「アマネ†ギムナジウム」|古屋兎丸×こざき亜衣の“思春期こじらせ系”師弟対談

「この人、天才か相当な食いしん坊だな……」と(古屋)

──天音のスマホ画面のひび割れや住んでいる古い一軒家などを見ても感じますが、古屋先生は描き込みが細かいイメージがあるので、アシスタントさんは大変そうだなと思います。

天音の自室。インテリアからも天音の趣味や嗜好がわかる。

こざき アシスタントは作品の世界観を作る補佐役というか、大道具・小道具みたいな存在なので、細かい作業をしてこそだと思いますが、私は大変って感覚はあまりなくて。すごく楽しかったですね、いろんなものを描かせてもらったし。

古屋 僕は具体的にこう描けとか、ああ描けとか、あんまり言わないからね。こざきさんは、ざっくりした指示でもこっちの意図を読んで描いてくれるんですよ。

こざき 自分で考えるのも楽しいんです。例えば「このキャラクターの部屋描いて」って言われたら、この子の部屋にはこんな物が置いてあるだろうな、とか、これがあったらいいな、とか想像する。

──作品のイメージが共有できているんでしょうね。

こざき あー、それは結構大事だと思います。

古屋 僕としては、共有っていうよりも、自分の中で漠然としているものを、こざきさんに描かせたらどうなるかな?みたいな気持ちだったけどね。で、想像したよりもいいものが出来上がってくるの。僕、こざきさんの仕事で一番ビックリしたのが「少年少女漂流記」で描いてもらったお菓子。「お菓子が宇宙人みたいに襲ってきてる絵を描いて」って言ったら、いろんな種類のお菓子を、なんの資料も見ずにソラで描き始めて。「この人、天才か相当な食いしん坊だな……」と(笑)。

こざき それは完全に後者ですね(笑)。

連載が決まったのに「おめでとう」より先に「ええっ!」(こざき)

こざき そういえば「あさひなぐ」の連載が決まったとき、先生に「連載が決まったのでアシスタントに行けなくなります」って連絡したら、「おめでとう」より先に「ええっ!」って言われて(笑)。

思い出話に花を咲かせる2人。

古屋 もちろん連載が決まったのはうれしいことなんだけど、反面「どうしよう、今抜けられたら困る」と思って。アシスタントを長くやってもらってると、こざきさんありきのネームになってきちゃうんですよ。「これ描くのキツイなー、でもこざきさんいるからいいか」みたいな。こざきさんが抜けるって聞いたときには、真っ先に「あの作画は自分が描くのか……」と思って。その「ええっ!」ですよ。

──それだけ頼りにされていたってことですね。

こざき うれしいですよね、「いないと困る」って言ってもらえるの。

古屋 だから「あさひなぐ」が始まってからも、しばらくは「いつ戻ってくるのかなあ」って思ってたんだよね。なかなか終わらないなあと思ったら、「あさひなぐ」も実写化でしょう。

こざき いやー(笑)。

古屋 乃木坂46のメンバーと会えるからうれしいんじゃない?

こざき ええ、信じられないような写真撮りましたよ。齋藤飛鳥ちゃんと西野七瀬ちゃんに挟まれて……。

古屋 よかったね(笑)。

影響を受けたのは“画面構成”と“先行体質”(こざき)

──古屋さんから教わったことや、影響を受けたなと思うことはありますか?

「あさひなぐ」より。シンプルな画面構成で薙刀の迫力を表現。

こざき 画面構成は影響を受けてるなと思います。先生ってあんまり複雑なコマ割りをしないじゃないですか。

古屋 しないね。わかりづらい表現もあまりしないようにしてる。

こざき それは私も無意識のうちにやってるなと思います。あと先行体質なところとか。

──先行体質というと?

こざき 古屋先生はかなり前倒しで原稿を進めているんです。私も、先生ほどではないですけど、3週分ぐらいは先行してやるようにしていて。先生はよく「僕は締切に追われると思考停止して、逆に何もやらなくなるんだよ」って言ってましたよね。

古屋 僕は追い詰められると逃げ出すタイプだからね。「締切まであと1週間か、よし逃げよう!」って(笑)。焦って力を出す人もいるけど、自分の場合はそうじゃないから。

こざき 私は夏休みの宿題とかめちゃ溜めるタイプなので、本当は先行タイプじゃないのかもしれないんですけど、先生の仕事を見ていたら、先行したほうが絶対いいなと思って。

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耽美な人形作家・宮方天音の素顔は、地味な派遣社員。ある日、贔屓にしていた画材屋を訪れた天音は、店主・西園寺徳一から店じまいをすることを告げられる。途方にくれる天音だったが、代わりにもらった50年前の粘土を元に、どうにか7体の少年たちを作り上げる。無事、個展を終えた天音は、徳一から告げられた「粘土の秘密」を思い出し、人形たちに“あること”をしてしまい──。

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中学まで美術部だった東島旭は、「強い女」になるため二ツ坂高校薙刀部に入部する。まったくの素人からでも活躍できる可能性がある“高校部活界のアメリカンドリーム”、それが薙刀。その言葉を胸に刻み、日々旭は強くなるため練習に励むのだ!

古屋兎丸(フルヤウサマル)
古屋兎丸
1994年にガロ(青林堂)より「Palepoli」でデビュー。以後、精力的に作品の発表を続け、緻密な画力と卓越した発想力、多彩な画風で、ヒット作をコンスタントに発表する。主な著書に舞台化、映画化を果たした「ライチ☆光クラブ」をはじめ、「インノサン少年十字軍」「幻覚ピカソ」「人間失格」「帝一の國」など。現在モーニング・ツー(講談社)にて「アマネ†ギムナジウム」、ゴーゴーバンチ(新潮社)にて「少年たちのいるところ」をそれぞれ連載中。「帝一の國」は3度にわたり舞台化されたほか、実写映画が4月より公開される。
こざき亜衣(コザキアイ)
こざき亜衣
「さよならジル様」でちばてつや賞一般部門大賞を受賞。2011年より、週刊ビッグコミックスピリッツ(小学館)にて「あさひなぐ」を連載開始。「あさひなぐ」は2015年に第60回小学館漫画賞一般向け部門を受賞し、映画化と舞台化も決定している。