「アマネ†ギムナジウム」|古屋兎丸×こざき亜衣の“思春期こじらせ系”師弟対談

先生はこう見えて、想像の10倍ぐらい俗物です(こざき)

──おふたりが一緒に働いていた時代の、印象に残っている出来事とか思い出はありますか?

古屋 仕事中、よく一緒に見てたのはノンフィクション番組。日曜日の……。

こざき 「ザ・ノンフィクション」!

テレビの話題で盛り上がる2人。

古屋 そう、毎回すっごい盛り上がるんだよ。応援団の男の子の話とか。

こざき ありましたね、応援団長になりたい男子。

古屋 でもしっかりした女子がやってきて、応援団長を取られちゃって。

こざき 熱いですよね、必死にがんばっている子を見るのって。逆にどうしようもないクズを見るのも好きで(笑)。「漂流家族」って覚えてます? お父さんがいきなり家族全員連れて北海道に行って「ここで暮らす!」って言うんだけど、最後お母さんが行方不明になるの(笑)。

古屋 あったあった(笑)。スターを夢見て上京しちゃう女の子とか、先週は地下アイドルのおっかけのおじさんの話をやってたなあ。毎週見ながら仕事してて盛り上がったよね。よくこんな人を見つけてきたなーって。

──おふたりとも、テレビお好きなんですね。

こざき 先生ってこう見えて、想像の10倍ぐらい俗物ですよ(笑)。

古屋 そうそう(笑)。

こざき 作品のイメージだと、ミステリアスな雰囲気の人を想像していると思うんですけど、違いますよね。新しいものが好きだし、飽きっぽいし(笑)。

古屋 新しいマッサージ機とかを買って自慢するんだけど、1カ月後には飽きてるっていう。

こざき あといきなり変なジュース飲みはじめたり。「これを1日1杯飲むといいんだよ」って。

古屋 好きなんだよ、自分で実験するのが。

先生はよく「心に腐女子を飼ってる」って言いますけど(こざき)

古屋 「あさひなぐ」を読んでると、スポーツの形を借りてドラマを描くのもいいなって思うよ。僕、小さい頃から剣道やってたし、野球もテニスもやってたスポーツ少年だったから。でも作品にはまったくそれが出ないでしょ。片やスポーツをまったくしてなかったこざきさんが薙刀マンガ描いててさ。

こざき 先生の大好きな思春期の宝庫ですよ、スポーツは。

古屋 そうだよね。

こざき もしスポーツマンガを描くとしたら何がいいですか?

天音は夜の日比谷公園で、人形の1体・フィリクスに悩みを話す。

古屋 真面目に考えたことないから、そう聞かれると「蹴鞠」とか言っちゃうんだけど(笑)。でも僕、ビリヤード好きだったから、以前ビリヤードのマンガを本気で考えたことがあって。ただビリヤードって、基本自分との戦いじゃん。最初から最後まで相手に玉を渡さずに突ききった人が勝ちだからさ。それって人間関係のドラマが生まれにくいんだよね。

こざき なるほど。

古屋 こざきさんは、スポーツ以外にどんなの描きたい?

こざき うーん、人が死ぬやつとか?

古屋 えー、恋愛もの描きなよ。あれだけ心情を描くのが上手いんだから、恋愛ものを描いたら面白いと思う。

こざき 恋愛ものかあ……。

古屋 「あさひなぐ」が薙刀じゃなくて恋の勝負だったら、まっすぐな旭と、男勝りでぶきっちょの将子と、裏のある紺野さんのバトルとか、面白そうじゃない? こざきさんなら、女子の怖さみたいなのも上手く描きそうだし。

こざき それは面白いかも。

古屋 恋愛マンガ向いてるよ。絶対。

こざき 描けるかなあ。

古屋 でもスポーツよりは確実に経験してるでしょ(笑)。

──おふたりはすごく息ピッタリですね。共通点が多いですし。

こざき 全然違うように見えて、私のマンガも先生のマンガも思春期こじらせ系ですから(笑)。それに先生はBLが好きだから、よく「心に腐女子を飼ってる」って言いますけど、私は心に百合男子がいるので。

古屋 そうだよね。大事に育ててるよね。

こざき そこ、私たちの共通点ですね(笑)。

こざき亜衣と古屋兎丸。

耽美な人形作家にして「年齢=彼氏いない歴」の27歳派遣社員・天音が、50年前の粘土から作った球体関節人形は7体。フィリクス、ヨハン、テオ、ゼップ、ダミアン、オットー、エルマーと名付けた個性的な彼らが、天音のギムナジウムを彩っていく。

「アマネ†ギムナジウム」第1話はこちらから!

「アマネ†ギムナジウム」
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耽美な人形作家・宮方天音の素顔は、地味な派遣社員。ある日、贔屓にしていた画材屋を訪れた天音は、店主・西園寺徳一から店じまいをすることを告げられる。途方にくれる天音だったが、代わりにもらった50年前の粘土を元に、どうにか7体の少年たちを作り上げる。無事、個展を終えた天音は、徳一から告げられた「粘土の秘密」を思い出し、人形たちに“あること”をしてしまい──。

こざき亜衣「あさひなぐ」22巻
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中学まで美術部だった東島旭は、「強い女」になるため二ツ坂高校薙刀部に入部する。まったくの素人からでも活躍できる可能性がある“高校部活界のアメリカンドリーム”、それが薙刀。その言葉を胸に刻み、日々旭は強くなるため練習に励むのだ!

古屋兎丸(フルヤウサマル)
古屋兎丸
1994年にガロ(青林堂)より「Palepoli」でデビュー。以後、精力的に作品の発表を続け、緻密な画力と卓越した発想力、多彩な画風で、ヒット作をコンスタントに発表する。主な著書に舞台化、映画化を果たした「ライチ☆光クラブ」をはじめ、「インノサン少年十字軍」「幻覚ピカソ」「人間失格」「帝一の國」など。現在モーニング・ツー(講談社)にて「アマネ†ギムナジウム」、ゴーゴーバンチ(新潮社)にて「少年たちのいるところ」をそれぞれ連載中。「帝一の國」は3度にわたり舞台化されたほか、実写映画が4月より公開される。
こざき亜衣(コザキアイ)
こざき亜衣
「さよならジル様」でちばてつや賞一般部門大賞を受賞。2011年より、週刊ビッグコミックスピリッツ(小学館)にて「あさひなぐ」を連載開始。「あさひなぐ」は2015年に第60回小学館漫画賞一般向け部門を受賞し、映画化と舞台化も決定している。