の解決を

──アニメのストーリーは原作に準拠する形で進むんでしょうか?

「青の祓魔師 京都不浄王篇」第1話より、雪男と言い合いになる燐。

そうですね。基本的にはそのまま映像化していただいています。ただラストだけは少し要望があって、燐と雪男の兄弟の問題に、一旦の解決となるお話を入れてもらっています。

──それはどういう理由で?

もともと燐と雪男の問題は、京都編のあとの熱海でのエピソードで解決させたんです。エピソードを分けることにしたのは、今考えても無茶苦茶な話なんですが、京都編が長くなりすぎて、私がしんどくなっちゃったので、気分を変えて仕切り直そうと思ったからで(笑)。だから原作の京都編は熱海編まで読み切って完結する話だったんですが、できれば京都編の中で2人の問題も解決させたいなと。実はその部分は舞台で京都編をやるときにもリクエストさせていただいて、しっくりきていたので。なので「京都不浄王篇」のラストもかなり変わっていると思います。

──では先生の考える「京都不浄王篇」の見どころはどのあたりでしょう。

「青の祓魔師 京都不浄王篇」より、不動峯寺降魔堂のラフ画。

うーん、まだ私は本編を観ていないので、「ここに注目してください」とはっきりは言えないんですが(取材は12月中旬に行われた)、ここまでスタッフの方々と一緒にお仕事をさせていただいた中で、前シリーズのお客さんを大事にして丁寧に作ってくださっているというのはすごく感じます。あと、不浄王をどうやって表現するのかはすごく楽しみですね。

──確かにあれだけ巨大な悪魔を動かすのはすごく大変そうですね。

マンガでは漠然と描いていたので、初見監督に「どう動くんですか?」と聞かれても、「一応、蚕の幼虫を参考にしていたんですが」と答えつつ、それ以上あまり具体的なことが言えなくて。あと「燐たちが山中にいるとき、光源はどうなってるんですか?」と質問されて、「ああ! 当時マンガでは無視してたんですが、たしかに夜中の山中なんて真っ暗で、アニメとなったら無視できない……!」って思ったり(笑)。初見監督は理論的に描かれる方なので、原作はフワッとしている部分が多くて本当に申し訳なかったです。あとPVを観て感じたんですが、スタッフの方々は私が原作を描いていたときに「ちょっと失敗しちゃったな」って思うようなカットもそのままアニメに起こしてくるんですよ(笑)。

──例えばどのあたりですか?

6巻の燐が竜士に「親父を簡単に切り捨てんじゃねえ!!!!」って怒るシーンですね。原作だと「ちょっとかわいい顔になっちゃったな」と思っていたところがそのまま再現されていて「おわー!!」ってなりました(笑)。そのくらいスタッフの方は原作を読み込んで作ってくれているので、ぜひ皆さんに観てほしいですね。

テレビアニメ「青の祓魔師 京都不浄王篇」

TVアニメ「青の祓魔師 京都不浄王篇」公式サイト

放送情報

  • MBS:毎週金曜26:10~
  • TBS:毎週金曜25:55~
  • CBC:毎週金曜26:50~
    ※特別編成のため第2話は13分押し、第3話は2分前倒し
  • BS-TBS:毎週金曜24:00~
  • amazonプライム:毎週金曜配信

人間の住む「物質界(アッシャー)」と悪魔が住む「虚無界(ゲヘナ)」。本来は干渉することすらない二つの次元だが、悪魔はあらゆる物質に憑依し、物質界に干渉していた。しかし人間の中には、そんな悪魔を祓う「祓魔師」が存在した──。

魔神(サタン)の落胤として生まれた奥村燐は、己の出自を隠し祓魔師になることを決意。正十字学園内部に存在する祓魔師養成機関・祓魔塾に通っていたが、地の王・アマイモン襲撃の際、魔神の落胤であることが露見してしまう。魔神の「青い炎」を恐れ、燐と距離を置く仲間たち……。

そんな最中、学園最深部に封印されていた「不浄王の左目」が何者かに盗まれてしまい、燐たちは予期せぬ事態に巻き込まれていく──。

スタッフ

原作:加藤和恵(集英社「ジャンプスクエア」連載)
監督:初見浩一
シリーズ構成:大野敏哉
キャラクターデザイン:佐々木啓悟
音楽:澤野弘之、KOHTA YAMAMOTO
制作:A-1 Pictures

キャスト
  • 奥村燐:岡本信彦
  • 奥村雪男:福山潤
  • 杜山しえみ:花澤香菜
  • 勝呂竜士:中井和哉
  • 志摩廉造:遊佐浩二
  • 三輪子猫丸:梶裕貴
  • 神木出雲:喜多村英梨
  • クロ:高垣彩陽
  • 霧隠シュラ:佐藤利奈
  • 勝呂達磨:浦山迅
  • 志摩柔造:小西克幸
  • 志摩金造:谷山紀章
  • 宝生蝮:M・A・O
  • 藤堂三郎太:山路和弘
  • メフィスト・フェレス:神谷浩史
  • 藤本獅郎:平田広明
加藤和恵(カトウカズエ)
加藤和恵

7月20日生まれ、東京都出身。赤マルジャンプ2000年SUMMER(集英社)に掲載された「僕と兎」でデビュー。2005年、月刊シリウス創刊号(講談社)より「ロボとうさ吉」を連載する。その後、ジャンプスクエア(集英社)へと活動の場を移し、同誌2009年5月号より「青の祓魔師」を連載開始。同作は2011年にテレビアニメ化、2012年に劇場映画化を果たす。2017年1月よりアニメの新シリーズ「青の祓魔師 京都不浄王篇」の放送がスタートした。